「ノンリコースローンとは何か知りたい」
「不動産投資におけるノンリコースローンのメリットデメリットが知りたい」
不動産投資を行なっている方の中で、ノンリコースローンを耳にしたことがあるものの、仕組みについて詳しく知らない方も少なくないでしょう。
ノンリコースローンは日本ではあまり普及していない融資方式のため、一般的には知られていません。
こちらの記事では、ノンリコースローンのメリットやデメリット、注意点について解説していきます。ノンリコースローンを検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。
ノンリコースローンとは「非遡及方(ひそきゅう)の融資」とも呼ばれており、融資に対する返済について対象となる事業や資産を限定することでその範囲以上の返済義務を負わないという融資方式です。
日本ではあまり馴染みのない融資方式ですが、米国では主流の融資方式になります。
日本の住宅ローンなどの一般的な融資方式は、リコースローンと呼ばれる方式になります。
では、ノンリコースローンとリコースローンには、どういった違いがあるのでしょうか?
以下の表にまとめているので、確認してください。
通常融資方式 | ノンリコースローン | |
担保以外の資産からの返済 | 可能 | 不可能 |
融資に関する審査 | 借主の属性は返済能力に関する審査が厳しい | 物件を対象にする審査のため「収益性」に関する審査は厳しい |
返済期間 | 住宅ローンの最大で35年ローンもあるため長い | 短いものが多い |
金利 | 低い | 貸付のリスクが高いため金利が高く設定されている |
融資額 | 個人の信用度によっては融資が決まる | 最低融資額も高額(不動産によって異なる) |
連帯保証人 | 基本的に不要 | 必要な場合が多い |
上記のようにノンリコースローンのほうが不動産によっては多額の融資を受けることが出来る一方で、金利が高く返済期間も短いため融資条件が厳しいというデメリットがあります。出典:各銀行のホームページから筆者が作成
ノンリコースローンが日本で普及しない最大の理由は、お金を貸すことに対する考え方が「物件に対する融資」ではなく、「個人に対しての融資」になっているためです。
基本的に日本で金融機関から融資を受ける際に最も重視される項目は「個人属性」といい、個人の返済能力の有無を審査の基準としています。
当然ながら不動産投資ローンの場合でも、不動産の収益性も重要な審査項目ではありますが、審査で最も重視する項目ではなく個人の返済能力の有無が重要です。
ノンリコースローンを利用出来る金融機関は複数ありますが、法人向けのものが多く、詳しい条件などを記載しているとこは少ないです。
また、金利についても融資額や返済期間によって変わるため、金利の目安を記載している金融機関はほとんどありません。
そのため、金利などの条件について知りたい場合は金融機関に問合せる必要があります。
ノンリコースローンを取り扱っている金融機関は主に以下です。
金融機関名 | URL |
新生銀行(法人向け) | https://www.shinseibank.com/institutional/products/nonrecourse_finance.html |
あおぞら銀行(法人向け) | |
北陸銀行(法人向け) | |
みずほ銀行(法人向け) | https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/finance/real_estate_finance/index.html |
三井住友信託銀行(法人向け) | |
オリックス銀行(法人向け) |
なお、上記の銀行の中で新生銀行だけはノンリコースローンの条件について記載があったため紹介しておきます。
新生銀行 | |
条件 | 内容 |
返済期間 | 3〜5年(要相談) |
金利 | 条件によって異なる |
最低融資金額 | 最低10億円(要相談) |
上記のURLを確認していただければ分かりますが、法人向けのノンリコースローンを取り扱っている金融機関は数多くある一方で、個人向けのノンリコースローンを取り扱っている金融機関はあまり存在しないため、注意が必要です。
ノンリコースローンの主なメリットは以下の2つです。
責任の範囲を限定できるため万が一のときに他の資産に影響しない
審査基準が個人の属性ではなく物件に対する審査であるため収入が低くても利用出来る可能性がある
それぞれについて説明していきます。
ノンリコースローンは融資に対する返済の責任の範囲を限定している融資です。
