不動産投資とは

不動産投資用物件は離婚時の財産分与の対象?財産分与できないケースや注意点も解説

2021/01/25
不動産投資用物件は離婚時の財産分与の対象?財産分与できないケースや注意点も解説
  • 「不動産投資用物件は離婚した際の財産分与の対象?」
  • 「財産分与をおこなう際の注意点は?」

不動産投資を行っている方の中には、離婚時の資産の分与について上記のように様々な疑問を持たれている方もいるでしょう。

結論から言うと、不動産投資用物件は財産分与の対象です。

ただし、財産分与ができない場合や気をつけるべきポイントも多く存在します。そのため、財産分与の際の注意点を正確に理解しておくことが重要です。

そこで、この記事では不動産投資用物件の財産分与をおこなう際の注意するべきポイントや財産分与の具体例を紹介しています。最後まで読んで、参考にしていただけると幸いです。

不動産投資用物件は離婚した際に財産分与の対象になる

不動産投資物件は離婚した際に財産分与できる資産の対象になります。

ただし、婚姻前にローン支払いが終わった物件や相続した物件の場合は財産分与できません。状況によっては財産分与が出来ないケースもあるので、注意が必要です。

財産分与とは

財産分与とは、離婚をする際に婚姻期間中に築いた資産を貢献度に応じて分割することです。

法律では、結婚期間中に築いた資産は共有のものであると定義されています。そのため、夫と妻どちら側にも資産の分与を主張する権利があるのです。主張した際のトラブルを防ぐためには、分ける資産について細部まで話し合うことが重要になります。

①共有財産とは

共有財産とは、財産分与の際に分けられる資産のことを指します。簡単に言うと、婚姻期間中に共同で築いた資産のことで、片方の名義の資産でも財産分与することが可能です。

例えば、婚姻期間中に購入した家具や宝石、預金や投資物件などが共有財産に当たります。

②特有財産とは

特有財産とは、結婚前に保有していた資産や相続した資産のことを指します。つまり、婚姻相手の協力がない状態で取得した資産のことです。

例えば、婚姻前に支払いが終わっている不動産投資物件や相続によって得た不動産が挙げられます。

不動産投資用物件が財産分与になる事例

投資用物件が財産分与の対象になる主な事例は以下の3つです。

  • 共有名義でローンを組んでいる
  • ローンの名義が単独で返済を共同で実施している
  • 専業主婦や専業主夫の場合でも対象となる

上記の例について詳しく紹介していきます。

  • 共有名義でローンを組んでいる

投資用物件のローンを共有名義で組んでいる場合は財産分与の主張が可能です。また、債務者が夫で連帯保証人が妻になっている場合も同じく財産分与できます。

ポイントは、婚姻期間中に不動産投資用物件を購入していること夫婦で協力してローンの返済を行っていることです。

  • ローンの名義が単独でも返済を共同で実施している

ローンの名義が単独でも返済を共同で実施している場合は財産分与の主張が可能です。

例えば、給与(家計)から維持管理費の支出やローン返済をしている場合などが挙げられます。

  • 専業主婦や専業主夫の場合でも対象となる

専業主婦や専業主夫の場合でも婚姻中に投資物件を購入した場合は、財産分与の対象になります。

婚姻相手の給与で生活していたとしても、食事の準備や洗濯などの家事によって働きやすい環境を作っていると認められるためです。専業主婦(主夫)だからといって、財産分与が認められないことはありません。

不動産投資用物件が財産分与にならない事例

投資用物件の財産分与をおこなえない主なケースは以下の3つです。

  • 相続や贈与によって所有した不動産投資用物件
  • 婚姻前に現金で買った不動産投資用物件
  • オーバーローンになっている不動産投資用物件

上記の例について詳しく紹介していきます。

  • 相続や贈与によって所有した不動産投資用物件

投資用物件を相続や贈与で得た場合は、相手の協力がないため特有財産に該当し、財産分与の対象になりません。

例えば、妻の両親から妻が不動産投資用物件を相続した場合には、夫の協力がなくても得られた資産のため特有財産になります。ただし、不動産の管理を夫に手伝ってもらっている場合や維持費を同じ財布から支出している場合では、貢献度によって財産分与を主張できます。

  • 婚姻前に現金で買った不動産投資用物件

結婚前に現金で買った投資用物件や支払いが終わった不動産投資用物件の場合は、財産分与の対象になりません。独身時代に自分の資産を使用して得た資産のため、婚姻中に協力して得たものと認められないためです。

ただし、前述したように管理を配偶者に手伝ってもらっているケースや維持費を配偶者と共同で支払っているケースでは、貢献度に応じて財産分与を主張できます。

③オーバーローンになっている場合は財産分与しない

投資用物件のローン残債が不動産価値を上回っている状態(オーバーローン)の場合には資産価値がないため、財産分与の対象になりません。一方で、不動産は名義人の所有になるため、名義人がローンの残債を支払う必要があります。

例えば、夫が名義人である不動産の時価が3,000万円でローンの残債が4,000万円あるケースは、物件を売却しても負債が1,000万円残るので資産の分与ができません。しかし、名義人である夫には1,000万円の残債を支払う義務が残ります。

