不動産投資を行っている、またはこれから行おうと思っている人が知っておくべき事柄に、「プライベートカンパニー」というものがあります。
プライベートカンパニーとは、一体どのようなもので、プライベートカンパニーを設立することでどのようなメリットを得ることができるのでしょうか。
ここではプライベートカンパニーの設立方法や、プライベートカンパニーを設立する場合の注意点、メリットとデメリットなどについて解説していきます。
プライベートカンパニーとは、個人が設立した会社のことを言います。
一般的な会社のように事業を行うことを目的とするわけではなく、不動産や金融資産などの個人の資産を所有させて管理したり、小規模事業を行うことを目的としたりして設立されることが多いようです。
プライベートカンパニーは個人で設立することがほとんどですが、法人が設立しても問題はありません。
サラリーマンなどの本業を持ちながらでも副業(ここでは不動産投資)を行うために設立することができる点が、プライベートカンパニーの大きな特徴といえます。
また、従業員を雇用することも可能です。
不動産をプライベートカンパニーで運営する場合と、個人で運営する場合には、どのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、その違いについて解説していきます。
プライベートカンパニーと個人では、確定申告のしかたに違いがあります。
プライベートカンパニーでは、事業年度末を自分で決めることができ、その事業年度終了後2か月以内に法人税と消費税の申告納税を行います。
プライベートカンパニーの場合には、申告期限が短いため毎月月次会計を行うなどして決算に向けて準備をしておくことが重要となります。
また、法人決算で申告用の書類を作成することは素人には難しいことが多いため、税理士に作業を依頼したほうが良いケースもあります。
一方個人の場合には、1月から12月までの期間の経理と会計の内容を、税務署が定めた期間である2月の中旬から3月の中旬までに確定申告を行います。
個人で行う確定申告は、法人に比べると簡単な内容であるため自分で書類を作成することも可能です。
不動産投資で赤字(損失)が出た場合、その赤字を次年度以降に繰り越すことができる制度があり、それを赤字繰り越しと言います。
もし翌年に黒字が出た場合でも、赤字を繰り越して申告できるため支払う税金を低く抑えることが可能になります。
赤字繰り越しができる期間は、個人の場合3年、プライベートカンパニーの場合は9年となっています。
不動産投資を行う場合には、収益物件の購入や大規模修繕などで大きな支出が出ることは避けられず、そのような支払いがあった年には赤字になることが予想されます。
そのためプライベートカンパニーを設立していれば、事業計画に応じて赤字繰り越しを9年間自由に設定することができます。
経費として計上できるものの中に、生命保険があります。これは個人の場合は最大19万円まで控除の対象となりますが、法人の場合には金額に制限がありません。
法人保険は損金算入に制限がないことから、さまざまな商品がありますが、節税に特化した長期平準定期保険という商品もあります。
満期は数十年とかなり長く設定されていますが、解約返金率が高いため支払った保険金の満額に近い金額が手元に戻ってきます。
非常に大きな割合の金額が手元に戻ってきますが、半額は毎年損益として処理できるため節税方法としてよく利用されます。
不動産投資は毎月の収入が安定していることが多いため、長期平準定期保険などの積み立て式の保険に向いている業種であるといえます。
ここでは、不動産投資を行うにあたってプライベートカンパニーを設立するメリットとデメリットについて解説していきます。
不動産投資を行うにあたって、プライベートカンパニーを設立するメリットには、以下のようなものがあります。
プライベートカンパニーを設立する最大のメリットは、節税効果が高いということです。
個人で不動産投資を行っている場合、その収入は本業の所得と合算されその金額に住民税や所得税が課せられます。
所得税と住民税を合わせた課税額は累進課税となっており、収入が増えれば増えるほど税率が上がってしまい、納税額は最高で総収入の55%にもなってしまします。
しかし、プライベートカンパニーを設立している場合には、どれだけ不動産投資で利益を出しても、課せられる法人税の税率は最大で23.2%となっています。
そのため、本業からの収入と不動産投資による収入をプライベートカンパニーの設立により分けることで、大幅に節税を行うことができるようになります。
不動産投資が、相続対策として非常に有効であることはご存知の方も多いと思います。
しかし、収益物件を所有したのが個人なのかプライベートカンパニーなのかという違いによって、相続税の金額には大きな違いが生じるようになります。
個人で所有していた収益物件を相続する場合、収益物件の評価額から定められた基礎控除額を差し引いた金額に対して相続税が課されます。
一方、プライベートカンパニーが収益物件を所有していた場合、そのプライベートカンパニーの株式が相続の対象となります。
そのため、非上場株式に対する相続税上の評価方法が適用されるため、個人で収益物件を所有していた場合よりも評価額を低くすることができる可能性が出てきます、このような方法で、相続税の節税を行うことができます。
本業とは別のいわゆる副業として不動産投資を始めた場合、個人のまま資産を積み上げていく人が多いのが現状です。
しかし、このように個人で不動産投資を行っていくと必ず限界が来てしまいます。
その理由は、プライベートカンパニーを立ち上げていないからです。
プライベートカンパニーを立ち上げることで、個人では超えることができないハードルを越えることができるようになります。
その主なハードルとは税金や、第三者からの信用といったものです。特に第三者からの信用は、プライベートカンパニーを立ち上げることで非常に大きくなります。
