ニュース

中国経済が危ない?中国不動産の恒大ショックが引き起こす影響とは?

2021/12/22
中国経済が危ない?中国不動産の恒大ショックが引き起こす影響とは?

本記事を読んでいる方の中には、下記のようなことを疑問に思われている方も多いのではないでしょうか。

  • 「最近よく聞く恒大ショックってなに?」

  • 「日本にはどんな影響があるの?」

日本への影響について、結論から申し上げますと、恒大ショックは日本も含め世界中の経済にも影響をもたらすほど大きな問題です。本記事では、恒大集団の概要や恒大ショックが起こった3つの理由、そして今後の見通しについて解説します。

こちらの記事を読んでいただければ、恒大集団の問題についての理解が深まるでしょう。中国不動産市況に関心がある方、恒大ショックについて把握しておきたい方はぜひ最後までお付き合いください。

恒大集団とは?

恒大集団とは中国最大級のデベロッパーで、全従業員20万人以上を抱える大手不動産会社です。

2021年現在、恒大集団は世界各国の企業と連携して、中国国内の多くの都市で不動産事業を行なっています。また、不動産売買面積では中国国内で2位を維持しており、売上高は約8兆5,000億円と推定されています。

加えて、不動産以外にも食品の販売やインターネット事業等を手広く手掛けています。このように、恒大集団の名前の由来でもある「常に野心を持とう」という名前通りの活躍が目立ちます。

恒大集団が大手不動産に名を連ねることができたきっかけ

恒大集団が大手不動産会社に名を連ねるようになったのは、1990年代の不動産バブルがきっかけでした。

1996年の創業当初は、小規模なマンション建設や販売がメインの事業でした。しかしその後、中国で不動産バブルが始まり、大規模なマンション開発を行うことで、不動産価格の上昇の波に乗りながら収益を増やしていきました。

その結果、大手不動産会社の仲間入りを果たし、2016年には売上高で世界最大の不動産企業に上り詰めるまで業績を上げていきました

恒大集団の今

黒字経営をしていた恒大集団ですが、2021年9月にデフォルトへの警戒報道がされました。デフォルトとは債務不履行を指し、経営状態が非常に悪化していることを示しています。つまり、恒大集団は倒産する可能性が出てきたというわけです。

報道が出た当時、恒大集団は約2兆円もの負債額を抱えていました。その際は保有する銀行の株式や資産を売却するなど現金確保に動き続け、負債額を圧縮することでどうにか債務不履行の危機を乗り越えることができたのですが、社債の支払いはまだ完了していないため、今でも危機は続いている状態です

中国で恒大ショックが起こった3つの理由

では、なぜ恒大ショックが起こったのでしょうか。その理由は大きく分けて下記の3つです。

  • 高い負債比率で投資を行っていた

  • 手元にあった現金が尽きてしまった

  • 中国政府が金融規制を強めた

それぞれについて解説します。

高い負債比率で投資を行っていた

恒大集団の直近の負債比率は、なんと「1,300%」を超えていると言われており、自己資本の約14倍もの負債を抱えながら投資を行っていたのです。

しかしながら、自己資本の14倍の負債がどの程度の負債なのかわからない方も多いでしょう。一般的に901%以上の負債比率は、債務不履行となる可能性が高いとみなされる数字です。

つまり、1,300%という数字を見ても分かる通り、恒大集団はすでに自己資本では負債を返済できなくなっていたのです。

この事は、恒大ショックが起こった理由の1つとして挙げられるでしょう。

手元にあった現金が尽きてしまった

実は恒大集団は2019年から、利益が出ていないにも関わらず積極的に投資を行ったことが原因で、当座の支払いに必要な現金が不足してしまったのです。

手元の現金が尽きてしまうと銀行から資金調達を行います。調達を続けていった結果、負債だけが膨れていき、返済は追いつかず、今回の債務不履行となりました。

中国政府が金融規制を強めた

3つ目の理由には、中国政府が不動産業界向けに金融規制を強めたことが挙げられます。2020年、中国政府は不動産業界に対して融資を受ける際に下記の基準を設けました。

  • 保有する資産に対して負債が占める割合は70%以下とすること

  • 資本金に対する負債の割合は100%以下とすること

  • 保有する短期負債の金額を上回る現金資産を保有していること

基準を3つ満たしている場合は、1年間で有利子負債が15%増加しても良く、2つ満たしている場合は、有利子負債を10%増加しても良いと定められています。一方、1つも満たせていない企業は、返済能力がないと判断され資金調達ができなくなりました

