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住宅弱者とは?社会問題になっている原因と入居者のためにできること

2021/10/22
住宅弱者とは?社会問題になっている原因と入居者のためにできること

社会問題となっている「住宅弱者」という言葉をご存知でしょうか。

住宅弱者とは経済事情や年齢等の理由から賃貸の入居を断られてしまう人たちのことを指します。こちらの記事では住宅弱者が社会問題となっている原因や、不動産オーナーが入居者のためにできることについて解説します。

本記事を読んでいただければ、住宅弱者課題について理解できることや、空室リスクを下げる方法がわかるでしょう。現在空室に困っている不動産オーナーの方はぜひ参考にしてみてください。

住宅弱者とは?住宅弱者に対する不安

住宅弱者とは、下記のような理由から賃貸の入居を断られてしまう人たちのことを指します。

  • 年齢

  • 国籍

  • 経済力

  • 社会的立場

それでは、なぜこのような人たちは住宅を借りにくいのでしょうか。住宅弱者の根本的な原因は貸し手側である不動産オーナーがリスクを取りたがらないことが挙げられます。もちろんながら不動産オーナーは投資・資産運用のために賃貸経営を行っており、慈善事業で行っている訳ではありません。そのため、不動産オーナーに対して「住宅弱者にも貸すように」と強制できるものではないでしょう。

不動産オーナーがなぜ住宅弱者と呼ばれるような人たちへの入居に不安を感じるのかを解説します。不動産オーナーが住宅弱者の入居に不安を感じる理由は大きく分けて3つです。

  • 経済的な不安

  • 事故・事件への不安

  • 入居者への間違った思い込み

それぞれについて解説します。

経済的な不安

1つ目の理由は経済的な不安です。

不動産オーナーは投資・資産運用として賃貸経営を行なっているため、継続的な収入が見込める人に貸したいのが本音です。不動産オーナーのなかにはローンを組んで不動産を購入している人も多いため、収入が途絶えてしまっては資金繰りに困ってしまうでしょう。

  • フリーター

  • 非正規労働者

  • 高齢者

このような人たちは正社員と比較するとどうしても安定性の面では劣ってしまいます。継続的な収入に不安があることから不動産オーナーは入居を渋るのです。

事故・事件への不安

2つ目の理由は事故・事件への不安です。

不動産は事故や事件が発生した場合、次の入居者へ告知する義務があります。曰く付きの物件に好んで住む人はいないため、必然的に賃料を下げざるを得ません。当然ながら不動産オーナーの収入も減少してしまいます。区分マンションの一部屋であれば影響も限定的ですが、一棟のアパートやマンションの場合、他の部屋の入居率にも影響が出てしまうこともあるでしょう。

このような理由から、孤独死が社会問題となっている高齢者や、文化の違いから隣人トラブルに発展しやすい外国人などに貸すのはリスクと感じてしまうのです。

ただし、今まで明確にしていなかった告知義務の事由や期間について、法改正により明確に決めるようになりました。事故物件について詳しく知りたい方は下記記事を参照にしてみてください。
事故物件になったらどうする?誰でもあり得る投資リスクへの対策法を解説

入居者への間違った思い込み

3つ目の理由は入居者への間違った思い込みです。

  • 生活保護受給者

  • LGBTQ

  • シングルマザー、シングルファザー

上記のような人たちへの間違った思い込みから入居を断られてしまうケースがあります。このような思い込みというのは不動産オーナー自身の思い込みだけではありません。不動産オーナーは他の入居者への影響も踏まえて検討するため、他の入居者が上記のような人たちを良く思わない可能性があることも視野に入れて判断しています。

社会問題になっている背景

不動産オーナーが住宅弱者と呼ばれる人たちへの入居に不安を感じている理由を解説しましたが、なぜこれほどまでに社会問題化しているのでしょうか。

平成30年の住宅・土地統計調査では日本の空き家は846万戸で、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%です。さらに空き家の内「賃貸用の住宅」として空き家になっているのは431万戸と、空き家全体の50.9%を占めています

年々空き家や賃貸用の住宅の空室率が上昇しているにもかかわらず、住宅弱者と呼ばれる人たちがいます。ここからは住宅弱者が社会問題になっている背景について解説します。住宅弱者が社会問題になっている背景は大きく分けて3つです。

