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宅地造成とは?切り土(きりど)や盛り土(もりど)との関係は?宅地造成された土地を買う際に気をつけるポイントを解説!

2021/07/29
宅地造成とは?切り土(きりど)や盛り土(もりど)との関係は?宅地造成された土地を買う際に気をつけるポイントを解説!

宅地造成」という言葉を聞いたことはありますか。農地や森林などの本来は宅地ではない土地の形質を変更し、住宅地を造ることをいいます。都市計画法においては、「宅地造成」をする際には開発許可が必要であるとされています。

宅地造成について調べていくと、「切り土」や「盛り土」といったワードも出てきますが、これらはどのようなものを指すのでしょうか。
また、宅地造成された土地を購入する際には、どのようなポイントに気をつけるべきなのでしょうか。こちらの記事で解説していきますので、最後までお付き合いください。

宅地造成とは?

宅地造成は、「たくちぞうせい」と読みます。農地や森林などの本来は宅地ではない土地の形質を変更し、住宅地を造ることをいいます。農地や森林に限らず、沼沢地などを埋め立てて住宅地を造り出すことも宅地造成に含まれます。

なお、宅地を造るということは、土地の整備だけでは不十分です。生活インフラ(水道・ガス・電気など)や道路の整備も同時に行われることが一般的です。

宅地造成する際に注意したい切り土や盛り土は?

切り土とは?

切り土(きりど)は、高い地盤や斜面などを「切り」取ることによって低くし、平坦な地表を造り出すことです。下の図をご覧ください。

著者作成

このような斜面があったしましょう。この斜面の一部分を切り取ることによって出来た土地が以下のような図になります。(※薄い水色の部分です)

著者作成

この土地に家を建てると、下の図のようになります。

著者作成

盛り土とは?

盛り土(もりど)は、低い地盤や斜面に土を「盛って」高くし、平坦な地表を造り出すことです。下の図をご覧ください。

著者作成

盛り土によって出来た造成地に家を建てると、次の図のようになります。

著者作成

宅地造成等規制法とは?

宅地造成等規制法は、1961年(昭和36年)に制定された法律です。

日本は、平地の面積が全国土の約1/3となっており、多くの山地になっています。かつて、高度経済成長期に、都市部の人口が一気に増加し、宅地として利用できる平地が不足してしまいました。そのため、人々は平地以外の丘陵地や台地などへも多く住むようになったのです。

切り土や盛り土工事を行った家が多く建つようになりましたが、土砂災害や崖崩れのリスクが高いエリアにおいて、災害防止のための規制が目的として制定されました。

宅地造成工事規制区域とは?

国土交通省の資料で、「宅地造成工事規制区域」が公表されています。

宅地造成工事規制区域に指定された土地で造成等を行う場合は、着手前に知事等の許可が必要になります。下の表は、その一部を抜粋したものです。全国で16の都道府県で存在しています。

出典:国土交通省 宅地造成工事規制区域指定状況

東京都を例にとってみると、八王子市、町田市、日野市、多摩市など都の西部に多いことが分かります。

東京都は東が東京湾(海)、西が山になっていることから、土地が平坦でないエリアの指定が多くなっているのです。

具体的に、どこの住所が指定されている?

上記の表で、どこの都道府県の市区町村が規制区域に指定されているかはご理解いただけたと思います。

さらに細かい住所まで調べる場合は、どのようにしたら良いのでしょうか。方法は、2つあります。

1つは、市区町村の窓口に行って教えてもらうことです。

もう1つは、インターネットで調べる方法があります。基本的には、「市区町村名+宅地造成工事規制区域」で検索することが出来ます。先ほどの東京都八王子市の例で見てみると、以下のような一覧を見つけることが可能です。

出典:東京都八王子市

気になる市区町村がある場合には、ぜひご自身で検索してみてください。

宅地造成等規制法の内容とは?

宅地造成等規制法において、以下のような規制が敷かれています。

①切り土を行う場合

宅地造成工事規制区域内において、切り土で、高さが2メートルを超える崖(30度以上の斜面)を生じる工事については、工事現場所在地の都道府県知事等の許可が必要となります。

②盛り土を行う場合

宅地造成工事規制区域内において、盛り土で、高さが1メートルを超える崖を生じる工事については、工事現場所在地の都道府県知事等の許可が必要となります。

③切り土、盛り土の両方を行う場合

宅地造成工事規制区域内において、切り土と盛り土を同時に行う工事については、盛り土は1メートルに満たない場合でも、切り土と合わせて高さが2メートルを超える崖を生じる工事については、都道府県知事等の許可が必要となります。

④宅地造成面積が500平方メートルを超える場合

切り土、盛り土を行う、行わないに関わらず、宅地造成工事の面積が500平方メートルを超える場合には、都道府県知事等の許可が必要となります。

なお、決済者となっている「都道府県知事等」は、知事自身や知事から権限を委譲された市区町村の長が含まれています。

宅地造成の土地を購入する際に気をつけるべきポイントは?

土地を購入する前に地質調査を

購入を予定している土地が、過去にどのような土地利用だったのかを調べましょう。

田んぼだったり、沼だったりした場合には地盤が弱い可能性が高いです。また、盛り土によって宅地造成された土地も地盤が弱い懸念があります。

しかし、適切な地盤対策が施されている土地については、きちんとした強度が期待できるといえます。購入した後に、地盤を補強する工事を自らしなければいけなくなると、コストが大きくかかります。後になって、後悔しないように事前に入念な調査を怠らないようにすることが大切です。

自ら行う場合は、トータルでかかる金額をシミュレーション

土地造成される前の土地は、価格が非常に安いケースが多いです。その分、自ら土地造成を行う場合には、そのコストがかかってきます。造成コストは、その土地の状況によって大きく異なってくるのが実情です。

工事に際しては、複数の業者に見積もり依頼するのが基本となります。しかし、安い業者=良い業者とは限りません。工事に使う重機や人件費を削っているだけの可能性もあるからです。予算とサービスの両面から適切な業者を選定するようにしましょう。

いずれにしても、土地+造成コストの合計がどのくらいかかるのかシミュレーションすることが大切です。造成をするための時間や、許可を得るための時間や手間も念頭にいれておきましょう。

宅地造成後の物件を購入する際には「検査済証」をチェック

既に、宅地造成が済んでいる土地を購入して、家を建てるケースでは造成にかかるコストは別途かかりません。一般的に、工事にかかったコストは土地代に含まれています。

この場合には、「検査済証」があるかどうかのチェックをしましょう。

中古物件を購入する際も同様です。法律が施行される以前の物件では、基準をクリアしていないケースもあります。検査済証がない物件を購入し、行政から改善の命令を受けてしまうと、将来的に大きくコストがかかる懸念がありますので、検査済証がない物件については、購入を避けておいた方が無難です。

盛り土の方がややリスクあり

盛り土は、切り土と比べると若干リスクがあるといえます。なぜでしょうか。

著者作成

図でご覧いただくとわかるように、切り土の方は元々あった地盤を削っただけなので、均質になっています。

一方で盛り土の方は、元々あった地盤の上に新たに土を盛っています。つまり、2層構造になっており豪雨などによる地滑りや、地震による建物の損壊のリスクがあるというわけです。

まとめ

宅地造成のする際に気を付けたい「切り土」や「盛り土」について、また宅地造成の土地を購入する際に留意すべき点を解説してきました。ご理解いただけたでしょうか。

今後、自ら宅地造成をしようと考えている方や、宅地造成された物件の購入を検討している方は、こちらの記事を参考にしていただけますと幸いです。

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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