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アメリカ不動産投資は今後どうなる?買い時も合せてプロが解説

2024/03/14
アメリカ不動産投資は今後どうなる?買い時も合せてプロが解説

アメリカでは、これまで人口増加や経済成長により不動産価格が上昇傾向にありましたが、新型コロナウイルス感染拡大、インフレ、住宅ローン金利の上昇など、さまざまな影響が懸念されています。

 アメリカの一部では、住宅販売が低調とも言われるなか、今後のアメリカ不動産市場は、活発化していくのでしょうか。

今回は、アメリカ不動産投資の今後の見通しやアメリカ不動産投資をするメリット、アメリカ不動産は今買い時かどうかについて解説します。これからアメリカ不動産投資を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。

アメリカ不動産投資の今後の見通し

アメリカでは、高いインフレ率や利上げなどにより、不動産価格はどのような影響があるのでしょうか。ここでは、アメリカ不動産投資の今後の見通しについて解説します。

不動産価格が上昇し続ける?

アメリカ大手格付け会社・スタンダード&プアーズ(S&P)の調査によると、2021年のアメリカ住宅価格は、過去34年間のデータの中でも最高となる前年比18.8%の上昇となっています。

住宅上昇の背景には、連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和による低金利政策やコロナ禍によるテレワークなどの普及により、戸建てを購入する動きが広がったことなどが挙げられます。

引用元:独立行政法人日本貿易振興機構「2021年の米国住宅価格は過去最高の伸び、オフィス需要は低迷が続く」

一方、 2022年のアメリカでは、新型コロナウイルスのパンデミックが落ち着きを見せ始めていますが、急速なインフレとFRBによる利上げが不動産価格に影響を受けています。

FRBは、2022年3月に0.25%、5月に0.5%、11月には0.75%と利上げを続けています。
この利上げにより、住宅ローン金利は21年ぶりに7%を突破しているのです。

Freddie Mac(連邦住宅抵当貸付公社)が2022年10月13日に発表した30年固定型住宅ローン金利は6.92%で、前週の6.66%から0.26%上昇しています。

また、27日発表の30年固定型住宅ローン金利は、直近1週間の平均で年7.08%と上昇しているのです。

引用元:Freddie Mac「Primary Mortgage Market Survey®」

このように住宅ローンの金利が上昇すると、住宅価格も上昇する傾向にあります。
今後は、住宅の在庫不足がすぐに解消されるわけでもなく、住宅価格の上昇が予想されます。

人口増加による賃貸ニーズの増加

アメリカは移民大国であり、先進国で唯一、人口が増えています。アメリカ統計局推計によると、人口は2021年7月時点で約3億3,200万人です。

引用元:外務省「アメリカ合衆国(United States of America)基礎データ」

また、アメリカ国勢調査局が2022年1月6日に発表したデータによると、2022年1月1日時点でのアメリカの人口は、約3億3,240万人と推計しています。

引用元:アメリカ国勢調査局

国連が2019年に公表した世界人口予測では、2050年におけるアメリカの人口は3億7,942万人と推計しています。

このように人口の増加は、住宅の購入だけでなく、賃貸需要にも影響を及ぼしているのです。

ただし、2022年1月1日時点でのアメリカの人口は、2021年を下回る数字となっており、人口増加率の鈍化が見られます。

住宅金利上昇によりアメリカ国内の購入需要が下落している

前述したとおり、住宅ローンの金利が上昇すると住宅価格も上昇するため、アメリカ国内の購入需要が減少傾向にあります。

全米不動産協会(NAR)が発表した9月の中古住宅販売件数(季節調整済み、年率換算)は前月比1.5%減の471万戸となっています。

引用元:日本経済新聞「9月の米中古住宅販売、8カ月連続減 購入のハードル高く」

今後、住宅ローン金利がさらに上昇するとなると、購入需要が下落していく可能性が高いでしょう。

また、住宅価格の上昇の背景には、ウクライナ危機などによる建築資材の高騰も影響しているものとみられています。例えば、コロナ禍のウッドショックによる木材価格高騰、鉄鉱石の需要拡大による高騰などです。

しかし、最近ではアメリカの建築需要が下落傾向にあり、木材の需給バランスが元の状態に近づいているため、今後は適正価格に改善される見通しとなっています。

シンガポールなどと比較して不動産価格が安い

シンガポールは、東南アジアの中でも世界中の富裕層が集まる国です。アメリカより税負担が低く、多額の投資マネーが集まるといった特徴もあります。

そのため、不動産価格はすでに高騰しており、地元の富裕層や移住した高所得者が価格を押し上げているとみられます。

また、シンガポールの家賃は、世界30都市の中で最も高くなっているのです。

エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が発表した世界の都市生活費ランキングでは、シンガポールが3年連続の首位となっています。

