不動産投資管理

不動産投資において、原状回復はどこまで必要?費用はいくら必要かを含めて解説!

2021/07/29
不動産投資において、原状回復はどこまで必要?費用はいくら必要かを含めて解説!

不動産投資で賃貸運営をしていく上で、入居者の退去は避けて通ることはできません。

入居者の退去に際しては、「原状回復」を行ってから、次の入居者の募集をかけることになります。

さて、この原状回復にかかる費用はいくら必要になるのでしょうか。また、物件のオーナーはどこまで費用負担をする必要があるのでしょうか。

こちらの記事で解説していきますので、ぜひ最後までお付き合いください。

不動産投資における原状回復とは?

不動産投資における原状回復とは、入居当時の状態に戻すことを指します。

退去する方が出た場合、次の入居者を募集する前に本来の姿に戻すということです。

この原状回復については、かつては、オーナーと入居者のどちらが費用負担するのかトラブルになるケースが多くありました。
そのため、国土交通省より一定の基準を示すためのガイドラインが公表されています。

詳しくは下記リンクからご覧ください。
出典:国土交通省

原状回復にいくらかかる?相場とは?

原状回復には、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。

各種の相場を解説していきます。

ハウスクリーニング

専門業者が家の中を掃除してくれるサービスです。

エアコンの清掃や水回りのカビ、レンジフードの油汚れ、フローリング磨きなど、素人では、中々綺麗に出来ない部分や、手が行き届かない所まで綺麗に掃除してもらえます。

ハウスクリーニングの相場は、ワンルームタイプで20,000円前後1Kタイプで30,000円前後となっています。

床面積によって変動し、広くなるほど金額が上がります。また、汚れの度合いや業者によって金額は前後します。

張替えや補修の必要がなくとも、入居者が入れ替わる際の原状回復に際しては、最低限このハウスクリーニングだけは入れるのが一般的です。

壁や天井の張替え

壁の張替え費用は、部屋の広さに比例します。

相場はおおむね、1,000円~1,500円/㎡となります。

壁の材質によっても前後しますが、25㎡の部屋であれば、25,000円~37,500円、30㎡
であれば30,000円~45,000円程度になるでしょう。

壁の汚れだけなら張替えのみで済みますが、もし壁に穴が開いてしまっている場合は、石膏ボードの交換もしなくてはなりません。
この際には、上記の相場と比較して1.5倍~2倍になります。

また、入居者が喫煙していた場合には、壁だけでなく天井にも黄ばみが付着してしまうため、天井も張替えになる可能性が高くなり費用が嵩んでしまうことになるでしょう。

床(フローリング)の張替え

こちらは、壁の張替え費用と比較して高額になります。

床の材質にもよりますが、相場はおおむね20,000円~50,000円/㎡です。

傷が著しくひどいケースなどを除いて、入居者が入れ替わるタイミングで床の張替えまで行うことは、あまりありません。

床(フローリング)の凹みや補修

床の凹みや補修を行う際にも費用がかかります。

詳細は後述しますが、テーブルやテレビ台、タンスなどの家具が設置されていた場所の凹みや補修については、一般的にオーナーの負担となります。

業者によって前後しますが、相場は概ね2万円~5万円程度です。

原状回復においてオーナーはどこまでやる必要がある?

国土交通省から公表されているガイドラインの中においては、入居者には原状回復義務(=物件を借りる前の状態に戻す義務)があるとされています。

しかし、普通に生活していて生じた傷や汚れなどについては、入居者が負担する必要のない(=オーナーが負担する必要がある)ものだとされています。

一般的に言われている入居者が負担するのは、「故意・過失・不注意」などによるものです。

入居者負担/オーナー負担の事例

実際によくある例としていくつか見ていきましょう。

  • ケース1:フローリングの上にテレビ台が置いてあり、テレビ台の脚の跡が残ってしまった

    このケースでは、普通に生活していたことで残ってしまった跡なので、原則はオーナーの負担となるでしょう。

  • ケース2:入居者が室内でたばこを吸っていて壁が黄ばんでしまった
    このケースでは、入居者の喫煙(=故意)が原因となっているので、原則はオーナーが費用負担する必要はありません。

  • ケース3:入居者が部屋の模様替えをしている時に、机の角を壁にぶつけて穴が開いてしまった
    このケースでは、入居者は故意にやったわけではありませんが、過失・不注意で穴が開いてしまったということで、原則はオーナーが費用負担する必要はありません。

以上が、オーナー・入居者のどちらが負担するかどうかの具体例となります。

耐用年数について抑えておく

もう1点、原状回復についてオーナーの方が抑えておくべき事項があります。

それは、1つの設備についての原状回復費用を必ずどちらかが負担するというものではないということです。

物件及び設備の耐用年数と、入居者が住んでいた期間によって費用の負担割合が変わってきます。

次のグラフをご覧ください。

出典:国土交通省

物件や設備には、耐用年数があり、設置してからの年月が経過していくと入居者の負担割合が減少(=オーナーの負担割合が上昇)していくことになります。

例えば、ご自身の収益物件で耐用年数が6年である壁紙を使っているとしましょう。

入居者が入ると同時に壁紙を張り替えて賃貸契約を結んだ場合についての負担割合について考えてみます。

  • 入居者が1年で退去し、壁紙の張替えが必要になった場合
    −オーナー負担・・・16.7%(1/6)
    −入居者負担・・・83.3%(5/6)

  • 入居者が3年で退去し、壁紙の張替えが必要になった場合
    −オーナー負担・・・50.0%(3/6)
    −入居者負担・・・50.0%(3/6)
  • 入居者が6年で退去し、壁紙の張替えが必要になった場合
    −オーナー負担・・・100.0%(6/6)
    −入居者負担・・・0.0%(0/6)

このように、耐用年数を超えてしまった設備についての原状回復費用は、100%オーナー負担になることが一般的です。

極端な例で説明するならば、10年住んでいた方がヘビースモーカーで部屋の壁が、汚れてしまっていても、耐用年数を大きく経過していることから、交換費用は100%オーナー負担になるでしょう。

  • 6年・・・エアコン/冷蔵庫/インターフォン/カーペット など

  • 8年・・・家具(金属製以外)

  • 15年・・・家具(金属製)、洗面台、便器 など

原状回復に関してよくあるトラブルとは?主な設備の耐用年数は、以下のようになっています。

原状回復における一定のルールはガイドラインで示されているため、その範囲内であればオーナーと入居者の間で揉めることは基本的にありません。

しかし、「過失」や「不注意」に該当するかしないか微妙なラインで入居者が「費用負担をしない」と主張してくるケーがあります。

例えば、台所の小さなシミや浴室の小さなカビなどです。

オーナー側にとっては、「きちんと掃除していれば防げた」のではないか、つまり入居者側の「過失」や「不注意」だと感じても、入居者からすると、「普通に生活していた」だけといったケースです。

中には、明らかに貸す時点ではなかった傷について、「この傷は入居時に既にあったから、私がつけたものではない」と言ってくる入居者もいるようです。

出典:国土交通省

このようなトラブルを避けるために、国土交通省から物件状況チェックリストが公表されています。

このチェックリストをお互いにチェックすることで、トラブルを未然に防ぐことが出来る可能性が高くなるといえるでしょう。

まとめ

原状回復にいくら必要なのか、オーナーがどこまで負担する必要があるのかを解説してきました。

こちらの記事が入退去時の参考になれば幸いです。

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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