融資・ローン

自宅と投資用物件を両方ローンで買うには不動産投資ローンと住宅ローンどっちを先に組むべき?

2021/08/13
自宅と投資用物件を両方ローンで買うには不動産投資ローンと住宅ローンどっちを先に組むべき?
  • 「住宅ローンと不動産投資用ローンの違いが知りたい」

  • 「住宅ローンと投資用物件のローンどちらを先に組んだ方が得か知りたい」

不動産投資を検討している方の中には、上記のような疑問を持っている方も少なくありません。自宅の取得と不動産投資の両方をローンで行いたいと考える人が多いためです。

では、両方のローンを組む場合、どちらを先に組むべきなのでしょうか?

結論から言うと、住宅ローンより先に不動産投資ローンを組むべきです。なぜならば不動産投資ローンを先に組んだほうが、融資審査に通りやすくなるからです。

とはいえ、両方のローンを利用するには返済負担率を把握する必要があるなど、注意点も少なくありません。

そこでこの記事では、不動産投資を検討している方に向けて、「住宅ローンと不動産投資ローンの違い」や「両方のローンを利用する際の注意点」などについてより詳しく解説していきます。

不動産投資を検討している方の参考にしていただけると幸いです。

自宅の購入で利用する住宅ローンと投資用物件の購入で利用する不動産投資ローンの違いとは?

住宅ローンと不動産投資ローンの主な違いは以下の4つです。

  • 利用目的が違う

  • 返済原資が違う

  • 融資の審査基準が違う

  • 金利が違う

それぞれについて説明していきます。

利用目的が違う

住宅ローンと不動産投資ローンの大きな違いは、借り入れた資金の使いみちです。

住宅ローンは自身が住むための住居を購入する目的や改築する目的で借り入れた資金を使います。

一方で、不動産投資ローンは借り入れた資金を使って益用物件を購入して、運用することで利益を得ることが目的です。

返済原資が違う

返済原資も違いのひとつとして挙げられます。

住宅ローンは給与や事業で得た収入が借り入れた資金を返済するための原資です。

一方で、不動産投資ローンは収益用物件を運用して得た家賃収入から返済します。

例外として、運用している物件が空室になるなどの理由で家賃収入が減少した場合は、不動産投資ローンであっても自己資金を持ち出して返済することが必要です。

融資審査の基準が違う

融資審査の基準は大きな違いのひとつです。

住宅ローンを使用する際は年収や年齢、勤続年数といった個人の属性が重要視されています。

実際に、国土交通省が令和2年に行った調査によると住宅ローンの審査する際に重要視する項目として、前述した個人の属性以外にも以下の項目を多くの金融機関が挙げています。

  • 返済負担率(年収に対しての返済額の割合)

  • 融資可能額

  • 担保評価

出典:国土交通省の行った令和2年度民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書

上記の中でも、返済負担率は30%以上になると返済出来ない可能性が高くなるため、金融機関によって大きなリスクになります。そのため、返済負担率が高くなると審査に落ちる可能性が高くなるわけです。

一方で、不動産投資ローンの場合は収益用物件の家賃収入で返済するため、収益性が悪い物件だと家賃収入による返済が出来なくなりかねません。

そのため、金融機関は購入した不動産の収益性を審査項目として重視しています。

とはいえ、購入した不動産の収益性だけで審査されるわけではありません。

住宅ローンと同様に個人の属性についても審査されるので、注意が必要です。

金利の違い

金利も違いのひとつです。

住宅ローンで購入出来る住宅は生活するうえで必要不可欠なものであるため、金利面で金融機関がかなりの優遇措置を行っています。

資産や給与が少ない人でもローンを利用して住宅が購入出来るようにするためです。

実際の主なメガバンクの住宅ローンの金利が以下になります。

銀行名金利(固定期間10年の最優遇金利)
三井住友信託銀行0.50%
みずほ銀行0.70%
りそな銀行0.65%
三菱UFJ銀行0.69%
三井住友銀行1.15%

