不動産投資とは

NOIとは?利回りの計算方法を徹底解説

2021/01/27
NOIとは?利回りの計算方法を徹底解説

収益不動産の選定で重要な判断基準となるのが、物件の「利回り」です。

本記事は、「NOI利回り」について、利回りの基本的な意味をまじえながらポイントを解説します。NOI利回りの意味や、物件選びの指標を知りたい人はぜひ読んでみてください。

NOIとは「収益不動産の実力を示す指標」

NOIとは、「Net Operating Income」の頭文字をとった略称です。日本語では「純収益」という意味になります。不動産投資におけるNOIとは、収益不動産で得られる収益(家賃)から、管理費や固定資産税などの経費を差し引くことで算出可能です。不動産運営により生み出される純粋な収益額が把握できるため、収益不動産の実力を示すとされています。

NOI利回りの基礎知識

NOI利回りとは、投資金額に見合うだけの利益を出せるかの指標のひとつです。不動産投資におけるNOI利回りでは、空室によって家賃が得られなくなるリスクや経費によるコストを含めながら不動産の資産価値が計算できます。投下資金に対する投資収益の割合をより具体的かつ実質的にあらわせるのが、NOI利回りです。

ただし、一般的にNOI利回りでは減価償却費やローンの金利などは含まれません。減価償却費は償却方法によって数値が変動しますし、ローンの金利は金融機関や債務者の状況によって異なるからです。NOI利回りではこのような不確定要素を含めないため、不動産そのものの客観的かつ現実的な収益性の数値化が可能です。

表面利回りの基礎知識

表面利回りとは、投資する物件の価格に対してどの程度の家賃収入が得られるかの表面的な収益性を示す数値です。下の計算式の通り、年間の家賃収入の総額を物件価格で割って算出できます。

  • 表面利回り(%)=1年間の家賃収入÷投資用物件価格×100

表面利回りを算出する際の項目として上げられている「1年間の家賃収入」とは、満室状態での収入を想定しています。しかし、実際には永久的な満室状態は非現実的です。

一般的に広告や業者などによる投資物件の紹介は、不確定な要素や可能性をあらかじめ算出するのが難しいため、一般的に表面利回りが明記されています。ただし、不動産の収益性を的確に把握するには、表面利回りだけでなく、NOI利回りも含めた総合的な把握が重要です。

NOI利回りと表面利回りの違い

NOI利回り表面利回りの違いは、「実態に即した収益性かどうか」にあります。先述した通り、NOI利回りは空室が発生した際の清掃費や新しく入居する人を募る広告費、固定資産税などさまざまな経費や損失を含めながら算出する点が特徴的です。

一方、表面利回りはシンプルに物件の収益性を把握できるメリットがあります。しかし、常に満室状態を想定して算出されているため、必ずしも物件の本当の状態を反映している利回りとはいえません。

したがって、物件の収益性をより正確に把握したい際には、表面利回りだけでなく、NOI利回りの算出が必要不可欠です。

NOI利回りの計算式

NOI利回りに関する基本的な内容が理解できたところで、この章ではNOI利回りを算出できる計算式について解説します。

計算式1:簡単に算出したい場合

1つ目は、近隣物件のNOI利回りを利用した簡易的な計算方法です。収益物件における実際の利回りではないので、おおまかな数値を簡易的に把握したいケースで利用できます。計算式は次の通りです。

  • NOI利回り=表面利回り×NOI率

NOI率はあくまで参考値であるため具体的な計算はできないものの、周辺の利回りを元にしながら収益物件のNOI利回りが算出できます。NOI率は、次の計算式によって求められます。

  • NOI率=100%-(空室率+運営費率)

※100%とは、満室を想定した場合の家賃。

例えば、空室率10%(10室のうち1室が空室)で、運営費(満室を想定した場合の運営費)の割合が40%の場合、NOI率は50%になります。全国の不動産のNOI率のデータは、専門の調査会社が公表しているため、投資を検討している物件と近いNOI率のデータからの概算が可能です。

計算式2:より正確に算出したい場合

2つ目は、収益物件における実際の家賃収入や費用を考慮する計算方法です。より具体的なNOI利回りを把握したいケースで利用されます。計算式は次の通りです。

  • NOI利回り=1年間の家賃収入×(1-空室率)-1年間でかかる管理運営経費}÷(物件購入価格+購入経費)×100

1年間の家賃収入は、空室率を含めて1年間で得られる家賃の合計額です。1年間でかかる管理運営経費には、固定資産税・火災保険・管理費・修繕費などが含まれます。また、金融機関から融資を受けて物件を購入する場合、購入経費に手数料もプラスされます。

NOI利回りの相場はどのくらい?