  • 公営住宅の増加は見込めない

  • 貸主としてのリスク

  • 貸主や不動産会社の理解不足

それぞれについて解説します。

公営住宅の増加は見込めない

1つ目の背景は、今後公営住宅の増加は見込めないことです。

公営住宅はこれまで住宅弱者の住宅を確保するという大切な役割を担ってきました。しかし、人口減少や人口減少による財政難からこれ以上の増加は見込めません。

これまで担ってきた公営住宅の役割は、今後民間による一般の不動産でも担っていかなければならないでしょう

貸主としてのリスク

2つ目の背景は貸主としてのリスクです。

「1.住宅弱者とは?住宅弱者に対する不安」で解説した通り、不動産オーナーは貸主としてのリスクがあるため、住宅弱者と呼ばれる人たちへの賃貸に積極的ではありません

  • 安定的な賃料収入が見込めない

  • 事故事件の可能性

  • 他の入居者への配慮

不動産オーナーは慈善事業として賃貸経営を行っている訳ではありません。賃貸におけるリスクを考えると入居者を制限することは責められるものではないでしょう。

貸主や不動産会社の理解不足

3つ目の背景は貸主や不動産会社の理解不足です。誤った認識や思い込みによって本来であれば入居できる人が入居できないようなケースも多いです。

  • 生活保護受給者は賃料が支払えないのではないか

  • LGBTQの人たちは他の入居者とうまくやれないのではないか

このような誤った認識や思い込みが住宅弱者の増加に繋がってしまいます。

その他にも、保証会社によって入居を断られるケースもあるでしょう。保証会社とは入居者が家賃を滞納した際に不動産オーナーへの家賃を保証する会社です。入居の際に連帯保証人をたてる場合もありますが、家賃滞納が発生した際に連帯保証人から取り立てるのも一筋縄にはいきません。そのため最近では保証会社を入れるのが一般的です。

保証会社は当然ながら入居者の家賃滞納がなければ利益も大きくなるため、入居審査の段階で入居者の支払い能力を厳しくチェックします。保証会社の段階で入居が断られてしまうと、不動産オーナーのもとまで話が届きません。住宅弱者に対して理解のあるオーナーだとしても、その前の段階で入居を断られてしまうのです。連帯保証人ではなく、保証会社を入れて審査を行う時代背景も少なからず影響していると言えるでしょう。

社会問題を解決するためにできること

ここからは住宅弱者問題を解決するためにできる3つのことを解説します。

  • 貸主と住宅弱者の相互理解

  • 住宅弱者に住宅を貸すメリットを知る

  • 万が一なときに備えて制度の活用

それぞれについて解説します。

貸主と住宅弱者の相互理解

1つ目は「貸主と住宅弱者の相互理解」です。

不動産オーナーは貸主としてのリスクがあり、賃料収入が生活に直結しているケースもあります。様々なリスクを考えたうえで判断しなければならないことを認識しましょう。また、住宅弱者に対してはトラブルを起こすのではないかという一種の間違った思い込みがあります。確かに賃料の滞納や夜逃げといった不動産オーナーに対して、迷惑をかけてしまうケースもあるでしょう。

しかし、そういったトラブルは全ての住宅弱者に当てはまる訳ではありません。一部の人たちの影響で「住宅弱者」と一括りにまとめずに、一人一人に向き合いましょう。貸主の立場からすると、賃貸に出すにあたり一人一人と向き合うのは時間がかかってしまいます。そのような際には不動産会社と協力をして入居に関してのチェックシートを作成するなどの対策を考えましょう。

住宅弱者に住宅を貸すメリットを知る

2つ目は「住宅弱者に住宅を貸すメリットを知る」です。

住宅弱者に住宅を貸すことで、賃貸の継続性が高まります。住宅弱者と呼ばれる人たちは、これまでに何度も入居を断られていることもあり、一度住まいが確定した場合、その後頻繁に引越しはしません。生活保護受給者であれば、生活保護として支給される住宅扶助を家賃に当てます。何より生活保護費は使い道が制限されており、生活保護担当の職員の見回りもあるため、安定かつ継続的な賃料収入が見込めるでしょう。

現在空室率が高く安定した賃料収入が得られない不動産オーナーにとっては、大きなメリットではないでしょうか。

万が一なときに備えて制度の活用

3つ目は「制度の活用」です。

住宅弱者が社会問題となっているなかで、様々な制度が作られています。不動産会社のサービスや公的に用意されている制度を活用しましょう。万が一に備える方法は大きく分けて3つです。

  • サブリース

  • 行政・NPOのサポート

  • 入居者への条件設定

それぞれについて解説します。

①サブリース

サブリースとは、不動産会社が不動産オーナーから不動産を借り上げて、第三者へ転貸する仕組みです。「不動産オーナー⇔不動産会社⇔入居者」という関係になり、不動産オーナーは不動産会社から賃料を受領します。

「通常の賃貸とどう違うのだろう」と感じる方も多いでしょう。サブリースでは不動産会社が借主となるため、不動産会社の転貸先が入居・未入居にかかわらず不動産会社から賃料収入を得られます。通常の賃貸と比べると家賃が低くなってしまうデメリットもありますが、不動産管理を不動産会社に一任できることから手間とリスクを減らした賃貸経営が可能です。

サブリースについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。

②行政・NPOのサポート

住宅弱者問題の解決に向けて、行政やNPOが制度を広げています。

住宅弱者向けの賃貸として物件を登録することで、不動産オーナーの改修費や家賃を補助する制度もあります。このような制度を利用することで不動産オーナーのリスクも軽減されるでしょう。

③入居者への条件設定

万が一に備えるには入居者への条件設定も有効です。

  • 年収

  • 雇用形態

  • 過去の滞納履歴

このような最低限の内容を設定することで、安心して賃貸に出せるでしょう。通常の保証会社では審査が降りない場合は、保証会社を外すなど不動産会社とも協力して進めましょう。

まとめ

こちらの記事では、住宅弱者が社会問題となっている原因や、不動産オーナーが入居者のためにできることについて解説しました。

住宅弱者問題は、住宅弱者と呼ばれる人たちへの誤った認識が大きな原因となっています。不動産オーナーとして賃貸経営をするにあたり、リスクを考えるのは当然のことですが、社会問題に関心がある方はぜひこちらの記事を参考に、入居者のためにできることを考えてみてはいかがでしょうか。

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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