不動産投資とは

瑕疵担保免責のある中古物件への不動産投資とは?メリット・デメリットや見極めのポイントまとめ

2021/06/11
瑕疵担保免責のある中古物件への不動産投資とは?メリット・デメリットや見極めのポイントまとめ

「売主瑕疵担保免責」「契約不適合責任免責」という言葉を目にしたことはありませんか。物件の安さや利回りだけを重視した結果、予想外のリスクや損害を受けるケースがあります。

そこで今回は、瑕疵担保免責のある中古物件への不動産投資のメリット・デメリットを、収益用物件の見極めポイントも交えながら解説します。

中古物件への不動産投資は瑕疵担保免責に注意すべき理由

「中古物件への不動産投資は瑕疵担保免責に注意すべき」とよくいわれます。主な2つの理由をみていきましょう。

不具合の可能性が高いから

中古物件への不動産投資は不具合のある可能性が高いため、注意が必要です中古物件の取引は瑕疵担保免責で取引するケースが多く、なおさら深刻な不具合がないかのチェックがポイントです。

新築物件でも不具合はありますが、業者によっては修繕費を負担してくれます。しかし、中古物件の場合はオーナー責任となるケースが多く、修繕に膨大な費用がかかると家賃収益による利益が修繕費で大部分を占めたり、マイナスになったりする可能性があります。

したがって、中古物件への投資をご検討の際にも、完璧な状態を前提に物件をみるのではなく、何かしらの不具合があるかもしれない点に留意し、事前に入念に物件の状態を確認しましょう。

事前に管理会社に物件の今までの修繕履歴を見せてもらうなど、できる限り物件の状態について把握しておきましょう。

購入者の自己責任で修繕の必要があるから

中古物件に不具合があったら、多くの場合は物件の買主が自己責任で物件の修繕をしなければなりません。特に築年数の古い1981年5月以前に建築確認をしているRC造の旧耐震物件は、十分な耐震性がない場合が多いと考えられます。阪神淡路大震災で被害のあった多くの建物が旧耐震基準により建てられた住宅であり、新基準の建物の被害は軽微だったともいわれています。

また、「過去に雨漏りや水漏れがあった」「建物内外の修繕履歴」など、多面的な角度からの確認も重要です。そのほか「給水管や排水管などの配管関係」「エレベーター(1棟丸ごと投資する場合)」などは修繕費が高くつく傾向にあります。

瑕疵担保免責物件とは

瑕疵担保免責とは、不動産の瑕疵(品質・性能・状態などの欠点)について、売主が責任を負わないことです。確認しにくい部分に発生していた不具合や、契約時に問題になっていなかった部分について、多くの場合は売主が契約不適合責任として修繕費用を負担する責任を負います。

新築物件の契約不適合責任の特徴

新築物件は不動産業者が売買しているケースが多く、契約不適合責任も不動産業者が負うことが多い点が特徴的です。したがって、投資家が新築物件の瑕疵担保責任を負う状況になるのは稀です。メーカーによっては、契約不適合責任を負いつつ、数十年単位でアフターケアをしてくれるところもあります。

中古物件の契約不適合責任の特徴

中古物件は、売主と買主が個人の場合、一般的に売主が契約不適合責任を負います。ただし、責任の所在は売主と買主の間の取り決めによって変わります。また、個人間の売買に宅建業者でない不動産業者が仲介する場合、仲介業者はあくまでも仲介者であり、契約不適合責任を負うわけではありません。

不動産業者(宅建業者)が仲介する際には、瑕疵担保だけでなく様々な面で法的な助言やサポートなどが期待できます。不動産業者(宅建業者)が仲介しない物件の場合、鑑定が甘くなるケースもあるため、投資者自身やホームインスペクション等の専門家を交えた物件の状態の確認が重要です。

法律における瑕疵担保免責の基本的な内容

2020年4月1日に施行された民法改正によって、「瑕疵担保責任」という概念が廃止され、「契約不適合責任に改められました。改正により買主が行使できる権利が増え権利を行使できる期間も延長されています

また旧民法570条では、「隠れた瑕疵」と表現されていた言葉が、「種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」へと変わりました。つまり、買主が物件の引渡しを受けた後、物件に瑕疵があった場合にとれる責任追及手段の選択肢が増えたということです。「契約不適合責任は、債務不履行責任としてとらえるべきだ」に沿う形で、特定物であるかどうかに問わず買主の「追加請求権」や「代金減額請求権」が認められるよう内容が変化した点が特徴的です。

売主が中古物件の契約不適合責任を負う期間

売主が契約不適合責任を負う期間は、新築の場合で約10年が一般的とされています。また、中古物件の場合、売主が不動産業者(宅建業者)だと約2年間、個人からの購入だと約2〜3ヵ月です。

ただし、改正民法566条本文によると、買主が種類や品質に関する契約不適合を知ったときから1年以内に通知をすればよく、数量や移転した権利に関する理由については期間制限が設けられていません。また、売主に悪意があり、またその瑕疵が重過失であった場合は1年の期間制限は適用されないとされています。

瑕疵担保免責のある中古物件への不動産投資のメリット・デメリット

瑕疵担保免責のある中古物件への不動産投資には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。それぞれ詳しくみていきましょう。