したがって、アメリカの不動産価格は、上昇傾向にあるといってもシンガポールより安いと言えるでしょう。

 一方、シンガポールの人口は増加傾向にあります。シンガポール政府が発表した2022年6月時点の人口が563万人と、前年同月に比べ3.4%増加しているのです。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う渡航制限の影響もあり、一時は大きく減少していましたが、現在は入国制限の緩和などを受け、3年ぶりの増加に転じています。

インフレにより家賃上昇する見込み

前述したとおり、住宅ローン金利の上昇により住宅価格も高騰しています。そのため、アメリカでは一戸建ての購入を断念し、賃貸を選択する人が増加傾向にあります。

しかし、その賃貸需要が高まった結果、家賃の上昇が顕著に示されているのです。

賃貸住宅情報提供企業・ザンパーの全米主要都市における家賃の中央値をまとめた月次レポートによると、2022年8月ワンベッドルームの賃料の全米中央値は、約1,486ドルとなり、過去最高を記録しています。

最も高額な賃料は、ニューヨーク州ニューヨークで中央値は3,930ドルと前年同月の調査から39.9%上昇しています。

2番目に高額となっているのは、カリフォルニア州サンフランシスコで3,040ドル(8.6%上昇)です。

引用元:ザッパー「全米主要都市における家賃の中央値をまとめた月次レポート」

一方、2022年11月11日にアメリカ労働省発表した10月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年比伸び率が7.7%で9月の8.2%から減速傾向にあります。

引用元:米労働省労働統計局「2022年10月の消費者物価指数」

このようにアメリカのインフレがピークアウトの兆しを示していますが、専門家によると家賃の上昇は、この先も続くと予測しています。

FRBによる利上げが住宅ローンの条件の引き上げとなっているためです。
今後、住宅価格が下がったとしても購入のハードルが高いままになる可能性があるということです。

さらに多くのビジネスマンが集まるニューヨークやマンハッタンなどは、常に賃貸需要が高い状態にあり、家賃が下がりにくくなっています。

 アメリカ不動産投資をするメリット

ここまでアメリカ不動産投資の今後の見通しについて解説しました。住宅価格や賃料の高騰による不安要素がありますが、これからアメリカ不動産投資を行う方はどのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは、アメリカ不動産投資をするメリットについて解説します。

世界の基軸通貨のドルで資産を持てる

アメリカ不動産投資では、世界の基軸通貨であるドルで資産を保有できるのが大きなメリットと言えます。

ドルへの信頼性は高く、金や原油など、貿易でもドルが決済通貨となっているのです。

また、不動産の売却代金や家賃収入などもドルで受け取れます。したがって、ドルは、分散投資には欠かせない通貨となります。

外国人の不動産購入に制限がない

新興国では外国人の土地所有が禁止されている場合があります。

例えば、カンボジアでは、自然人または法人にかかわらず、外国人による土地所有を禁止しています。

インドネシアでは、外国人の土地所有は認められませんが、使用権は認められます。

一方、アメリカは、外国人による不動産投資の規制を設けていません。そのため、自由に土地を所有できます。

インフレに強い

預金や国債などは、インフレ時に価値が下がることが少なくありません。

不動産であれば、資産価値が下がりにくく、家賃収入の増加も期待できます。

特にアメリカでは、家賃が上昇傾向にあるため、賃料収入がインフレ対策となるでしょう。

分散投資先として強い

アメリカ不動産を所有することで分散投資ができるのもメリットとなります。

新興国と比べ、経済成長や国の信頼性など、投資先では欠かすことのできないのがアメリカです。

公正で透明性のある取引ができるので安心して投資することが可能です。

ただし、アメリカの中でも治安の良いエリアと治安の悪いエリアがあります。そのため、投資するエリアに注意することが大切です。

アメリカ不動産は今買い時? 

アメリカでは、人口増加率の鈍化がみられるものの、まだまだ経済成長が見込まれます。今後も不動産の投資先として需要が高まるものと予想されます。

ただし、高いインフレ率や利上げなどにより、不動産価格が上昇傾向にあります。

また、新型コロナウィルス感染の増加やウクライナ情勢など、さまざまな要因が不動産価格に影響を受ける場合もあるでしょう。

したがって、ニーズが高い時期など、状況を見極めながら不動産売買取引のタイミングが重要になります。

まとめ

アメリカは人口増加に加え、経済成長も見込まれる魅力的な投資先の一つです。現在は、FRBによる利上げや高いインフレ率により、不動産価格が上昇傾向にあります。

そのため、住宅ローンの金利が上昇すると、住宅価格も上昇します。

しかし、住宅不足のアメリカでは、今後も住宅需要が高まるものと予想されます。状況を見極めながら不動産売買取引のタイミングが重要となるでしょう。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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