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コロナ禍でローンが払えないときに利用できる減免制度について徹底解説

2021/06/01
コロナ禍でローンが払えないときに利用できる減免制度について徹底解説
  • 「コロナウィルスによって不動産投資ローンの支払いが苦しい」
  • 「ローンが支払えない場合に利用出来る制度が知りたい」 

不動産投資ローンなどの借金を抱えている方の中には、コロナの影響で上記のような不安を持たれている方が増加しています。

国はコロナウイルスの影響によって、ローンの返済が出来なくなった方を救済するために、コロナ版ローン減免制度を制定しました。 

とはいえ、この制度を利用するには条件を満たす必要があり、利用するための注意点も多いので、よく理解することが重要です。

この記事ではコロナ版ローン減免制度の条件や特徴について詳しく解説していきます。

ローンの支払いで困っている方はぜひ最後まで読んで頂き、コロナ版ローン減免制度を利用する際の参考にして頂けると幸いです。 

コロナ禍によってローンの返済ができない人が増加している

2020年に蔓延した新型コロナウイルスは経済活動に大きな影響を与えています。

2021年4月末には、3回目の緊急事態宣言が発令されており、新型コロナウイルスが収束する気配がありません。

さらに「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」が出されるたび、飲食店や商業施設は時短営業や酒類の提供の自粛が求められるなど、さまざまな業種が経済的な打撃を受けています。

それに伴い、上記のような新型コロナウイルスの影響により、失業した人も増えている現状です。

総務省が行っている「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)3月分結果」によると、2020年の完全失業率は2.8%と前年より0.4%増加しており、2021年3月の完全失業率も2.6%と2019年の平均と比較すると、0.2%増加しています。

出典:労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)3月分結果

また、新型コロナウイルスの影響で収入が減少した人も珍しくありません。

総務省が調査をしている「家計調査2020年平均」によると、世帯主の収入は前年より1.5%減少しており、賞与についても4.1%減少しています。

出典:総務省統計局総務省の家計調査2020年

上記のように、雇用や収入の不安から住宅ローンや投資ローンなどの返済が負担になり、返済出来ない方も増加しています。

コロナ版ローン減免制度とは

コロナ版減免制度とは、新型コロナウイルスでローンが返済出来なくなった方を救済するための制度です。

すでに制定されている「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の特則として制定されました。

なお、正式名称は「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインを新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」と言います。

コロナ版ローン減免制度は債務整理である

コロナ版ローン減免制度は現存する債務整理手続きとは別の方法で、ローンの返済や減額をする制度です。

信用情報機関に登録されないという特徴があるため、債務整理と違うと思う方がいるかもしれませんが、この減免制度は債務整理の1種になります。

そのことは金融庁が発行しているチラシにも「新型コロナウイルス感染症の影響を受け自己破産などの法的整理の要件に該当することとなった個人事業主の債務整理を行い、自助努力による生活や事業の再建を支援する目的」と記載されています。

出典:金融庁チラシ

ローン減免制度の特徴

ローンの減免制度には以下の5つの特徴があります。

  • 弁護士などの専門家の支援を無料で受けられる
  • 財産の一部を手元に残せる
  • 信用情報機関(ブラックリスト)に登録されない
  • 自宅を残して債務整理が出来る
  • 連帯保証人に請求が行くことがない 

それぞれについて説明します。 

①弁護士などの専門家の支援を無料で受けられる

ローン減免制度には、弁護士などの専門家の支援を無料受けることが出来るというメリットがあります。 

一般的に債務整理の手続きは複雑であるため、素人が自身で行うのは容易ではありません。

そのため、弁護士などの専門家に依頼するのが通常です。

これは、ローン減免制度も債務整理の手続きであるため、変わりません。

ただし、通常の債務整理が弁護士などの専門家に依頼すると多額の費用が掛かるのに対し、ローン減免制度では無料で受けることが出来ます。

例えば、自己破産を弁護士に依頼して行う場合の費用は20万円〜50万円程度必要ですので、経済的に困窮している状況では非常に有難い制度です。

ちなみに、ローン減免制度は「登録支援専門家」である弁護士や公認会計士、税理士、不動産鑑定士に無料で相談することができます。

とはいえ、上記の専門家の中では債務整理の手続きに精通している弁護士に相談することがおすすめです。

②財産の一部を手元に残せる

ローン減免制度を利用しても財産をすべて没収されることはありません。

とはいえ、基本的に手元に残せる財産は特別給付金の10万円自由財産に該当する財産になります。

個人の生活状況や個別の事情によっても異なるため、詳細については弁護士などに相談するといいでしょう。

③信用情報機関(ブラックリスト)に登録されない

ローン減免制度の最大のメリットの一つが、信用情報機関に事故情報が登録されないことです。

信用情報機関に登録されてしまうと、クレジットカードの審査や金融機関からの融資審査に通らないため、これらを利用することが出来ません。

また、通常の債務整理の場合は信用情報機関に5〜10年登録されてしまいます。

つまり、登録されている5〜10年の間はクレジットカードなどの利用が出来ないため、不便な生活を強いられます。

一方で、ローン減免制度は上記のようなデメリットを受けることがありません。

安定した収入さえあれば、クレジットカードも作ることができます。

④自宅を残して債務整理が出来る

ローン減免制度は自己破産と違い、自宅を残して債務整理することが可能です。

この制度には「住宅資金特別条項」という住宅ローンの弁済を継続しながら他の債務を整理できる制度があり、これを利用することで自宅を残して債務整理することが可能になります。

