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「建築確認申請(確認申請)」という言葉、建築物の建設をご検討された方なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
建築確認申請は、専門的な事柄であるゆえに、業者に任せきりになりがちな手続きですが、建築主として詳細を把握していないと予期せぬ問題に発展する可能性があります。
そこで今回は、確認申請で何をすればいいのか、必要書類や申請までの流れを交えて解説します。
建築確認申請とは、住居の建築前や大きなリノベーション・改築工事をする前に都道府県や市などに必要書類を提出し、建築確認の手続きを申し込むことです。よって、建築確認とは、建物や地盤が建築基準法に適合しているか、都道府県や市町村の建築主事(建築確認等の事務担当者)や、指定確認検査機関による確認を受けることを指します。
例えば、建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)や容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)、北側斜線規制(北側の道路側か北側の隣地側に面した建物部分の高さ制限)が守られているかの確認です。
その他、シックハウス(建材や調度品による化学物質やカビ・ダニによる室内空気汚染など)対策は行われているか、居室の採光が十分に確保されているかなどもチェックされます。加えて2020年から、床面積の合計が300㎡以上の被住宅建築物(仮説建築物や高い解放性を有する自動車車庫等は除く)について、省エネ基準に適合しているかも検査されるようになりました。
建築確認申請が必要な理由は、建築前の建物の設計図や計画を見て、建築基準法や都市計画法などの法律に違反する建築物の建設を防ぐことです。具体的には、建築基準法第6条1項に確認申請の必要性が明記されているため、建築前に確認申請をして確認申請済証を受ける必要があります。
“建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは模様替えをしようとする場合又は第四道に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。
一 別表第1(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積が200㎡を超えるもの
二 木造の建築物で3以上の階数を有し、又は延べ面積500㎡、高さ13m若しくは軒の高さが9mを超えるもの
三 木造以外の建築物で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200㎡を超えるもの
四 前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画内等における建築物“
(『建築基準法第6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)』より一部抜粋)
確認申請は建物が合法かを見るものであり、建物の建築を許可するものではありませんので、建築許可に関しては別の申請を行う必要があります。なお、確認は建物の建築前だけでなく建築後も必要です。また、建築物の用途変更や計画変更、大規模な設備の設置についても確認申請をしなければならない点にご注意ください。
建築確認申請を行うのは建物を建てようとする「建築主」です。よって、確認申請手数料は建築主が役所等に支払います。その他、中間検査や工事完了検査などの検査を受ける場合も、手数料の支払いが必要です。手数料の支払いに対する領収書は建築主宛てとなります。ただし、建築確認申請は非常に煩雑で専門的な知識が求められるため、設計事務所や建築会社などに代行してもらうのが一般的です。
建築主が支払う手数料は床面積によって決まっています。確認申請が建築費や設計費の中に含まれるかどうかは業者によって異なるため、トラブルを未然に防ぐためにも事前にご確認ください。
建築確認申請で必要な書類は、申請する地域や建物、計画等によって異なります。例えば、すべての建築物で確認申請時に必要な書類は次のとおりです。
・書類関係(2020年8月18日時点)
書類名 |
部数 |
確認申請書(第二号様式) |
2 |
建築計画概要書(第三号様式) |
1 |
委任状※写しの添付も可 |
1 |
建築工事届(第四十号様式) |
1 |
受付表 |
1 |
構造・省エネ適合判定が必要な場合は適合判定通知書の写し(併せて申請書類・図書の提示が必要) |
1 |
建築場所に応じ、消防同意用の表紙及び同意用の副本 |
- |
(参考:[確認申請]必要書類チェックシート|J建築検査センター)
申請図面名 |
部数 |
付近見取図※目標となる地物が記載されているもの |
2 |
配置図 |
2 |
各階平面図 |
2 |
床面積求積図 |
2 |
敷地面積求積図 |
2 |
2面以上の立面図 |
2 |
2面以上の断面図※必要事項を他図面に明示した場合は省略可 |
2 |
仕上表(使用建築材料表)※他図面への特記に「使用建築材料表」としての特記があれば省略可 |
2 |
シックハウス検討書※24時間換気計画、有効換気量が確認できるカタログ |
2 |
耐火構造等の構造詳細図(耐火リスト等) |
2 |
法チェック図※採光・換気・排煙、防火区画等 |
2 |
(参考:[確認申請]必要書類チェックシート|J建築検査センター)
建物確認申請は、すべての建築物で必要なわけではなく、状況によっては不要なケースもあります。
