欠陥工事と聞くと、2021年4月に起こったアパートの階段崩落により住民の女性が亡くなった事件を思い出される方もいらっしゃると思います。この事件は、欠陥工事が原因で起ったとされています。
もし自分が不動産投資のために建てたり、購入したりした物件に欠陥工事が施されていたらどう対応すればよいのでしょうか。欠陥工事は時に人命を脅かすこともあるため、絶対にあってはならないことですが、質の悪い施工業者の間では横行していることも珍しくありません。
この記事では、欠陥工事とは何かといった基本的なことから欠陥工事のある物件を立てないためのポイント、物件に欠陥工事が施されていないかを自分でチェックする方法などについて解説していきます。
最後までお付き合いいただき、欠陥工事についての理解を深め、優良な物件の建築や購入のためにお役立てください。
欠陥工事とは、設計上または施工上のミスや手抜きにより、住宅に当然備わっているべき性能が欠如してしまうような工事をしてしまうことを言います。欠陥工事により、住民がけがをしたり、時には死亡したりすることもあるため、見過ごすことはできません。
命にかかわることではない場合でも、欠陥工事により外壁や内壁の亀裂、雨漏り、結露やカビ、床の傾き、振動、排水不良などが現れることもあります。このような欠陥がある住宅には、欠陥工事が施されているため構造上の問題が潜んでいる可能性も高くなります。
前述のように欠陥工事は、時には人命をも脅かす大変恐ろしいものです。では、欠陥工事のある物件を立てないためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。ここでは、欠陥工事のある物件を建てないために注意するべき7つの点について解説していきます。
物件の建設費が、概算でどの程度必要になるかを把握しておきましょう。物件の適正価格は労務費、材料費、諸経費、妥当な利益により計算することができます。もしこの概算よりも極度に建築費用が安い場合には、何か理由があると思っておきましょう。
物件を建築する場合には、設計と施工を別々の業者に依頼することをおすすめします。そして物件の施工時に、物件の設計を行った業者に施工現場の監督を行ってもらうことで、欠陥工事を防ぐことができます。
これから建てる物件が、どのような材料を使用し、どのような施工方法で施工されるのかを把握しておき、自分でも基礎的な知識を身に付けておきましょう。知識があれば、欠陥工事の原因となる不適切な材料の使用や施工方法に対して指摘し改善してもらうことができるからです。
物件を立てる施工業者を選ぶ際には、その会社の今までの実績や欠陥工事によるトラブルを起こしたことが無いかといった点について、インターネットの口コミを調べておくとよいでしょう。
可能であれば、実際に施工を依頼した人に聞き込みを行うことがベストと言えるでしょう。
新築物件には、住宅の構造体力上の主要部分と雨漏りなどを防止する部分において10年間保証しなければならないと法律で定められています。この法律を「住宅瑕疵担保履行法」といいます。
もしこの10年の期間に施工した業者が倒産した場合でも、瑕疵を修理できるよう保険に加入したり補償金を預けたりすることで費用を確保している業者を選ぶようにしましょう。
参考:特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律 | e-Gov法令検索
前述した住宅瑕疵担保履行法で定められているのは、住宅の構造体力上の主要部分と雨漏りなどを防止する部分に対する補償です。
それ以外の内装や窓サッシ、クロス、バスルームやキッチンに関する瑕疵や欠陥工事の場合は、施工業者が保障しますが、施工業者によってその保証の範囲は異なるので、施工を依頼する前にどの範囲まで保証してもらうことができるのか、業者に確認することをおすすめします。
中古物件を購入する場合には、2000年以降に建築された住宅性能表示がついている物件を選びましょう。住宅性能表示とは、住宅の性能を客観的な評価を実施する住宅登録機関として登録された第三者機関が評価方法基準に従い住宅の性能評価を行って、住宅性能評価書の交付を行います。
このように国が認めた第三者機関による住宅の性能の評価が行われ、安全が確認された物件であれば安心して購入することができます。
物件の引き渡し前に、欠陥工事が無いか自分でチェックする方法があります。その方法とは
というものです。
どれも簡単な道具でできることなので、必ずこれらの方法で物件のチェックを行いましょう。
建売物件を購入する場合には、以下のような注意点があります。
建売物件の購入を検討している販売会社の実績を調べることは、非常に重要です。実績を調べる方法はCIIC(一般法人建設業情報管理センター)の経営事項審査で情報を得ることができます。しかし、あまりにも小規模な施工業者の場合には掲載されていない可能性があります。
購入を検討している建売物件が、どのような材料を用いどのような建築方法で建てられているのかしっかりと説明を受けましょう。ただし、説明を理解するためには購入する側にもある程度の知識が必要になるため、基礎的な部分だけでも勉強しておくことをおすすめします。
法律で定められた範囲以外の、施工業者の物件の瑕疵の保障内容をしっかりと確認しておきましょう。この保証の範囲が十分でない場合、保障外の瑕疵に関しては自分で対応しなければなりません。十分な補償がついた建売物件を選ぶようにしましょう。
建売住宅は、住み始めてから欠陥工事に気付くことも珍しくありません。そのような場合にどのようなサポートを受けることができるのか、サポートの範囲や期間をしっかりと確認しておくようにしましょう。
建売物件を購入する場合には、第三者の一級建築士など住宅のプロに物件の診断を依頼しましょう。素人が見てもわからない欠陥工事を見つけてもらえる可能性が高くなります。
ここでは、優良な施工業者を選ぶために重要な4つのポイントについて解説していきます。
帝国データバンクや東京商工リサーチなど民間の企業信用調査会社の調査結果を確認しておきましょう。これには、費用が必要になります。
参考:帝国データバンク企業情報サービス|G-Searchデータベースサービス
参考:株式会社東京商工リサーチ[TSR]|世界最大の企業情報データベースを提供中!
実際に施工を依頼する業者が過去に施工した物件の見学を行いましょう。この時、ある程度の年数が経過した物件のほうが欠陥工事や品質が明らかになりやすいため、このような物件の見学を行うことをおすすめします。
物件を購入したり、施工したりする場合にその施工業者と相性が良ければ、施工に際して生じた疑問や悩みにも丁寧に答えてくれるでしょう。また、こちらも質問がしやすいため、担当者との相性は非常に重要です。
物件の価格が妥当であるか、確認してみましょう。物件を安く買いたいのが買い手の心理ですが、安すぎる物件には何かあると思っておいたほうが良いでしょう。近隣にある類似した物件と価格を比較して、あまりに安すぎる場合には施工業者や販売業者にその理由をきちんと説明してもらうことをおすすめします。
ここまで、欠陥工事のある物件を建てたり購入したりしないための注意点などについて解説してきました。大きな買い物である不動産に欠陥工事があった場合、きちんと保障がされているのか、またその保証の範囲はどこまでかをしっかりと把握しておくことの重要性についてお分かりいただけたと思います。
この記事の内容が、皆様の欠陥工事のリスク回避のためにお役に立てていただければ幸いです。