土地代を含んだ投資額に対するNOI利回りは、4%〜6%が相場といわれます。一般的に借入金と自己資金の割合は7:3が妥当とされており、借入金返済後のキャッシュフローを考慮すると、最低4%の利回りが必要だからです。何千万円ものローンを組んでも、年間で数百万円ほどの利益にしかならなければ、投資のメリットはあまり感じられません。労働収益の方が早く低リスクで稼げると感じる方もいるでしょう。よって、4%以上のNOI利回りは、投資者が利益を感じられる適正水準として必要なのです。

土地をすでに持っている場合、建築投資に対するNOI利回り7%〜8%が妥当といわれます。しかし地方の場合、賃料が都市部よりも安いため、NOI利回りは7%〜8%に達しないケースがほとんどです。3%を割り込む投資や、スタート時点の利回りが低いと、利益のほとんどがローン返済にまわるため、経営が苦しくなります。よって、地主による地方不動産への投資も、NOI利回り5%をひとつの基準にしてみてください。

NOI利回りの活用事例

表面利回りでは優位だった物件が、NOI利回りでは劣る場合があります。空室率を加味することで、表面利回りでは把握しきれない物件価値が見えてくるからです。実際に次の2つのアパートの事例を比較してみましょう。

【アパートA】

1年間の家賃収入(満室):400万円
年間管理運営経費:50万円
物件購入価格:4,000万円
購入経費:350万円
空室率:10%

表面利回り:400万円÷4,000万円×100=10%

NOI利回り:{400万円×(1-10%)-50万円}÷(4,000万円+350万円)×100≒7.12%

【アパートB】

1年間の家賃収入(満室):300万円
年間管理運営経費:40万円
物件購入価格:2,500万円
購入経費:250万円
空室率:30%

表面利回り:300万円÷2,500万円×100=12%

NOI利回り:{300万円×(1-30%)-40万円}÷(2,500万円+250万円)×100≒6.18

表面利回りを比較した場合、アパートAは10%、アパートBは12%となり、アパートBの方が得な物件のようにみえます。しかし、NOI利回りでは、アパートAは7.12%、アパートBは6.18%となって、空室率を考慮した際の資産価値はアパートAがアパートBを上回ります。

NOI利回り改善の方法2つ

この章では、低いNOI利回りをアップさせる方法ご紹介します。代表的な改善方法を2つみていきましょう。

方法1:家賃収入アップ

アパートの希少価値を高めて、入居者のニーズを満たせると競合の物件との差別化を図ることが可能です。競合物件にはないけれど、入居者のニーズにあう物件の特徴がないかを確認し、リフォームや設備投資などで価値を高められないか検討できます。追加コストに関しては、収支バランスの取れたコストを考慮する必要があるため、投資会社へ相談すると確実です。

また、入居者に長く住んでもらえるかは、NOI利回りに大きな影響を与えるため、居者の退去頻度を少なくする施策も重要です。ライフイベントによる定期的な入退去は不可避ですが、住居そのものへの不満は工夫次第で解消できます。例えば、退去者が出たらアンケートを実施すると、少しずつですが入居者の不満を解消可能です。投資者ひとりで対処が難しい内容もあるため、管理会社や投資会社と連携での対応をご検討ください。

方法2:運営諸経費の削減

不動産運営には毎月のさまざまな支出がかかります。例えば、「退去後の原状回復」「入居募集の広告」「管理業務委託の費用」などです。これらのコストは、依頼する会社によって料金体系や手数料などが異なるため、相見積もりをとってさらに料金が安くならないか検討ができます。

NOI利回りでみる物件選びのポイント

最後に、NOI利回りで注意すべき物件選びのポイントを解説します。

空室リスク

対象物件ではなく、近隣のNOI率データからNOI利回りを算出する際には、検討している物件と比較して数値を考える必要があります。多くの物件では空室率も公表されていますが、楽観的な見立てをすると予想以上のリスクとなるため、数値の設定には慎重な判断が重要です。

地方と都心の差異

都会は地方の物件よりも入居率が高くなると考えがちですが、実態は物件によって異なります。都会でも空室率が高く、投資に向かない物件はありますし、地方でも入居者のニーズにマッチしていて満室状態が続く物件もあります。

固定観念にとらわれずに、ご自身の目で物件価値をご判断ください。

物件の将来性は加味されない

NOI利回りは、過去の実績をベースに算出されるため、中古物件では存在するエリアの将来性や発展性などの要素は反映されません。また、新築物件においても、過去の実績がないため、NOI利回りも想定値となります。

ゆえに、将来の空室率や入居者の募集に影響を与えるような要因に関しては、NOI利回りとは別の観点からの検討が必要です。

精緻な見積もりに手間がかかる

正確なNOI利回りの算出には、修繕費や管理費などの経費の見積もりをそろえなければなりません。ただ、投資の検討段階では見積もりの依頼にハードルを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。不動産投資会社によっては、検討段階から投資物件のコストについて相見積もりを引き受けてくれるところもあります。

手間をかけずに正確な投資運用をしたい方こそ、投資のプロにご相談ください。

まとめ

NOI利回りとは何かについて、物件選定の具体的なポイントを交えながら解説しました。要点は次のとおりです。

  • NOIとは営業純利益のこと。NOI利回りは、空室による家賃損失リスクや諸経費による出費を加味しつつ、投資でどのくらい利益が上げられるかを示す指標である。
  • 利回りの改善ポイントは大きくわけて、「収入アップ」と「コスト削減」の2つである。

物件の資産価値は、ポジティブな側面だけで判断されるわけではありません。NOI利回りを元に、空室やコストなども加味しながら収益物件の実力の把握がポイントです。ご紹介した内容を収益性の高い物件選びや不動産運用に、ぜひお役立てください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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