不動産投資を検討している方の中で、擁壁や崖地などの言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。こちらの記事をお読みの方の中で、擁壁があったり、崖地が近くにあったりする物件の購入を検討されている方もいらっしゃるでしょう。
投資物件を購入する際に、擁壁と崖地についてのしっかりとした知識を持っていないと、後で予想外の出費が必要になったりトラブルの原因になってしまったりすることもあります。
こちらの記事では擁壁と崖地についての解説と、擁壁や崖地がある物件を購入する際に抑えておきたい5つのポイントについて解説していきます。
ぜひ最後までお付き合いいただき、擁壁や崖地がある物件を購入する際に参考にして頂けますと幸いです。
まず最初に、擁壁と崖地についての解説をしていきます。
擁壁とは、崖などの崩壊を防止するための「土留め」を行うために、コンクリートやブロック、石などを使用して作られた壁状の構造物のことを言います。
土などを積み上げた際に崩れない最大角度のことを「安息角」といい、それを超える大きな高低差を地面に設ける場合に、この擁壁を作る必要があります。
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崖地とは、実際に宅地として使用できない土地の傾斜部分のことで、「法地」とも言います。宅地造成などにより切土や盛土などによって人工的に作られるものと、自然の地形によるものがあります。
地盤が弱い場所にある崖地や角度が急な崖地は、崩壊による災害や地滑りの原因になることもあるため、擁壁により補強する必要があります。
宅地造成等規制法とは、1961年に制定された法律で、崖崩れや土砂の流出が発生する可能性が高い区域における災害の防止を目的とした法律です。
宅地造成法により、いくつかの土地で宅地造成工事を行う場合には造成主が、あらかじめ都道府県知事の許可を受ける必要があるということが定められています。
許可を受ける必要があるケースを挙げると、都道府県知事により「宅地造成工事規制区域」に指定されている区域内で、高さ2メートルを超える崖を生じる切土や、高さ1メートルを超える崖を生じる盛土を作る場合には、都道府県知事の許可が必要となります。
さらに、切土と盛土を合わせた面積が500平方メートルを超える宅地造成工事を行う場合においても、あらかじめ都道府県知事の許可を受けておかなければなりません。
このように都道府県知事の許可を得て検査済票を発行してもらう必要がありますが、そのためには擁壁を作る工事が必要になる場合もあります。
擁壁と崖地がある物件は、擁壁と崖地がない物件にはないリスクをはらんでいます。ここではそのリスクについて解説していきます。
擁壁にリスクには、以下のようなものがあります。
擁壁は構造により異なりますが耐用年数があり、それは20年から30年とされています。この時期を過ぎるまでにも劣化する恐れもあり、リフォームや作り直しなどの作業を行う必要が出てくるため、擁壁がない物件に比べてコストがかかります。
擁壁のリフォームや作り直しにかかる費用は、数百万円から数千万円に及ぶこともあります。
一般的に擁壁を作る場合には、高所に住んでいる住民が費用を負担します。しかし、中には低所に住んでいる住民が費用を負担したり、高所に住んでいる住民と低所に住んでいる住民とが費用を出し合ったりするケースがあります。
住民や所有者が変わることによって擁壁ができた経緯があいまいになり、誰がどれだけ費用を負担したかなどといったことが分かりにくくなることから、トラブルの原因となることもあります。
崖地のリスクには、以下のようなものがあります。
崖地は豪雨や災害の影響を受けやすいため、大地震や洪水などが起こった場合には被害を受ける可能性が高くなります。
崖地がある土地に建物を建てる場合、崖から一定の距離をとって建物を建てる必要があるため、利用できる面積が限られてしまいます。
自治体の条例によっては擁壁を作る必要が出てくるため、費用がかさみます。
「工事見積もりサンプル|擁壁 工事 宅地造成 費用 がけ崩れ110番)」によると、高さ3mの擁壁を施工した場合に必要になる費用は約420万円程度、1平方メートル当たり約42万円程度となっています。
この費用は全額自己負担する必要がないケースもあり、要件を満たすことで自治体から補助金や助成金を受けることができます。補助金や助成金の要件や活用できる金額は各都道府県や市区町村により異なるため、お住いの地域の役所に問い合わせてみることをおすすめします。
擁壁や崖地がある物件を購入する際には、注意すべきポイントが5つあります。ここではその5つのポイントについて解説していきます。
擁壁の表面をチェックし亀裂やはらみがあったり、傾いていたりする場合には補修工事を行ったり、取り壊して新しく作り直したりする必要があるため、購入後に予想外の出費が出ることが予想されます。
したがって、擁壁の表面のチェックは必ず行いましょう。
擁壁の材料として自然石を積み上げたものは、法律上擁壁として認められません。よって、人工的に作られたブロックやコンクリートなどを使用した、十分な強度がある擁壁が作られている物件を選びましょう。
擁壁の水抜き穴についても、法律により基準が定められています。擁壁の面積の34平方メートルにつき1か所以上、内径7.5センチ以上の水抜き穴があるか確認しておきましょう。
購入を検討されている物件が立っている土地に、がけ条例や土砂災害防止法等の法令上の制限が適用されている場合、建物の構造が制限されたり、防護壁の設置などの安全対策が義務付けられたりするため、想定外の費用が掛かることもあります。
物件がある土地が、条例や法令の制限が適用されるかどうかを購入前に確認しておきましょう。
隣人などの要求により擁壁の設置や補強を求められることもあり、費用負担などでトラブルになることも考えられます。事前に近隣住民に聞き込みを行うなどして、これまでにトラブルが起こっていないか確認しておきましょう。
こちらの記事では擁壁と崖地の意味合いや、リスク、擁壁や崖地について定められた宅地造成等規制法と、擁壁や崖地がある物件を購入する際のチェックポイントについて解説してきました。
擁壁や崖地がある物件は、これらがない物件に比べてリスクやチェックすべきポイントが多いということがお分かりいただけたと思います。特に擁壁や崖地がある物件を購入しようと思った際には、建物だけではなく、擁壁のチェックも非常に重要です。
ここで解説した内容を参考にしていただき、擁壁や崖地がある物件の購入を行う際の一助として頂ければ幸いです。