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【前編】"不動産テック"最前線!米Zillow、RedfinのAI不動産価格推定が切り開いたマーケット

筆者: 株式会社グローバル住販(THEグローバル社グループ)コラム
2019/05/23

不動産テックという言葉を耳にしたことがあるだろうか。


不動産とテクノロジー(テック)を組み合わせた造語だ。意味するのは、人工知能(AI)やビッグデータ、ネットを使った、不動産に関連した新しいサービスや製品のことを指す。これまでなかったような不動産ビジネスを生んだり、人々の生活を大きく変化させたりする可能性を秘めているとされ、日本でも2016年頃から注目され始めている。今では200以上の企業やサービスがあるとされている。


2018年には一般社団法人不動産テック協会が設立され、ベンチャー企業だけではなく、大手不動産会社も参加するなどして、活発な活動が始まっている。


不動産投資家が知っておくべき、不動産テックの状況について、少し紹介していきたい。

最先端アメリカに対しはるかに出遅れた日本

日本で盛り上がっている不動産テックだが、実は最先端とされるアメリカの状況に比べると、はるかに遅れをとっている。日本が出遅れた理由としては、未だに物件情報をFAXでやりとりする独自の商習慣などを上げる人もいる。しかし実際には、新しいテクノロジーやビジョンをもった企業を応援する投資マネーの差が大きかったように思う。


アメリカでは不動産テックはすでに投資先としても有望と認識されており、社員数人のベンチャー企業が数億~数十億円の投資を受けることも少なくない。1年間で数千億円単位のマネーが不動産テックに流れ込んでいるとされている。アメリカでは、すでに株式公開をした企業も少なくない。日本でもここ1~2年で資金調達のための環境がようやく整ってきつつあるので、期待したい。ちなみに本場アメリカではReal-Estate-Tech(リアルエステート・テック)略してRe-Techと呼ばれることもあったが、最近ではPropTech(プロップ・テック)という呼び方が定着しつつある。本稿では不動産テックで統一する。


代表的な企業とともに不動産テックの注目すべき動きを見てみよう。

不動産ポータルサイト最大手Zillowが生んだ価格推定

Zillow(ジロー)は2006年に設立されたIT企業で、すでにNASDAQ市場に上場しているメガベンチャーだ。全米で最大の不動産情報企業である。主力は物件情報の広告事業で、日本のSUUMOやHOME`S、アットホームなどと同じと思ってよい。実は不動産テックという言葉が生まれる前から活動していた老舗企業でもある。


彼らは、売り出されている物件の情報だけでなく、過去の売買実績、物件の固定資産税など、1億以上の情報を所有しているといわれている。この膨大なデータを基盤として、物件広告に留まらず、様々なサービスを提供している点が特徴だ。


Zillowが不動産市場に衝撃を与えたのはZestimate(ゼスティメイト)という不動産価格の査定サービスを公開したことだ。膨大なデータを駆使して、不動産がいくらで売れるのかを推定するサービスだ。従来のように不動産会社に依頼しなくてもネット上で価格がわかる手軽さで、注目を集めた。また、この価格を元にして、自宅にかかる固定資産税の値引き交渉を当局と行う人が続出するなど、不動産ビジネスに留まらない影響を与えた。


このサービスは、売れるまでは誰にも本当の価値がわからないという不動産の常識を、情報技術で覆そうとした点で画期的なものだった。この価格推定の肝になっているのがAIを活用した機械学習だ。取得したデータを使って、少なくとも1日に数百万回の計算を繰り返していると言われる。


このZillowから始まった価格推定への試みが、不動産テックの一つの大きな柱となっている。

精度でZillowを超えたRedfin

情報技術を活用した不動産価格の推定という新たな次元に踏み出したZillowだが、ここ数年は、後続企業に脅かされる存在に変わってきている。


その急先鋒とされるのがRedfin(レッドフィン)だ。RedfinはZillowと同じく、不動産情報サイトの運営会社なのだが、自社で仲介までやってしまうという点で大きな違いがある。Redfinでもデータを使った機械学習での価格推定を行っているが、その精度は高く、先行していたZillowをすでに超えていると言われている。Zillowの経営幹部が自宅を売却した際に、ライバル企業であるRedfinが算定した査定の方が実際に売れた金額に近かったという噂もある。


Redfinの精度がZillowを上回った要因は、地域の情報をよく知る仲介担当の社員が推定価格を調整しているからだと言われている。テクノロジーと不動産のプロが持つ相場観を組み合わせたことが功を奏したというのだ。つまり最後は営業社員次第という、古くからある不動産のセオリーに舞い戻ったようで、これを面白いとみるか、残念とみるかは意見が分かれそうだ。

推定価格で即買い取りするサービスも登場

しかし、膨大なデータを駆使して行う価格推定自体の精度は上がってきている。2015年頃から、推定した価格のまま不動産を買い取ってから、別の人に売るというサービスも生まれている。これまでの推定価格で買ってくれる人を探して仲介してもらうことに比べると、売る側にとっては、売却までの期間が短くなるという大きなメリットがある。最短でわずか2日間で買い取りが完了するというから、驚くほかない。


もちろん大量の在庫不動産を抱え込むビジネスモデルであり、そのリスクの高さも指摘されている。まずは大量の投資マネーによる財務基盤を活用して、資金が続くうちに多くの実例を積み上げるのが狙いだといわれている。物件価格を高めるためのリノベーションのノウハウなどを蓄積して新たなビジネスモデルを確立していけば、従来の不動産ビジネスを根本から変えていく可能性もある。


次回は日本の不動産テック市場について触れてみたい。

株式会社グローバル住販(THEグローバル社グループ)

株式会社THEグローバル社(東証1部上場)を中心とした企業グループで不動産開発~販売~管理を一貫して行う。従来からの実需用住宅に加え、近年はホテル運営や投資物件開発・販売等へと事業領域を拡大している。