メリット

瑕疵担保免責のある中古物件は、買主と売主の両者にとってメリットがあります。

買主にとってのメリットは物件価格の安さです。売主が契約不適合責任を負わない分、物件価格が安くなります。不動産は高額な買い物なため、少しでも購入費用を低く抑えたい人は多いでしょう。また、安く物件を購入できれば利回りも高くなり高い収益性をもっての賃貸経営が可能です。瑕疵担保免責のある中古物件は、現在の状況のままの取引となるため、瑕疵のリスクはありますが、物件を入手したあとは物件の手入れを十分にすれば長く使用できます。

不動産投資の出口戦略として、物件の売主側になった場合のメリットは出費の抑制です。個人の売主の場合、瑕疵担保免責のある物件にすると補修費用や賠償請求などの出費を抑えることが可能です。売主が瑕疵担保責任を負っている状態で物件売却後に瑕疵が見つかると、売主は膨大な費用を支払う必要があります。しかし瑕疵担保免責で売り出すと、重大な過失に気づいていない場合は売却後の金銭的な負担を避けられます。

デメリット

一方、瑕疵担保免責のある中古物件は、買主と売主の両者にとってデメリットもあります。

買主にとってのデメリットは、築年数の経過に伴うメンテナンスの必要性です。入居者を安定的に確保するには、リフォームがいる場合もありますし、後々に予期せぬ修繕やリスクが発生することも考えられるでしょう。

物件の売主側になった場合のデメリットは、契約不適合責任をめぐって買主とトラブルが発生する可能性です。先述したとおり民法が改正され、売主に悪意があり瑕疵が売主の重過失だと認められたら、買主が権利を請求できる期間の制限がなくなりました。契約時に瑕疵担保免責の特約をつけても、売主は契約不適合責任を負うケースもある点に注意が必要です。

中古物件に関する不動産投資や瑕疵担保免責物件の見極めポイント

最後に、中古物件に関する不動産投資や瑕疵担保免責物件を見極める際のポイントを解説します。

不動産の瑕疵の理解

瑕疵担保免責を見極めるには、物件で瑕疵とみなされる種類を知ることがポイントです。

  • 物理的瑕疵:雨漏り、シロアリ被害、腐食、地盤の傾き、土壌汚染など
  • 法的瑕疵:土地の境界線が曖昧、周辺の土地計画、再建築不可物件など
  • 環境的瑕疵:隣接する嫌悪施設(ごみ処理場や火葬場、暴力団事務所など)
  • 心理的瑕疵:自然死や自殺、殺人事件などの事件や事故など

専門家との状況調査

瑕疵担保免責物件の最大のリスクは建物に瑕疵がある可能性です。雨漏りや耐震性といった修繕だけでなく、建物の傾きの確認もポイントです。正確な調査をしたい場合は、ホームインスペクションを用いるとよいでしょう。物件の設計や施工に詳しい専門家が住居のコンディションを調査し、欠陥の有無や補修すべき箇所、時期などを客観的に診断してくれます。

専門家と建物の状況調査を行い、投資用の物件として購入して良いのか、購入する場合は修繕費用のコストはどれくらいかかるか明確にしてみましょう。

修繕履歴の確認

中古物件を購入前に、建物の調査だけでなく修繕履歴も一緒に把握しましょう。「過去にどのような問題が生じたか」「雨漏りや漏水はあったか」「どのような修繕をしたか」など、売主からご確認ください。売主のなかには、物件の管理をすべて不動産管理会社に委託しているケースもありますので、その場合は管理会社から修繕履歴を聞いてみましょう。

リスク回避のための保険の活用

予期せぬ不具合へのリスク回避の方法として、保険の活用があります。火災保険や地震保険だけでなく、施設賠償保険や家賃の損失分を補填してもらえる保険、偶然な事故による破損や汚損を補償してもらえる保険など、様々な種類の保険があります。保険の費用は全て経費に計上可能です。

修繕による費用対効果を考える

投資判断は利益の最大化がポイントです。よって、どのような修繕をすべきかについて迷ったら、費用対効果を基準にして判断するとよいでしょう。費用対効果を計算したうえで、数字に基づいた判断ができると、自己満足の修繕を回避し、最適なメンテナンスができます。より専門的な情報を知りたい場合や、客観的な意見も参考にしたい場合は、業者に適宜相談するとよいでしょう。

まとめ

今回は、瑕疵担保免責のある中古物件への不動産投資について、メリット・デメリットを交えて解説しました。要点は次の通りです。

  • 瑕疵担保免責とは、不動産の瑕疵(品質・性能・状態などの欠点)について、売主が責任を負わないこと
  • 2020年4月の民法改正により「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変更。買主が売主に求める権利の種類が増え、状況によっては買主が売主へ行使できる権利の期間制限がなくなった
  • 瑕疵担保免責のある中古物件を購入する際のメリットは価格の安さ。デメリットは建物に瑕疵があるリスク

不動産投資における修繕は、費用対効果を価値基準とすることが重要です。保険をうまく利用して、リスクヘッジできると物件購入の初期費用を抑えながら高い利回りで不動産経営がスタートできます。本記事でご紹介した内容を、ご自身の不動産投資にぜひお役立てください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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