最近になり、テレビや新聞の紙面を賑わせている「ウッドショック」。日本の不動産市場に大きな打撃を与えかねないということをご存知でしょうか。
かつて1970年代に原油の供給がひっ迫し、価格が高騰したことで世界中の経済が混乱してしまった「オイルショック」を知らない方はほとんどいないと思います。
今回の木材不足をオイルショックに準えて「ウッド(wood)=木」から「ウッドショック」と呼ばれています。このことによって、木を使う新築住宅に影響が出始めています。
こちらの記事では、ウッドショックが起こってしまった背景や、今後の新築住宅市場にどのような影響が考えられえるのかについて解説していきます。ぜひ最後までお付き合いください。
1970年代に起こった「オイルショック」は、原油の供給がひっ迫してしまい、価格が高騰してしまいました。
世界経済にも大きく打撃を与えたことから、多くの方に知られているものです。
2021年に入ってからは、木材の供給のひっ迫が表面化して木材価格の高騰が起きています。
このことを、当時のオイルショックに準えて「ウッドショック」と呼んでいます。
下記のグラフをご覧ください。
出典:農林水産省
こちらの資料は、農林水産省から公表されている、すぎ中丸太(径:14.0㎝~22.0㎝、長さ:3.65m~4.0m)の1㎥あたり価格です。
令和元年(2019年)5月から13,000円台で推移していました。
新型コロナウイルスの完成拡大が顕著になった令和2年(2020年)に入って下落しはじめ、全国的に緊急事態宣言が発令された令和2年(2020年)の4月~5月にかけて一度は12,000円を割り込みました。
しかし、令和2年(2020年)夏頃から徐々に上昇し始め、令和3年(2021年)5月には15,000円を突破してしまいました。
この1年で12,000円から15,000円と実に25%近くも価格が上昇したことになります。
第2章以降で解説するさまざまな要因によって、木材価格をどんどん跳ね上げてしまっているのです。
なお木材不足は、日本のみならず、世界中で陥っています。
なぜ、ウッドショックが起きているのでしょうか。
一言でいえば、「新型コロナの影響」を受けているのですが、主に以下のような要因によって引き起こされています。
1つ目は、アメリカにおける住宅需要の高まりです。
下記のグラフをご覧ください。
出典:林野庁
こちらのグラフは、アメリカにおける「住宅着工戸数」と「木材価格」の推移です。
住宅着工数は、コロナ前の2019年にはおおよそ120万~130万戸で推移していました。
一旦ロックダウン期間は落ち込んだものの、それが2020年夏以降、140万~160万戸で推移するようになったのです。
コロナ前と比較すると20%近く上昇していることになります。
また、木材価格は日本では2021年5月に急上昇しましたが、アメリカでは日本よりも1ヶ月早い2021年4月の時点で急激に上昇していたことが分かります。
現在、アメリカでは低金利状態になっています。
これに、コロナ禍におけるテレワークが増えたことによって、新築物件の需要が高まっていることによって、木材が大量に消費されるようになりました。
2つ目は、中国の木材輸入が大きく増加しているからではないかと言われています。
次のグラフをご覧ください。
出典:林野庁
こちらのグラフは、中国の針葉樹丸太輸入量の推移です。直近10年間で輸入量が実に1.8倍に増加しています。
中国は世界の中でも早い段階でコロナ禍を克服した国の1つです。
他の先進国が新型コロナに苦しむ中、経済を回すことに成功しています。
2020年や、2021年のデータはありませんが、近年の流れを鑑みると、輸入量は増加しているとみることができるでしょう。
このような中国の買い占めも、木材不足の一因とみることができます。
3つ目は、輸入コストの問題です。
次の資料をご覧ください。
出典:林野庁
こちらの資料は、日本向けコンテナ運賃の推移です。
欧州発、米国発の価格がともに上昇傾向であることがお分かりいただけると思います。
今なお、新型コロナウイルスの感染が収束せず、ロックダウンを強いられている国もあります。
また、運輸業に携わっている方の数も減少しています。
このような影響を受け、世界の港でコンテナが滞留してしまうといった状況が起きており、コンテナ運賃が上昇してしまっているのです。
これが、木材の価格を押し上げている一因となっています。
特に新築の木造住宅を建てる際には、多くの木を使用します。
原価の上昇に伴い、住宅メーカー側はコストアップすることになります。
これまでの価格設定だと利益が圧迫されてしまうことになるため、販売価格自体の上昇が考えられるといえるでしょう。
原材料の木材がなければ家を建てることはできません。
木材不足によって、納品が遅れることになれば物件の完成時期にも影響を及ぼすことになるでしょう。
現在、賃貸物件に住んでいる方で、これから解約通知を管理会社へ出す場合は、いつまで借りるのか難しい判断を迫られることになります。
また、物件の引き渡し時期を既に解約通知を出してしまった方は、新築物件が完成するまで、他の賃貸物件を借りなくてはならない事態に陥る可能性もあります。
さらには、物件自体が完成していないのにも関わらず、ローン返済がスタートしてしまい、現在住んでいる賃貸物件の家賃と合わせてダブルで支払わなければならない期間が出るなど、想定外の出費を強いられることになります。
ウッドショックで不動産投資に真っ先に影響が出るのが、木材多く利用するアパートなどを建築しようと考えているケースです。
前述の通り、価格の上昇や完成時期の遅れが懸念点として挙げられます。
価格の上昇は、金融機関からの借入れ金額を増大させる可能性があります。
借入れが多くなれば、毎月の返済額が上昇してしまい資金計画が狂わされてしまうことになります。
また、完成時期の遅れは、ローン返済がスタートしているにも関わらず、家賃が取れる状況にならないといったことにもなりかねません。
また、利回りを確保しようとして、家賃設定を上げると見込み通りに入居者が入ってこない可能性もあり、キャッシュフローに影響を及ぼすことになります。
このように、不動産投資に与える影響は少なくないと思われます。
一方、サラリーマンやOLを中心とした会社員の方への影響は極めて限定的といえます。
新築の物件価格が相場と釣り合わないと思えば、購入を急ぐことなく、価格が落ち着くのを待つことができます。
また、新築ではなく中古物件であれば、木材不足の影響を避けることが可能です。
リフォームやリノベーションを必要としない物件が狙い目といえるでしょう。
新築物件の価格上昇に伴い、家賃設定の上昇も見込まれることから、入居希望者にとっては、新築物件に対して手を出すことをためらう可能性も出てきます。
相場に適した中古物件で、相場に適した家賃設定である物件に需要が向いていく可能性を秘めていることを抑えておきましょう。
いかがでしたでしょうか。
日本の不動産市場に影響をウッドショックに与えているウッドショックについて解説してきました。
ウッドショックの起こっている背景や、不動産市場に及ぼす影響についてご理解いただけたでしょうか。
こちらの記事が今後の不動産投資の参考になりましたら幸いです。