将来は専業大家として生計を立てていきたいと考えている方は、プライベートカンパニーを設立することをお勧めします。
プライベートカンパニーを設立することで、経費として計上することができる支出が大幅に増えます。
例えば、個人で不動産投資を行っている場合、自動車や携帯電話に必要な費用は個人での支払いのうちの半分までしか経費として計上することはできません。
しかし、プライベートカンパニーを設立していれば、法人契約を結ぶことができ、結果として費用の100%を経費として計上できます。
このように、経費として計上できる支出を増やすことで、節税を行うことができます。
ここでは不動産投資を行うにあたって、プライベートカンパニーを設立するデメリットには、以下のようなものがあります。
プライベートカンパニーを設立する場合には、設立費用が必要になってきます。
この設立費用の中で最も大きなウェイトを占めるのが、登記費用です。登記費用は、資本金の金額の1000分の7となります。
それ以外にも定款制作費用などが発生し、それらを司法書士に依頼することが多いため、司法書士への報酬も発生します。
プライベートカンパニーの設立には、最低でも30万円が必要となると考えておきましょう。
プライベートカンパニーによる不動産投資を行う場合には、自分が受け取る収入は、役員報酬という形にする必要があります。
しかし、この役員報酬を上げすぎてしまうと、納めるべき税金が増えてしまうため、注意が必要です。
プライベートカンパニーで法人税を支払い、個人の役員報酬から所得税を支払うことになるため、役員報酬の金額に気を付けていないと、個人で不動産投資を行う場合よりも高額の税金を納めなければならない状況になることも考えられます。
プライベートカンパニーを設立するには、どのような手続きが必要なのでしょうか。
ここでは、プライベートカンパニーの設立方法について解説していきます。
定款とは、会社の基本規則を定めたものです。
定款には、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項を記載するのが一般的ですが、プライベートカンパニーを設立する場合には、株主などが限られているため、絶対的記載事項のみの記載でも問題はありません。
次に、資本金の振り込みを行います。プライベートカンパニーの口座はプライベートカンパニー設立後にしか開設できず、従って通帳もないため自分名義の口座に自分名義で振り込むことになります。
資本金の払い込み証明書の作成を行い、通帳のコピーと一緒に保管しておきましょう。
自分の口座に振り込んだ資本金は、プライベートカンパニー設立後にプライベートカンパニーの通帳に移しておきましょう。
プライベートカンパニーの登記に必要な書類を作成します。
必要書類には、発起人決議書、発起人会議議事録、取締役選定書、取締役就任承諾書、監査役就任承諾書、印鑑届けがありますが、会社の形態によって必要のない書類もあるため、自身が設立するプライベートカンパニーに必要な書類を作成するようにしましょう。
書類作成が終わったら、登記申請を行います。法務局に登記申請を行い、その日がプライベートカンパニーの摂理指となります。
申請は、資本金を払い込んだ日から2週間以内に行う必要があります。
また、登記には印紙代15万円が必要なので、この費用も準備しておく必要があります。
書類を法務局に自分で提出する場合には、書類に不備がないか必ず確認してもらうことも大切です。
印紙はこの確認作業が終わってから貼り付けを行うようにしましょう。
プライベートカンパニー設立後の手続きには、次のようなものがあります。
登記が完了すると、法務局から印鑑カードを発行してもらえます。
プライベートカンパニーの印鑑証明を発行してもらうときには、必ずこの印鑑カードが必要になるので紛失しないように気を付けておく必要があります。
税務署へプライベートカンパニーを設立したことの申告と届出を行います。
プライベートカンパニーを設立すると、自分のお金とプライベートカンパニーのお金を分けて管理する必要が出てきます。
そのため、設立後すぐにプライベートカンパニーの口座を開設しましょう。
プライベートカンパニーの口座開設には、登記簿謄本が必要です。
このタイミングで、資本金を自分の口座からプライベートカンパニーの口座に移します。
プライベートカンパニーを開設する最良のタイミングは、2つあります。ここではその2つのタイミングについて解説していきます。
本業だけで所得が330万円を超えている場合には、不動産投資を始めるときにプライベートカンパニーを設立したほうが良いでしょう。
所得が330万円の場合、年収は約700万円となり給与所得が700万円を超えている場合や、不動産所得を合わせると700万円を超える場合には、初めからプライベートカンパニーを設立したほうがさまざまなメリットを享受することができます。
給与所得と不動産投資からの所得の合計が、330万円を超えた時点でプライベートカンパニーを設立すると、さまざまな優遇を受けることができます。
所得税1つをとっても、節税のメリットが出るのは所得が330万円を超えた時点からです。
そのため、プライベートカンパニーの設立は所得が330万円を超えたタイミングで行うとよいでしょう。
ここまで、不動産投資とプライベートカンパニーの関係について解説してきました。
不動産投資を行うにあたってプライベートカンパニーを設立することで、大きなメリットが得られることがお分かりいただけたと思います。
しかし、プライベートカンパニーには費用が掛かるなどのデメリットもあるため、メリットとデメリットのバランスをよく考えてから、プライベートカンパニーを設立するかどうかを決める必要があります。
また、プライベートカンパニー開設時にはさまざまな手続きや書類が必要となるため、時にはその道の専門家に依頼することも視野に入れておきましょう。