オーバーローンの場合は、トラブルになる可能性も高くなるので注意が必要です。

不動産投資用物件を財産分与するための方法

  • 投資用物件の売却金を分割
  • どちらか一方が不動産投資用物件を取得して代償金を支払う
  • 寄与度に応じて毎月家賃を支払い続ける

上記の方法について詳しく説明していきます。投資用物件の財産分与をおこなうための方法は以下の3つです。

不動産投資用物件の売却金を分割

最も一般的な方法が投資用物件を売却して現金化してから分ける方法です。

不動産を実際に売却して分割するため、不動産の評価でトラブルになりません。

ローンが残っている場合は、残額から売却金を差し引いた金額を分けることができるので、非常に公平性が高いというメリットがあります。一方で、不動産を売却してからでないと分割ができないため、お金を得るまでに時間がかかるのがデメリットです。

どちらか一方が不動産投資用物件を取得して代償金を支払う場合

夫婦の片方が投資用物件を取得する場合、放棄した人に対して代償金を支払うことで財産分与をおこなう方法です。ローンの残債がない場合は、評価金額の50%を代償金として相手に支払います。一方で、ローンが残っている場合は、評価金額から残債を差し引いた金額の50%を代償金として支払うのが一般的です。

ただし、投資用物件の評価方法は固定資産税や査定評価額などの複数の方法があるため、相手が金額に納得しない可能性があります。

トラブルになる可能性も高いので、あらかじめ評価方法について取り決めておくことが重要です。

寄与度に応じて毎月家賃を支払い続ける

不動産投資用物件の財産分与の方法には、管理業務や維持費などの不動産の運用に寄与した度合いによって賃料を分割し相手に支払い続ける方法があります。

ただし、あまり一般的ではなく、婚姻中に得た不動産投資用物件については折半が主流です。婚姻前に現金で購入した物件や相続した物件に対する寄与度として適用されるケースがメインになります。

また、将来的に物件の価値が変動するため、お互い合意したうえで書類をきちんと残しておかないと将来トラブルに発展する可能性が高いので注意が必要です。

不動産投資用物件を財産分与するときの注意点

投資用物件の財産分与をおこなう際の注意点は以下の5つです。

  • 不動産投資用物件を譲渡する側は譲渡所得税がかかる可能性がある
  • 分与された資産が多すぎる場合や税金逃れと認められる場合は贈与税がかかる
  • 財産分与の請求期限内に請求する
  • 不動産の名義とローンの支払う人が違う場合はリスクがある
  • どちらかが保証人になっている場合は変更できない可能性がある

それぞれについて説明していきます。

不動産投資用物件を譲渡する側は譲渡所得税がかかる可能性がある

譲渡する不動産投資用物件の時価が購入時の金額よりも高い金額の場合には、譲渡する側に譲渡所得税がかかる可能性があります。

例えば、購入時に3,000万円であった不動産を4,000万円で譲渡するケースでは、購入時の金額よりも1,000万円高くなっているため、譲渡所得税がかかるのです。

このように、思わぬ税金負担があるかもしれないので、財産分与をおこなう際の税金について把握しておくことは非常に重要になります。

分与された財産が多すぎる場合や税金逃れと認められる場合は贈与税がかかる

分与された資産の額が婚姻中の協力によって得た相応の額よりも多い場合は、贈与税がかかる可能性があります

特に相続税や贈与税を逃れるために実施したと認められる場合は、全額に課税されることもあるため、注意してください。

財産分与の請求期限内に請求する

財産分与は、民法第768条2項によって、離婚してから2年の除斥期間を過ぎると財産分与が認められないと定められています。

そのため、財産分与を請求する際は、請求期限内に請求するようにしてください。

ただし、請求期限内に裁判を起こして、判決がでるまでに離婚してから2年以上経過したようなケースは財産分与が可能です。

不動産の名義とローンの支払う人が違う場合はリスクがある

話し合いの結果、不動産の名義とローンの支払う人が違うという形で財産分与が行われることがあります。このような場合は、返済の途中でローンの支払いが滞るなどのリスクがあることを理解しておくことが重要です。

例えば、妻が投資用物件を所有して、ローンの支払いを夫がおこなうケースでは、夫の状況や気持ちによってはローンの支払いが滞ることがあります。

このような形で財産分与をおこなうのは、将来的にトラブルになる可能性が高いため、おすすめできません。

どちらかがローンの連帯保証人になっている場合は変更できない可能性がある

夫や妻の片方がローンの連帯保証人になっている場合は、離婚をしても金融機関によっては保証人を変更できない可能性があります。金融機関は夫婦であることを前提にローン契約をしているため、簡単に変更を認めることが出来ないためです。

どうしても変更する必要がある場合には、連帯保証人の候補者を決めて金融機関と交渉することをおすすめします。

まとめ

不動産投資用物件は離婚時に財産分与の対象になります

ただし、特有財産になる場合は財産分与の対象にならないなど、不動産投資用物件の財産分与には知っておくべきことも多いです。注意点をしっかりと理解していないとトラブルになる可能性もあります

この記事を読んで、財産分与をおこなう際の参考にしていただけたら幸いです。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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