不動産投資とは

知っておきたい!アパート建築費を見積もるときの盲点

2021/01/22
知っておきたい!アパート建築費を見積もるときの盲点

土地活用としてアパート経営を検討する際に、ネックになりがちなのがアパートの建築費。実は、アパート建築費の見積もりは依頼する会社によって差があることをご存知ですか?

アパート経営は、建築費用を十分に把握したうえでの収支計画が重要です。

そこで今回は、アパート建築費の見積もりで見落としがちなポイントを解説します。アパート経営をご検討の方や建築費用を安く抑える方法を知りたい方は、本記事の内容をぜひお役立てください。

アパート建築による不動産投資とは

アパート建築による不動産投資とは、1棟のアパートを所有して各部屋の入居者と賃貸借契約を結んで家賃収入を得ることです。

アパート経営は、土地活用のなかでも王道の活用方法です。相続した土地の有効活用や、税金ばかりかかる土地からの収益をご検討される際に、特に有用とされます。ご自身が所有している土地にアパートを建設し、大家として入居者へ賃貸して収入を得る方法です。建設費として初期費用の支払いが必要ですが、ご自身が所有する土地上にアパートを建設する際には、比較的余裕のある資金計画を元に運営の検討ができます。

アパート経営でかかる建築費の内訳

アパート経営の基本的な概念が理解できたところで、次は建築費の種類を解説します。この章では、代表的な4つの費用をみていきましょう。

設計料

設計料とは、アパートの建物を設計する際にかかる費用です。設計料は工事の発注方法によって大きく違います。工事発注方式は「設計施工一貫方式」と「設計施工分離方式」の2種類です。

  • 設計施工一貫方式

設計施工一貫方式とは、設計を建築会社の設計部門に依頼し、設計と施工を同じ会社に依頼する発注方式です。

大手ハウスメーカーにアパート建築を依頼する際には、自然と設計施工一貫方式となり、工事費に対して1%〜3%程度の設計料かかります。工事費の総額が高ければ1%程度、工事費の総額が低ければ3%程度の変動が一般的です。設計料も設計施工一貫方式の方が、設計施工分離方式より安く抑えられます。

  • 設計施工分離方式

設計施工分離方式とは、設計者と施工者の会社を別会社に依頼する発注方式です。

設計施工分離方式の場合は、設計事務所に設計管理を依頼するため、正確には「設計監理料」と呼ばれます。一般的に設計施工分離方式の設計料は工事費に対して7%〜8%が目安です。工事費が1億円かかるアパートを建築する場合の設計監理料は700万〜800万円とされます。なお、設計施工分離方式の設計料率は設計施工一貫方式と同様に、工事費が高くなるほど料金が下がります。

建築工事費

建築工事費とは、アパートの建築に必要な材料費や工賃、人件費といった経費などです。

建築工事費は「本体工事費」と「付帯工事費」があります。本体工事費とは、建物の躯体や内外装の仕上げや設備工事など。付帯工事費とは、本体工事に付随する解体工事や電気・ガス・水道などの引き込みなどの工事です。アパートの建築工事費用は建物の構造によって変わります。木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造の3種類を比較した場合、工事費の予定額は「木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造」の順で高くなります。

諸経費

アパート建築には、建物の工事以外にも次のような諸経費がかかります。

  • 税金:不動産取得税、登録免許税、印紙税など
  • 司法書士への報酬
  • 火災保険料

また、銀行から融資を受ける場合、次のような関連費用が必要です。

  • 抵当権設定費用:ローンを組む際、銀行が土地や建物に抵当権を設定する際にかかる費用
  • 事務手数料:銀行に支払う事務手数料
  • 保証料:アパートローンを利用する際に保証会社から受ける保証料。借入期間と借り入れ金額によって計算されます。ただし、保証会社を利用しない場合は不要です。

諸費用の金額は物件の規模や融資を利用するか否かによって変動しますが、一般的に建築費用の1割程度とされています。

土地代

土地を購入してアパートを建築する際には、建築費だけでなく土地代も必要です。土地代は周辺環境や将来性、利便性などによって価値が変わります。地盤沈下や土壌汚染などが懸念される土地の場合、土地代は安く抑えられますが、資産としての土地の価値はマイナスです。周辺の地価と比較しながら、価格を決定づける要員について事前に把握しましょう。なお、すでに土地を所有している場合は、土地をそのまま活用してアパート経営ができます。

アパート建築費の算出方法

アパートの建築費は次のような計算式で算出されます。

総工事費=本体工事費(延べ床×坪単価)+別途工事費+諸費用

「延べ床」とはアパートの各階の床面積の合計を指します。床自体がない吹き抜け部分やバルコニー・ピロティなど壁に囲まれていない部分は床面積に含まれません。また、「坪単価」とはアパートを建てるときの1坪(畳2枚分/およそ3.3㎡)あたりの建築費を指します。

なお、本体工事費はアパートの建築費用の7割〜8割を占めるとされます。例えば、建物の基礎・構造・内装や外装などです。

アパート建築費の相場

次はアパート経営の相場を解説します。「木造」「軽量鉄骨」「鉄筋コンクリート」の3つの物件構造ごとにみていきましょう。

木造

木造アパートの建築費用の相場は、坪単価で50万〜70万円程度です。木造はアパートで最も一般的な建築構造とされており、2階から3階の低層アパートに適しています。木造建築は建築費用を安く抑えながら高い利回りである点がメリットです。ただし、木材や壁材の耐久年数が短いため、物件価値を維持するための長期的なコストを考慮する必要があります。