※2021年8月の金利

出典:時事通信から筆者が作成

一方で、不動産投資ローンは事業がうまく行かない可能性もあるため、金融機関はリスクを懸念して金利を高く設定しています。

ちなみに、不動産投資ローンの金利相場は1.5%〜3%程度と言われています。

投資用物件には住宅ローンは利用出来ない

基本的に投資用物件を購入する際に、住宅ローンを利用することは出来ません。

しかし、不動産会社の営業が「住宅ローンを利用して投資用物件が購入できますよ」と説明して騙すことがあります。

そこで、ここでは仮に投資用物件で住宅ローンを利用したことが発覚すると、金融機関がどういった対応をとるのかについて説明していきます。

投資用物件に住宅ローンを利用するのは違反

前述したように投資用物件を、住宅ローンを使って買うことは金融機関との契約上の違反行為に該当します。

そのため、金融機関に違反行為を行ったことが知られてしまうと、金融機関からローンの残債を一括返済するように求められる可能性が高いです。

仮に一括返済出来ない場合は、「自己破産」する事態になってしまう可能性があります。

さらに、信用して融資してくれた金融機関を騙すことになるため、今後融資してくれた金融機関から借り入れを行うことが出来ません。

このように、リスクが大きいので住宅ローンの不正利用はしないようにしてください。

投資用物件に住宅ローンが利用出来るケース

前項で投資用物件では基本的に住宅ローンが利用出来ないと説明しましたが、賃貸併用物件(自宅と賃貸住宅が同じ建物にある物件)の場合は、住宅ローンが使用出来ます。

ただし、「賃貸併用物件で自宅部分の床面積が建物の総面積50%以上」などの条件を満たすことが必要です。

例えば、みずほ銀行の場合なら、「自宅部分の床面積が50%以上」という条件と「提携しているハウスメーカーを利用する」条件で住宅ローンを使うことが出来ます。

このように、賃貸併用物件の場合は条件を満たすことで、住宅ローンを利用出来る金融機関があるので、上手に利用することオススメします。

出典:みずほ銀行

不動産投資ローンを住宅ローンより先に組むのがおすすめ

不動産投資ローンと住宅ローンの両方のローンを利用する場合は、不動産投資ローンを先に利用することをおすすめします。

その理由は以下の2つです。

  • 投資用物件からの収入で年収が増える

  • キャッシュフローで自己資金が貯まる

それぞれについて説明していきます。

投資用物件からの収入で年収が増える

自宅ではなく不動産投資用物件を先に購入することで、投資用物件から得られる家賃収入によって年収が増加するため、不動産投資ローンを先に組むことをおすすめします。

前述したように住宅ローンの審査において「年収」や「返済負担率」は多くの金融機関が重視している項目であるためです。

年収が増えることで返済負担率も低くなり、個人の属性が良くなるため、融資審査で落ちる可能性が低くなります。

このため、不動産投資ローンを先に組むほうが、両方のローンの審査に通すうえでは有効です。

キャッシュフローで自己資金が貯まる

投資用物件の家賃収入が黒字の場合、自己資金を貯めることが可能です。

この自己資金をローンの頭金に利用することで、金融機関が融資する金額が低くなるため、審査に通る可能性が高くなります。

しかも、仮に融資審査に落ちたとしても自己資金が貯まるまで待って頭金を増やすことで、再審査で通る可能性を高くすることも可能です。

ただし、投資用物件の収益性が悪い場合は自己資金が増えていかないため、物件の選び方には注意が必要です。

 住宅ローンより先に不動産投資ローンを組む際の注意点

両方のローンを利用する際に、住宅ローンよりも先に不動産投資ローンを利用したとしても、以下の2つの注意点を理解していないと審査に落ちる可能性が高いです。

  • 返済負担率が高いと審査に落ちる可能性がある

  • 投資用物件の収益性が良くないと審査に落ちる可能性がある

それぞれについて説明します。

返済負担率が高いと審査に落ちる可能性がある

何度も説明しているように融資審査において「返済負担率」は非常に重要な項目です。

返済負担率の目安は30〜40%と言われており、この負担率を超えると融資審査に落ちる可能性が高くなります。

出典:国土交通省

両方のローンを利用する場合、借り入れ金額の合計は高額になり返済負担率が高くなりやすいため、注意が必要です。

こういった事態を防ぐために、両方のローンを利用した際の返済負担率を把握しておく必要があります。

仮に返済負担率が40%を超える場合には、頭金を増やすなどして返済負担率を下げることが有効です。

投資用物件の収益性が良くないと審査に落ちる可能性がある

投資用物件の収益性が悪いと住宅ローンを利用する際に審査に落ちる可能性があります。

収益性が悪い物件の場合、家賃収入によって自己資金が増えずに持ち出しによって自己資金が減っていく可能性が高いためです。

仮に収益性が悪い物件に投資をしている場合は、金融機関は住宅ローンの返済出来ない可能性が高いと判断するため、融資を希望しても審査で落とされる可能性が高まります。

このため、両方のローンを利用する際は、投資用物件の収益性を考慮してローンを申し込むようにしてください。

まとめ

不動産投資ローンと住宅ローンの両方を利用する際は、不動産投資ローンを先に利用することをおすすめします。

不動産投資ローンを先に組むことで、融資審査に通りやすくなるためです。

とはいえ、ただ単に順番を知るだけでなく、住宅ローンと不動産投資ローンの違いをよく理解しておくことが重要になります。

住宅ローンと不動産投資ローンの併用を検討する際の参考にしていただけると幸いです。

関連記事

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

関連コラム