そのため、不測の事態によって返済が出来ない状況に陥ったとしても、担保に設定している物件を売却して返済の一部に充てる以上の返済義務がありません。
例えば、5億円の物件をノンリコースローンで購入し、残債が3億円残っている状態で返済が出来なくなった場合のケースで、担保にした不動産を売却して2億円にしかならなかったとしても、残債の1億円を返済する義務がありません。
通常の不動産投資ローンの場合は1億円を返済する義務があるため、このことが大きな違いになります。
ノンリコースローンは前述のとおり審査において個人の返済能力ではなく、物件の収益性が重要です。
そのため、通常の不動産投資ローンで個人の属性によって審査に落ちた方でも、物件の収益性が非常に良ければ審査に通る可能性があります。
ただし、最重要視されるポイントが違うだけで、当然個人の属性についても審査項目なので注意が必要です。属性が悪い場合には、ノンリコースローンでも審査に落ちる可能性はあります。
ノンリコースローンの主なデメリットは以下の3つです。
対象物件の審査基準が厳しい
融資金額が高額で金利が高いなど融資条件が厳しい
取り扱っている金融機関が少ない
それぞれについて説明していきます。
ノンリコースローンは物件の収益性を重視するため、対象物件の審査基準が厳しい特徴があります。
融資金額が高額で責任の範囲も限定されているため、銀行にとってはリスクのある貸付になるためです。
そのため、事務所に利用するなど収益性がない物件では利用することは出来ません。
もちろん、収益性が悪いと予測される物件にも、融資をしてくれる可能性は非常に低いです。
したがって、物件の立地や周辺の環境、将来性などの収集した情報を分析し、融資する物件が本当に収益性の高い物件なのかを見極める必要があります。
前述したようにノンリコースローンは金融機関にとってはリスクが高い融資方式です。
そのため、通常の融資よりも金利を高く設定し、返済期間も短くしています。
融資条件を厳しくすることで、貸し倒れのリスクを軽減しているのです。
このため、よっぽど収益性のある物件でないと、収益を出すことは難しいので注意する必要があります。
前述したようにノンリコースローンを取り扱っている金融機関は多くありません。
そのうえ、ほとんどの商品が法人向けの商品で、個人向けのものは基本的に取り扱っている金融機関がないのが現状です。
過去にはノンリコースローンのアパートローンが利用出来る金融機関もありましたが、現在は取り扱っていません。
そのため、個人の投資家が利用出来る可能性は現段階で非常に低いです。
とはいえ、今後日本国内でノンリコースローンが普及していけば、取り扱う金融機関が増加し、利用しやすい環境が出来ていくでしょう。
ちなみに、不動産を利用して資金調達を行うリバースモーゲージでは、ノンリコースローン型の商品があります。
ノンリコースローンを個人で利用出来るケースは非常に稀ですが、仮に利用する場合には以下の2つのポイントに気をつける必要があります。
契約に記載されている「責任財産限定特約」の内容を確認する
契約にある「制約条項」について確認する
それぞれについて説明していきます。
責任の範囲の取り決めについて書かれている「責任財産限定特約」についての内容を確認することが重要になります。
記載されている内容によって返済出来ない場合に、物件の売却金だけで返済する義務がなくなるかが決まるためです。
例えば、「返済原資を担保にした物件に限定する」などの記載があるかどうかは非常に重要になります。
ノンリコースローンの核になる部分なので必ず確認するようにしてください。
ノンリコースローンを利用する際に制約条項についても確認することが重要になります。
制約条項とは貸主のリスクヘッジのための制約で、借り主は定められた項目を守る必要があるためです。
例えば、「担保にした物件を別の抵当権に設定しない」などが記載されることが多い制約条項になります。
ただし、詳しい内容は契約内容によって異なるので、制約条項が無理なく守ることが出来る内容なのかを確認するようにしてください。
ノンリコースローンは責任の範囲を限定する融資方式で、日本ではあまり普及していません。
しかし、返済出来ない場合に他の財産に影響しないなど借り主側にメリットがあることや欧米で主流な融資方式となっているため、今度普及していく可能性も大いにあります。
とはいえ、融資条件が厳しいなどのデメリットも少なくないため、メリット・デメリットをよく理解しておくことが重要です。
リコースローンを検討する際に、ぜひこの記事を参考にしていただけると幸いです。