投資において、確定申告は原則必要ですが、場合によっては不要となるケースもあります。
投資型クラウドファンディングの1つである不動産クラウドファンディングも、確定申告が必要な場合とそうでない場合があります。
実際にどのような場合に確定申告をする必要があるのか、しっかりと理解できている方は少ないのではないでしょうか。
今回は不動産クラウドファンディングで確定申告が必要となるケースや、確定申告に必要な書類と手順について詳しく解説します。
「実は確定申告についてよくわかっていない」という方も、この記事を最後まで読めば、理解を深めることができます。
不動産クラウドファンディングとは、クラウドファンディング事業者が、投資家から集めた資金で不動産を取得・運用して、その賃貸収入や売買益を投資家へ分配する投資手法です。
日本では2017年の法改正により、インターネット上で投資を行うことが可能となり広く普及しました。
現物不動産投資のように投資家自身が不動産を取得・管理する必要がなく、運用に手間がかからないというメリットがあります。
また、1万円という少額から投資が可能で、不動産の管理コストもかからないため、投資の資金が少ない方や、投資初心者でも始めやすいのが特徴です。
不動産クラウドファンディングの利益にはキャピタルゲインとインカムゲインの2種類あり、キャピタルゲインは不動産の売買益のことを指します。
購入時よりも高値で不動産を売却できた時に得られる利益で、それなりにリスクもありますが、短期間でハイリターンを期待できます。
一方、インカムゲインとは、不動産の賃貸収入のことです。
キャピタルゲインに比べると利益は少額になることが多いですが、中・長期的な運用により安定した利益が期待できます。
キャピタルゲインとインカムゲインのどちらを重視しているファンドかによって、リスクや期待できる利益が異なります。
事前に重視している利益の種類と、事業者や不動産の情報をしっかりと確認しておくことが重要となります。
不動産クラウドファンディングの分配金とは、事業者が投資家から集めた資金で不動産を運用し、得られた利益から投資家に払われるお金のことです。
利益は、先述したキャピタルゲインとインカムゲインです。
不動産クラウドファンディングの分配金は、税法上の「雑所得」に分類され、総合課税の対象となります。
ただし必ずしも分配金がもらえるというわけではなく、投資ですのでもちろん損失となるケースもあります。
たとえばキャピタルゲインの場合だと、購入時より不動産の価値が下がってしまい、売却益が得られないというケースです。
インカムゲインの場合は、入居者が減少してしまい、事前の計画よりも賃貸収入が得られないというリスクがあります。
したがって不動産クラウドファンディングでは、運用がうまくいき、利益が発生した場合に税金がかかることになります。
確定申告とは、所得にかかる税金の金額を自分で計算して、税務署へ申告をすることです。
会社員の給与所得は、会社が年末調整を行い、納付手続きをするため原則確定申告不要となります。
一方、給与所得以外で得た収入については確定申告を行う必要があるため、不動産クラウドファンディングの分配金も、所得税と住民税に関して確定申告の対象となります。
ただし、全てのケースで確定申告が必要というわけではありません。
確定申告が必要となるのは、次の3つのケースです。
雑所得が20万円以上の場合は、確定申告が必要です。
雑所得とは、不動産クラウドファンディングで得た利益だけでなく、年金収入や副業による収入、印税、FXや他の投資で得た利益なども含まれます。
不動産クラウドファンディングの利益を含めた、すべての雑所得の合計が20万円以上であると確定申告が必要となるため、不動産クラウドファンディングの利益が20万円以下でも、その他に雑所得がある場合は注意が必要です。
年収が2,000万円以下の会社員は、会社が年末調整を行うため、確定申告は不要です。
しかし、年収が2,000万円を超える場合は、会社員であっても、所得税及び復興特別所得税の確定申告をする必要があります。
一般的には2,000万円というと高額な収入であるため、該当者は少ないですが、会社の役員や外資系企業の会社員であれば年収2,000万円を超えることもあるかと思います。
その場合は、必ず確定申告をしましょう。
収入が会社員の給与所得のみの場合は確定申告が不要ですが、個人事業主など、もともと確定申告が必要な人もいます。
もともと確定申告が必要な人とは、青色申告をする人や、ふるさと納税・医療控除を受ける人などです。
なお、青色申告の対象者は、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかの所得がある個人事業主を指します。
これらの条件に当てはまる人は、雑所得が20万円以下でも確定申告をする必要があります。
確定申告をする際に必要な書類は2種類あります。
支払調書とは、源泉徴収義務者が「誰に、どのような内容で、いくら支払ったか」を税務署に報告する書類です。
不動産クラウドファンディングにおける源泉徴収義務者は、事業者です。
支払調書は、事業者が投資家へいくら分配金を支払い、源泉徴収税を納めたかを証明するために発行され、1年分の分配金がまとめて記載されています。
この支払調書を、投資家は確定申告の際に税務署へ提出する必要があります。
源泉徴収票は、1年間に企業が支払った給与と会社員が収めた所得税の金額が記載された書類です。
所得証明として、個人事業主の場合は支払調書が利用されますが、給与所得者の場合は源泉徴収票が利用されるため、準備が必要です。
実際に確定申告をするときの流れは下記の通りです。
まずは自分の課税所得金額を確認し、確定申告をする必要があるかどうかを確認します。
次に、必要書類を準備します。
先述した支払調書や源泉徴収票の他に、マイナンバーカードなどの身分証明書が必要となります。
必要書類が揃ったら、確定申告書を作成します。
申告する所得が、給与所得・公的年金・雑所得・配当所得・一時所得給与所得のうちのどれかに該当する場合、「確定申告書A」を作成します。
上記に該当しない事業所得や不動産所得などを申告する場合は、「確定申告書B」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/pdf/r02/02.pdf)を作成する必要があります。
確定申告書が作成できたら、税務署へ提出して完了となります。
なお、確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2通りの申告方法があります。
それぞれの違いを説明します。
青色申告を行うためは、事前に税務署へ開業届を出さなければなりません。
また、記帳方式が複雑な複式簿記での帳簿付けを求められるため、白色申告に比べて手間がかかるというデメリットがあります。
しかしそのようなデメリットがある代わりに、最大で65万円を所得額から差し引ける「青色申告特別控除」やその他税制上で有利になるメリットが受けられます。
事前の開業届や複式簿記の帳簿付けが必要となる青色申告とは反対に、白色申告では開業届は不要で、帳簿付けも比較的簡単な簡易(単式)簿記です。
その代わり、青色申告のような税制上のメリットはなく、課税額が大きくなるという違いがあります。
不動産クラウドファンディングは、従来の現物不動産投資のように、相続税や贈与税の節税はできません。
しかし節税が可能な場合もあります。
それは、不動産クラウドファンディングで「損失が出た場合」です。
確定申告をすることで、不動産クラウドファンディングの損失と他の雑所得の利益を相殺できる損益通算が可能です。
したがって、節税目的で行う投資としては向いていませんが、結果的に節税できることはあるといえます。
今回は不動産クラウドファンディングの確定申告が必要なケースや、必要書類・手順などについて解説しました。
「不動産クラウドファンディングをやってみたいけど、確定申告についてよくわかっていなかった」という方も、この記事を参考に、しっかりと確定申告について認識したうえで不動産クラウドファンディングを始めてみましょう。
参考サイト:国税庁「青色申告制度」