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自己資金0円・フルローンでの不動産投資は本当に実現可能?知っておきたい初期費用を含んだローンの実態!

2021/06/03
自己資金0円・フルローンでの不動産投資は本当に実現可能?知っておきたい初期費用を含んだローンの実態!

マイナス金利政策を背景に、自己資金0円フルローンでの不動産投資が増加傾向にあります。一方、グレーな不動産取引により、予期せぬリスクやトラブルが生じる可能性も指摘されています。

本記事では、自己資金0円・フルローンでの不動産投資は本当に実現可能なのか、初期費用を含んだローンの実情に迫ります。自己資金を抑えて不動産投資を始めたい人や、ローンのメリットや注意点に興味のある人はぜひご一読ください。

【結論】初期費用を含んだローンは可能

結論からいうと、初期費用を含んだローンを組むことは可能です。ただし、投資のローンにはさまざまな種類があるため、ご自身の状況や目的にあったローンを選択する必要があります。

不動産投資でかかる初期費用は何があるのか、ローンの種類の特徴も交えながら後述します。メリットだけでなく注意点も理解できると、安定した収益性を確保できる投資が実現できるでしょう。 

不動産投資でかかる初期費用

不動産投資でかかる初期費用は主に次の8つです。それぞれの項目を詳しくみていきましょう。

①不動産会社への仲介手数料

不動産会社への仲介手数料とは、不動産売買をした際に業者に支払う手数料です。手数料は、物件の税抜売買価格が400万円超の場合、「売買価格の3%+6万円」と定められています。

なお、法律に定められている仲介手数料は、あくまでも上限額です。よって、上限額よりも手数料が安くなる分には法律的に問題はありません。しかし、一般的に物件価格が高くなるほど仲介手数料も高くなります。 

なお、売主から購入する場合は仲介手数料を節約することができます。 

②登記費用

登記費用とは土地や建物を登記(不動産の権利関係の公示)する際にかかる費用です。不動産投資では主に、「所有権移転登記」「所有権保存登記」「抵当権設定登記」の3つがあります。

それぞれの登記費用は、固定資産税評価額に応じた税率によって算出されます。不動産にかかる税金は、年度によって異なる場合があるため国税庁が公表している最新情報をご参照ください。

③印紙代

印紙代とは、印紙税法にもとづき課税される不動産物件に関係する文書に対して課される税金です。大きく分けて、不動産の売買契約時の「不動産売買契約書」と金融機関との融資契約時の「金銭消費貸借契約書」の2つあります。契約金額に応じて税額が異なる点が特徴的です。

④損害保険料

損害保険料とは、投資のために購入した物件が火災や自然災害などの被害を受けた際に備えた保険料です。例えば、火災保険や地震保険などがあります。保険料は、物件の構造や面積、保証内容などによって大きく異なる点が特徴的です。木造物件は鉄筋コンクリート造の物件と比べると火災リスクが高くなるため、保険料も高くなる傾向にあります。

⑤ローン手数料

投資のための購入費用は高額になるため、多くの場合金融機関から資金を借ります。そしてローンを受ける際には金融機関へのローン手数料の支払いが必要です。手数料は定率型(ローン金額の約1〜3%で手数料が計算されるタイプ)と、定額型(借入額に関わらず一定の手数料がかかるタイプ)の2つのタイプあります。ローン手数料は、借り入れ先となる金融機関によって大きく異なるため、事前にどのくらいの手数料がかかるのか確認しましょう。

⑥ローン保証料

ローン保証料とは、ローンの返済ができなくなった場合に備えて保証会社に支払う保証料です。ただし、保証会社が金融機関にローンの弁済をしてくれても、契約者のローンがなくなるわけではありません。保証会社に支払ってもらったローンは、その後保証会社に返済する必要があります。保証料の支払い方法や金額は、保証会社によって異なるため、事前に契約内容をご確認ください。

⑦不動産取得税

不動産取得税とは、土地や家屋といった不動産を購入した際にかかる税金です。「不動産取得税=固定資産税評価額×税率(%)」で計算され、土地・住宅の税率は3%住宅以外の家屋は4%の税率が適用されます。

なお、固定資産税評価額は、3年に1回評価額が見直されるが特徴的です。物件価格によっては大きな額になる可能性があるため、どのくらいの費用がかかるのか事前に把握しましょう。

⑧固定資産税や都市計画税

固定資産税とは、毎年1月1日現在の固定資産(土地・家屋・償却資産)を所有している全員に課される税です。ただし、所有者や用途により非課税や減免、免税となる場合があります。また、都市計画税とは、市街化区域内の土地や家屋を所有する人にだけ課される税です。

自己資金0円での不動産投資の特徴

「自己資金0円でできる不動産投資」にはどのような特徴があるのでしょうか。メリットや注意点をあわせてみていきましょう。

①自己資金と頭金の違いとは

自己資金と頭金は混同されやすい項目ですが、厳密には区別されるものです。自己資金とは頭金にプラスして諸費用を含めて投資用不動産を購入する総額をいいます。

対して頭金とは、投資用不動産を購入する際の住宅の価格からローン金額を差し引いた差額です。また、頭金はローンを受ける際に最初に用意する現金を指します。物件購入で要する初期費用なども、通常はローンでまかなうのではなく、現金での支払いが必要です。

