不動産の売却価格を算出するときに参考となるのが「評価額」です。ただ、不動産の評価額には「一物四価」という言葉がある通り、4つの評価額があるそうです。
それぞれ利用方法が異なっており、一つの不動産評価額なのに金額も異なってきます。そこでこの記事では、不動産の「一物四価」について詳しく解説していきます。
まずは、以下4種類の不動産評価額の概要について解説します。
(1)公示地価
(2)固定資産税評価額
(3)路線価
(4)実勢価格
結論からいうと、不動産を売却するときは「実勢価格」が最も参考になります。その他の評価額は相続や税金に関する評価額です。
まずは公示地価を解説します。公示地価は最も代表的な不動産評価額といえるでしょう。というのも、公示地価はそのほかの評価額の基準になるからです。
公示地価は国土交通省が選定した全国3万ほどのスポットで、複数の不動産鑑定士が評価額を定めます。
全国3万ほどのスポットがあるものの、自分が知りたい場所が「鑑定するスポット」として指定されているかは分かりません。
特に市街地よりも郊外の方が標準値の設定場所が少ない傾向にあり、参考になるような標準値が見当たらないということも少なくはありません。
そのため不動産の売却価格を定めるときには、あくまで参考にする程度の評価額です。公示地価は、以下より紹介するその他評価額の「基準」となる評価額であると認識しといてください。
次に、固定資産税評価額について解説します。
そもそも固定資産税とは、マンションや土地など不動産を持っていると毎年納税しなければいけない税金のことです。
その固定資産税を算出する際に使われるのが、固定資産税評価額になります。
固定資産税評価額は、固定資産評価基準に基づいて各市町村が決定しています。つまり、各自治体でひとつひとつの不動産を確認し、評価額を決めています。
固定資産税評価額は、固定資産税のほかに以下の税金を算出する基準になっています。
一般的に固定資産税評価額は、公示地価の70%程度が目安です。あくまで税金を算出する際の基準になるため、不動産の売却価格の参考にはしません。
次に路線価について解説します。路線価は相続税や贈与税を決定する際の基準で、公示地価の80%程度が目安になります。
路線価は道路に面した宅地の1㎡あたりの価額が、千円単位で表示されているのが特徴です。
たとえば、「210」という表記があれば、その道路に面する土地の路線価は1㎡辺り21万円(210千円)ということです。
仮に土地の広さが100㎡なら、その土地の路線価は2,100万円(21万円×100㎡)になります。そして、基本的にはその金額がそのまま「相続税評価額」になります。
路線価は相続税・贈与税に関する不動産評価額なので、売却時にはほぼ参考にしません。
実勢価格とは、実際に取引がなされた価格のことです。上述したように、不動産の売却価格を算出するときには、この実勢価格を最も参考にします。
具体的には、不動産会社がレインズを利用して最近の取引事例を調べます。
レインズとは、不動産会社だけが閲覧できるネットワークシステムのことで、過去の成約事例や現在の売り出し物件を調べることが可能です。
その最近の取引事例を元に算出された不動産評価額が「実勢価格」であり、つまり実勢価格は売却査定価格の元なのです。
ただし実勢価格は、特殊な要因によって相場より極端に安く取引されている場合や、その逆の場合もあります。
つまり、個々の都合による「特殊な取引」の影響を受けることがあるのです。そのため、複数の実勢価格を調査することが一般的です。
次に、不動産会社が実際に評価額(売却査定価格)を算出する方法を解説します。不動産会社が利用する方法は以下3つです。
(1)取引事例比較法
(2)収益還元法
(3)原価法
結論からいうと、基本的には取引事例比較法がメインとして利用されます。そのため、取引事例比較法を重点的に理解しておけば問題ありません。
以下より詳しく解説していきます。
最も利用されている方法が取引事例比較法です。これは、上述した実勢価格を算出する方法と同じです。
つまり査定対象の不動産と近しいエリア、かつ近しい条件の成約事例を集めて価格を算出するという方法になります。
ただ、それぞれの不動産には特徴があるので、状況を見て補正が必要です。
特に成約事例が少ないエリアの場合は、不動産評価額を算出する根拠が少ないので、算出する人によって金額が異なることもあります。
そのため、不動産を売却するときは「複数の不動産会社に査定依頼した方が良い」と言われるのです。
不動産の査定依頼をしたとき、不動産会社は基本的に取引事例比較法を利用して査定価格を算出していると思っていいでしょう。