例えば、リノベーション物件で確認申請が不要となるのは、次のような状況です。
またその他、都市計画区域外に家を建設する場合、木造2階建てで延面積150㎡の一戸建て住居であっても建築確認申請が不要です。だたし、建築基準法の適用外になるわけではないため、確認申請が不要でも工事届けの届出はする必要があります。
建築確認申請期間は通常7日以内、完了検査も合わせると約14日以内。申請後は審査方法が定められるため、各審査機関での独自の判断は許されなくなります。一般的に、確認審査にかかる期間は最長35日です。構造計算適合性判定(基準法改定で新設された、構造計画・モデル化・構造計算の妥当性についての第三者確認)が必要な場合は、さらに最長35日かかるため、合計で最長70日かかる試算です。
だたし、事務手続きや指摘事項のやりとりによっては、さらに期間が長くなる可能性もあります。確認受理後の設計図の差し替えや変更は認められないため、変更する場合は確認申請の再提出が必要です。
建築確認申請では申請時に手数料が建築確認と完了検査それぞれでかかります。費用は家の床面積の広さによって決められていますが、金額そのものは自治体によって異なる点が特徴的です。なお、一般的に民間の検査機関は自治体よりも割高といわれています。また、手数料は建築確認を申請した際に定められる期日内に現金で支払わなければならない点にご注意ください。
例えば、東京都でかかる手数料は次のようになっています(2018年10月15日時点)。
建築物の 床面積の合計 |
確認申請手数料 |
中間検査手数料 |
完了検査手数料 |
|
中間検査対象外の場合 |
中間検査対象の場合 |
|||
30㎡以内 |
5,600円 |
9,900円 |
11,000円 |
9,900円 |
30㎡超〜100㎡以内 |
9,400円 |
11,000円
|
12,000円
|
11,000円
|
100㎡超〜200㎡以内 |
14,000円 |
15,000円
|
16,000円
|
15,000円
|
200㎡超〜500㎡以内 |
19,000円
|
21,000円
|
23,000円
|
21,000円
|
500㎡超〜1,000㎡以内 |
35,000円
|
34,000円
|
37,000円
|
36,000円
|
1,000㎡超〜2,000㎡以内 |
49,000円
|
46,000円
|
52,000円
|
49,000円
|
2,000㎡超〜1万㎡以内 |
146,000円
|
104,000円
|
124,000円
|
115,000円
|
1万㎡超〜5万㎡以内 |
249,000円
|
167,000円
|
199,000円
|
186,000円
|
5万㎡超 |
474,000円 |
341,000円 |
396,000円 |
383,000円 |
建築確認と中間検査、完了検査のそれぞれでかかる手数料は異なるため、自治体での費用を事前にご確認ください。
建築確認は、大きく分けて「着工前」と「着工後」の2回行われます。1回目は書類での確認審査です。住居を建設する前に施工会社等を通じて建設確認申請をし、問題なければ「建築確認済証」が自治体から発行されます。
そして、2回目は完了審査です。工事終了後に担当者が申請通りに建てられているか現地まで来て審査をし、問題がなければ「検査済証」が発行されます。なお、各自治体が定めた建築物によっては中間検査が実施される点が特徴的です。
建築確認申請で気をつけたいポイントを解説します。
建築確認申請を怠ると法律違反となり、建築基準法第99条により1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となる可能性があります。ただし、多くの場合まずは行政の建築指導課から指導が入り、必要な措置を命ぜられます。
指導内容は、確認申請をすれば済むレベルのものから、工事の中止や建物の取り壊しを余儀なくされるレベルのものまでさまざまです。指導に従わない場合は、先述したような罰金や懲役刑を課せられることがありますので、申請を怠らないようご注意ください。
建築確認申請後は、間取りや設備の変更は基本的にできません。間取りや設備を大幅に変更すると、建築の判断基準となる住宅の性能が確認前後で異なることになり、申請内容が虚偽になってしまうためです。よって、例えば間取りを変えると耐震性能を改めて計算する必要がありますし、窓を増やせば採光も再計算が必要となります。
また、建築確認申請後に変更が必要になった場合は、「計画変更の申請」を行い、建築基準法に適合しているかどうかの確認も再び必要です。ただし、確認終了まで工事ができなくなるため、工期が長くなって余分な人件費がかかる可能性があります。
法律上、現在ある建物を解体しても新しく建物を建設できない物件を「再建築不可物件」と言います。建築基準法第42条で規定している接道義務を満たしていない再建築物件は、確認申請ができません。よって、建て替えができず、リノベーションをする場合も確認申請が不要な範囲の工事にするなどの制限が生じます。ただし、確認申請の必要性自体に関しては、各自治体で判断基準が異なる可能性がある点にご注意ください。
今回は建築確認申請とは何かについて、必要書類や申請までの流れを解説しました。要点は次のとおりです。
建築確認申請は多くの場合、業者任せにしてしまいがちな事柄ですが、建築主としてご自身も手続きの詳細を理解しておくことは予期せぬトラブルを回避するうえで重要です。本記事でご紹介した内容を、ぜひご活用ください。
株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー
宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。