②自己資金0円で不動産投資をするメリット

自己資金0円で不動産投資をするメリットは、手元に自己資金を残しておける点です。事故や災害など、予期せぬ出費が必要な場合でも、手元に現金が残っていればその資金で返済を続けられます。

また、自己資金0円で不動産投資ができると、投資額に対する利回りも高くなります。不動産投資は、投入した自己資金が少ないほど投資効率が高まる点がメリットです。可能な限り自己資金を残しての不動産投資ができると、投資した金額に対する収益割合が高くなります。

③自己資金0円の注意点

自己資金0円での不動産投資には注意点もあります。 

1つ目は、ローンの金利が高くなる可能性がある点です。金融機関としては、自己資金が多いほど貸したお金を回収できるリスクが小さくなるため、自己資金が少ない場合は金利が上がる傾向にあります。自己資金ゼロで不動産投資を始める際には、ローンの金利条件も必ず確認しましょう。 

2つ目は、資金に余裕がないとローンの返済ができなくなる点です。自己資金0円での不動産投資をする多くの人は、投資用不動産を購入したいけど自己資金が足りないケースがあります。しかし、そもそも投資の元手となる自己資金が少ないと、購入後に想定外の出費が生じたり収入が減ったりした際に返済できなくなる可能性があるため、注意が必要です。自己資金0円で不動産投資を始めるとしても、ローン返済額の半月分は手元に残しておく、いざという時のために資金を調達してもらえる支援者を確保するなどの準備をしておくと安心です。

フルローンを活用した不動産投資の特徴

自己資金0円の不動産投資で、フルローンを活用した例があげられることがあります。しかし、そもそもフルローンとはどのような特徴があるのでしょうか。メリットや注意点も解説します。

①フルローンとオーバーローンの違いとは

フルローンとは、物件価格のすべてを借り入れるローンです。フルローンは物件購入費用の全てをローンで賄えるため、自己資金が少なくても物件を購入できます。ただし、フルローンで補える部分はあくまでも物件価格であるため、手付金や購入する際にかかる手数料や初期費用などは含まれません。

なかにはそのような費用を不要とする業者もありますが、宅建業法上ではグレーといわれています。したがって、フルローンを利用する際には、すべての項目で自己資金0円になるわけではなく、初期費用や諸々の手数料などに関しては自己資金での支払いが必要な点にご注意ください。

フルローンと混同しやすい用語にオーバーローンがあります。オーバーローンとは、物件価格にプラスして購入にかかる諸経費も含めた金額の借り入れができるローンです。オーバーローンを利用すれば、自己資金0円での不動産投資ができます。フルローンとオーバーローンの違いは、どちらも頭金なしで物件を購入できますが、諸経費が含まれているか否かです。

②フルローンで不動産投資をするメリット

フルローンで不動産投資をするメリットは、手元に自己資金を残せる点です。オーバーローンと異なり、諸経費は自己資金で出費する必要があるものの、大きな金額となる物件の購入費用を全て借り入れできる点は大きな利点となります。

また、フルローンは投資のレバレッジ効果があるため、小さな資金で大きな収益を得ることが可能です。ただし、ローンの返済額も増えるため、総合的なキャッシュフローの計算がポイントとなります。

③フルローンの注意点

総返済額総返済利子の金額が大きくなるため、月々の返済額が増える傾向にある点にご注意ください。また、フルローンは金融機関からの審査が厳しくなるケースが多くあります。

金融機関は借り入れする人の属性収入過去の信用履歴など様々な観点から融資をしてもいい人物か判断します。つまり、本当に「自己資金がない」のと、「自己資金はあるけど出さない」のとは融資審査上では大きく違いますので、きちんと理解しておきましょう。

初期費用なしで不動産投資を始める方法

初期費用なしで不動産投資を始めるには、どのような方法があるのでしょうか。 

①フルローンやオーバーローンを活用する

先述した通り、初期費用も含んだ全額をローンで賄いたい場合は、オーバーローンの活用が有効です。また、頭金や物件価格についてローンを利用したい場合は、フルローンを活用すると良いでしょう。ただし、これらのローンの利用には、様々なリスクがある点も理解した上で活用をご検討ください。

また、初心者でオーバーローンの融資は非常に難しいので、事前に認識しておく必要があります。

②不動産投資会社の提携ローンを使う

先述した通り、フルローンやオーバーローンを利用するには厳しい融資審査を通過しなければなりません。その点、金融機関と提携がある不動産投資会社に問合せするといいでしょう。販売実績がある不動産投資会社ほど提携されている金融機関が多いので、ご自身の属性に合せて最も有利な条件で利用できる銀行を選ぶことができます。ご自身で融資の斡旋ができない人は、ぜひ不動産投資会社に相談してみましょう。

まとめ

今回は、自己資金0円やフルローンでの不動産投資は可能なのか、初期費用を含んだローンの実態について解説しました。要点は次の通りです。

  • フルローンはあくまで物件価格であり、自己資金は0円にならない。諸経費を含めたローンの方法としては、オーバーローンの利用がある。
  • フルローンを活用する場合、基本的には手付金が必要。なかには不要とする業者もいるが、グレーな部分も多い。
  • 自己資金0円で不動産投資をすれば手元に自己資金を残しながら、大きなレバレッジ効果を得られる。 

自己資金0円やフルローンでの不動産投資には、一定のメリットがあるものの、表面的な情報では見落としがちな注意点もあります。今回ご紹介した内容を、ご自身の不動産投資にぜひお役立てください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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