収益還元法は、投資用不動産の評価額を算出するときに利用されます。収益還元法には以下2種類あります。
直接還元法の計算式は、「1年間に得る収益÷還元利回り(希望する利回り)」です。
たとえば、年間家賃収入150万円で経費30万円のマンションを、還元利回り6%に設定した場合の不動産評価額は以下の通りです。
「(家賃収入150万円-経費30万円)÷還元利回り6%=20,000,000円」
直接還元法の計算は、還元利回りの設定がポイントになります。
還元利回りが1%ずれると不動産評価額に大きな差が出ますので、近隣の市況・利回り相場などを基に還元利回りを設定しましょう。
なお、DCF法は直接還元法に「将来売却する場合の価格」を加味した金額になります。
原価法は、主に戸建ての不動産評価額を算出する際に利用されます。
原価法は、まず「現時点で新しく不動産を新築した場合の価格はいくらか?(再調達価格)」を算出します。
そして、上記の再調達価格に築年数の経過など「下落したと思われる価格」を差し引いて算出するという流れです。
戸建の不動産評価額を算出するときは、原価法と上述した取引事例比較法を組み合わせるのが一般的です。
次に、自分で不動産評価額を調べる方法を解説します。具体的には以下の方法です。
(1)サイトで実際の成約事例を確認する
(2)ポータルサイトをチェックする
(3)不動産会社へ査定依頼
取引事例比較を行う際、実際の成約事例を調べなければいけません。実際の成約事例を調査するにあたり、よく利用されているサイトが下記の2つです。
詳しく解説していきます。
REINS Market Informationとは、上述しているレインズを閲覧できるサイトです。
レインズは不動産会社しか閲覧できませんが、REINS Market Informationなら誰でも見ることができます。
ただし、住所が番地まで表示されません。たとえば「東京都豊島区西池袋」までしか検索できないので、レインズに比べるとやや正確性に欠けます。
とはいえ、不動産会社以外がレインズのデータを見られる唯一のサイトなので、ざっくりと不動産評価額を調べるには適しています。
土地総合情報システムは国土交通省が運営しているサイトで、REINS Market Informationと同じく成約事例を検索できます。
土地総合情報システムは地図上から調べたいエリアを選択できるので、検索しやすいという点が特徴です。
成約事例の価格は国土交通省のアンケート調査に基づいていますので、レインズに比べるとやや正確性に欠けます。
REINS Market Informationと一緒に閲覧して、不動産評価額の参考にしてみてください。
また、SUUMOやHOME’Sなどのポータルサイトでも不動産評価額を調べることができます。
ポータルサイトなら住所も番地まで分かりますし、戸建て・土地・マンションなど「調べたい不動産種類」も指定できます。
注意点は、あくまで売り出し価格しかわからないという点です。つまり、実際に成約された金額ではないため、値引きを考慮してやや高い価格になっているということです。
そのため、ポータルサイトからの情報は参考程度に考えて、前項のREINS Market Informationや土地総合情報システムの情報を優先させた方がいいです。
不動産評価額を正確に調べたいときは、不動産会社へ査定依頼するしかありません。
不動産会社にはノウハウがあるので、成約事例を基に精度の高い不動産評価額を算出できます。
とはいえ不動産会社ごとに不動産評価額は異なるので、複数の不動産会社に査定依頼すると良いでしょう。
その上で不動産評価額の金額だけではなく、その評価額を算出した根拠を説明してもらうことで、より精度の高い不動産評価額が見極められます。
なお、実際に売却する前に概算を把握したいのであれば、一括査定サイトを利用するといいでしょう。
当サイトにも無料にて利用できる査定サイトがありますので、まず概算の売却価格を知っておきたい方は、ぜひ利用してみてください。
このように、不動産の評価額には目的に応じて4つの種類があります。そのため、まずはそれぞれの評価額がどのようなときに利用されるのか把握しておきましょう。
また、不動産の売却価格を査定する場合には、不動産会社は基本的に「取引事例比較法」を利用します。
自分自身でも、REINS Market Informationや土地総合情報システムを利用することで成約事例を調べられるので、気になる方は利用してみることをおすすめします。
ただし、最終的には不動産会社に査定依頼しないと不動産評価額は分かりません。
そのため不動産の売却を検討している方は、不動産会社へ査定依頼する方法が最も早く不動産評価額を知ることができる点は認識しておきましょう。