⑤連帯保証人に請求が行くことがない

ローン減免制度は通常の債務整理と違って、連帯保証人に残債の請求が行くことがありません。

奨学金などの連帯保証人が設定されている債務を自己破産などで整理する場合には、自身の支払いは免除されますが、連帯保証人に債務の残債分が請求されます。

もし、連帯保証人が返済出来ない場合には、連帯保証人も自己破産することになりかねません。

しかし、ローン減免制度では上記のように連帯保証人に迷惑が掛からないため、通常の債務整理よりも気軽に利用することが出来ます。

制度の利用条件

ローン減免制度を利用できるのは、以下の条件を満たした方になります。

  1. 新型コロナウイルスで収入が減少した個人や個人事業主
  2. 新型コロナウイルスによってカードローンや住宅ローンなどが返済できない人
  3. 調停条項案(債務整理の内容と返済計画案)に金融機関などが同意した方

上記のように新型コロナウイルスの影響で収入が減り、債務の返済が出来ないと認められた方が対象です。 

さらに、対象になる債務は以下になります。

  1. 2020年2月1日以前に負担していた既往債務
  2. 2020年2月2日以降から2020年10月30日まで、新型にコロナウイルスの影響によって減少した売上が収入に対応するために「政府系金融機関の新型コロナウイルス感染症特別貸付」や「民間金融機関における実質無利子・無担保融資」、「民間金融機関における個人向け貸付け」で借りた債務

金融機関からの融資だけでなく、カードローンキャッシングも対象です。

ただし、コロナウイルスの影響以外で返済が困難になった方の債務については対象外になります。 

手続きの流れ

コロナ版ローン減免制度の手続きの流れは以下になります。

  1. 最も多額のローンがある金融機関などに手続きの申出をする
  2. 弁護士などの専門家に手続きの支援を依頼
  3. 金融機関などに債務整理の開始を出て必要書類を提出
  4. 調停条項案の作成
  5. 金融機関などに調停条項案の提出
  6. 金融機関などが同意した場合、簡易裁判所に特定調停の申立をする

上記の手続きが完了することで、ローン減免制度を利用した債務整理が完了します。

仙台で初めてローン減免制度で大幅なローンの減額に成功している

2021年4月15日に仙台弁護士会が会見を開き、全国で初めてローン減免制度を利用してローンの大幅な減額をすることで、金融機関と合意したと発表しました。

今回の事例では、金融機関から飲食店の経営のために借りていた750万円のうち730万円を減額して、20万円にすることで合意しています。

上記のように実際に減額した事例もありますので、不動産投資ローンなどの返済で困っている方は一度、弁護士などに相談するようにしてください。

 コロナ版ローン減免制度が利用できないときの対処法

ここまで説明してきたコロナ版ローン減免制度が利用できない場合はどうすればいいのでしょうか? 

主な対処法は以下の3つです。

  • 通常の債務整理を利用する
  • 自宅などの不動産を売却する
  • コロナ関連の給付金や貸付制度を利用する

それぞれについて説明します。

通常の債務整理を利用する

さまざまな方法を試したうえで、どうしようもない場合に行う最終手段が通常の債務整理になります。

債務整理には以下の3つの方法があり、支払い能力によって行うべき手続きは異なるので注意が必要です。 

  • ある程度の支払い能力があって元本の返済が可能なら任意整理が検討する
  • 支払い能力があるが任意整理をしても返済出来る見込みがない場合は、個人再生を検討する
  • どの方法でも債務の返済が出来る見込みがない場合は自己破産をする

また、上記の3つの方法は任意整理個人再生自己破産の順でデメリットが大きくなります。

そのため、可能な限りデメリットが少ない手続きを選ぶようにしてください。

自宅などの不動産を売却する

自宅や投資用の不動産などの資産がある場合には、却して債務を返済することで債務整理を回避することが可能です。 

ただし、住宅ローンなどを滞納してしまって競売開始通知が届いている場合は、すぐに売却する必要があるため、任意売却やリースバックを利用して短期間で売却するようにしてください。

その場合は売却金額が安くなるケースがほとんどなので、返済が厳しくなると分かった時、早めに売却の準備を進めましょう。

コロナ関連の給付金や貸付制度を利用する

コロナ関連給付金や貸付制度を利用していない場合はこれらの制度を利用することで、債務整理を避けることが可能です。

例えば、緊急事態宣言などで時短営業している飲食店の場合には、一時金として30万円受け取ることが出来る制度があります。

また、1ヶ月の売上が前3年の同期いずれかと比較して5%以上減少した場合には、日本政策金融公庫から最大で8,000万円の融資を受けることが可能です。

このように、さまざまな制度がありますので、気になる方は自民党のページより確認してください。

まとめ

新型コロナウイルスの影響によって収入が減少し住宅ローンや、不動産投資ローンなどの返済が出来ない方を対象にしたコロナ版ローン減免制度が制定されました。

この制度はコロナ禍で困窮している人を救う非常に優れた制度ですが、利用するための条件や注意点があるため、制度についてよく理解することが重要です。

ローン減免制度を検討する際の参考にして頂けると幸いです。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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