恒大集団は中国最大級の不動産会社ではありますが、先述したように中国政府が設けた新しい金融基準を1つも満たしていないので、資金調達ができなくなりました

それに加えて、中国政府は総融資額に対する住宅ローンや不動産向けの融資残高にも制限を設けました。その背景には不動産業界のバブル崩壊を防止する目的がありました。

これにより恒大集団は会社の資金調達だけではなく、不動産購入の融資も規制され、致命的な打撃を受けることとなりました。

恒大ショックがもたらす影響は?

恒大ショックはどのような影響をもたらすのでしょうか。

大きく下記2つの大きな影響を挙げることができます。

  • 株価への影響

  • 金融業界への影響

それぞれについて解説します。

株価への影響

恒大集団の株価は、2020年7月から既に徐々に下落しており、2021年9月末には、最高値に比べ、約89%も下落しました。

債務不履行の危機と報道されたときには、恒大集団の倒産や中国経済への影響が懸念されNYダウ日経平均株価も大幅下落し、各国に大きな影響を与えました。また不動産業界に直接関わる銘柄だけでなく、他の銘柄にも影響が及びました。

恒大集団のこれからの動向によっては、相場が乱高下する可能性もあるため、株式投資をされている方は随時チェックするようにしましょう。

金融業界への影響

恒大ショックは第2のリーマンショックまで発展するのでは?と心配されている方もいるようですが、意外とそれは考えにくいのが現状です

なぜならば、恒大ショックは恒大集団のみが債務不履行の危機に陥っているため、被害が限定的だからです。また、リーマンショックのように世界的な不景気になるのであれば、あらかじめ中国政府から資金調達するのではと推測ができます。

ただし、恒大集団の負債総額は中国国内のGDPの約2%にも相当するため、中国国内の金融機関で不良債務が発生し、世界各国に影響を及ぼすことも否定はできません。金融大国へと成長を果たした中国の市況によって、世界の市況が左右される状態になっています。

今後の恒大集団や中国政府の動き方によって状況が変化していくと言えるでしょう。

これから気を付けるべきポイント

恒大ショックの影響を考慮した、これから中国関連のビジネスをする際に気を付けるべきポイントは下記の通りです。

  • 中国不動産関連の物件を取り扱う場合は、その会社が中国政府が打ち出している3つの基準を満たしているか確認する

  • 中国政府の動向についてチェックし、多面的な視点で状況判断する

恒大ショックは恒大集団だけでなく、他の不動産会社にも大きな影響を及ぼしていると言えます。

中国不動産関連の物件を取り扱う事を考えている場合は、その会社は中国政府が政策として打ち出している3つの基準を満たしているかどうかについて調べておきましょう

中には、3つの基準を満たしていない場合であっても、政府が資金投入したり規制の緩和をしたり、経営破綻を回避する政策が取られるケースがあります。いずれにせよリスクが大きいので、取引を避けるといいでしょう。

また、中国における不動産関連のニュースだけではなく、金融関連のニュースなど幅広い情報をチェックしなければなりません。直接的な規制だけでなく、一見関係ないようにも見える間接的な規制などが大きなダメージとなることも考えられます。より多面的な視点で物事を捉えましょう。

まとめ

本記事では、恒大集団の概要や恒大ショックが起こった3つの理由、もたらす影響について解説しました。恒大ショックは、中国国内だけでなく、日本にも影響してくる問題の1つです。

現状では世界的な恐慌になるほどは危険視されてはいませんが、何が起こるかはわかりません。常に幅広い情報に目を向け対策を取りましょう。

また、株式投資をされている投資家にとっても大きな影響を与える内容です。本記事を参考に、これからについて考えてみてはいかがでしょうか。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

関連コラム