軽量鉄骨

軽量鉄筋の建築費用の相場は、坪単価で60万〜90万円程度です。軽量鉄骨のアパートは、2階から4階の低層アパートに適しています。建築資材を工場で作成して現場に運んで組み立てるため、工期が比較的短い点が特徴的です。ただし、耐火性や遮音性が他の構造と比較すると多少劣る場合があります。

鉄筋コンクリート

鉄筋コンクリートの建築費用の相場は、坪単価で80万〜120万円程度です。鉄筋コンクリートのアパートは、5階以上の中層建物や10階程度の中高層のアパートに適しています。木造や軽量鉄筋と比べて耐震性や耐久性、遮音性が高いメリットがある反面、建築費用が高く工期が長い点がデメリットです。

ローコストでアパートを建築する方法

アパート建築の基本的な概念が理解できたところで、この章では具体的なコスト削減方法を解説します。

設計施工一貫方式で建築する

アパートをローコストで建築するには、設計施工一貫方式を選択することがポイントです。

先述した通り、アパートの設計方法には「設計施工一貫方式」と「設計施工分離方式」の2通りがあります。設計施工一括方式で依頼すると、設計内容が必然的に経済設計となり、建築コストをフレキシブルに下げることが可能です。大手ハウスメーカー各社が競って独自の経済的な工法を生み出しているため、低コストで品質や耐久性の高い設計と施工が実現します。

相見積もりを取る

相見積もりとは、複数の業者に同じ条件の見積もりを依頼して比較検討することです。

アパート建築においても、相見積もりを取って依頼する業者を比べる必要があります。工事費の見積書は高い専門知識がないと、価格の根拠はわかりません。専門知識に自信がない方は、複数の業者に見積もりを依頼して総額を比較する方法が現実的です。不動産会社によっては、一括して複数の見積もりや収益計画を提示してくれる場合もあります。

シンプルな形状にする

アパートを建築する際には、シンプルな形状にすると建築費用を安く抑えられます。

一般的に、アパートの建築費の配分は躯体4割、仕上げ4割、設備2割です。特に躯体の部分はハウスメーカーによって価格が異なるため、構造や工法を変えると値段が変動する傾向にあります。そのほか、設備のスペックや仕上げの仕様を落とすとコストの削減が可能です。設計者による代替品の減額提案は「VE(ヴイ・イー)提案; バリューエンジニアリング提案」とも呼ばれており、設計者に「予算オーバーなのでVE提案がほしい」と伝えれば、減額案を提示してもらえます。

アパート建築費の盲点

最後にアパートの建築費で見落としがちな点について解説します。経営を成功に導くうえで重要なポイントみていきましょう。

会社による坪単価の算出方法の違いを理解する

坪単価の計算方法は会社によって異なるため、第一印象の数字だけで比較判断できない点にご注意ください。また、見積もりの中には共有部分や設備などがどれだけ含まれているかも確認が必要です。施工会社から実際に見積もりを取った場合は坪単価だけでなく総額でも比較をしましょう。

競合物件の相場や入居者のニーズを見極める

アパート建築を成功させるには、採算が取れるプランニングが重要です。アパートを建築する地域や入居者にどのようなニーズがあるのか、競合物件や立地条件、利便性などから分析し、把握する必要があります。ファミリー向けの物件ならば、間取りの広さや防音などが重要です。また、単身者向けの場合は物件のセキュリティや収納の確保などがポイントとして考えられます。入居者のニーズに即した魅力を反映できれば、他物件との差別化が可能です。

建築費だけでなく長期的な修繕コストを考慮する

アパート建築では建築費だけでなく、長期的な修繕コストの考慮も大切です。一般的にアパート経営では小規模な維持修繕工事のほかに、10年〜15年をスパンとした大規模工事が必要とされています。物件価値を保持には、長期的な観点から物件にかかるコストの予想が必要です。建築の際に部分的に用いる材料によっては、長持ちする材質やメンテナンス費用が安く済む場合もあります。坪単価が上がっても、修繕コストが安ければトータルで有利です。

1階の空室対策をする

一般的にアパートは1階の空室率が高くなるため、1階の空室対策を徹底することが重要です1階が空室になりやすい理由は、通行人からのプライバシーやセキュリティなどがあげられます。専用庭を作ったり、道路や隣の建物よりも少し高く建築したりする対策が可能です。1階を入居者が決まりやすい、または退去されにくい建物にすると、収益率が安定します。

まとめ

今回は、アパート経営における建築費の見積もりにおいて、見落としがちなポイントを解説しました。要点は次の通りです。

  • アパートの建築費用は会社によって坪単価の算出方法が異なるため、坪単価だけでなく総額も比較検討する。
  • 建築費だけでなく長期運営でかかるコストや入居者のニーズに配慮する。

アパート経営は、大きな資金が必用なぶん、ポイントを抑えれば大きなレバレッジが得られます。ご自身が思い描く不動産経営を実現させるには、専門家への相談がポイントです。費用の見積もりや比較検討について、ぜひお気軽にご相談ください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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