みんかぶ不動産

誰もが知ることになった地面師詐欺

筆者: 株式会社グローバル住販(THEグローバル社グループ)コラム
2019/05/092019/05/13

地面師という言葉をご存じだろうか。許可なく他人の土地を売ることで、金銭をだまし取る詐欺師のことである。

 少し前までなら、不動産業界で働く人の中でも知る人は限られていたが、一昨年に起きた、品川区内の旅館跡地を舞台にした巨額の地面師詐欺事件が大きな注目を集め、さらにその犯人一味の逮捕報道が続いたことで、一挙に有名になった。これは被害額が約63億円と巨額であっただけでなく、騙されたのが誰もが知る大手ハウスメーカーであったことから、一般紙やテレビなどで大々的に報じられたためだ。
 

舞台となった旅館跡地はJR・地下鉄の駅から徒歩3~4分の場所で、東京都内で営業する不動産業者なら誰もが知る一等地だった。そのため不動産業界関係者の間でも衝撃が広がった。

 

あるマンション開発会社の重役は「社会人になった20代の頃に用地取得(マンションやビルを建築するのに適した土地を仕入れること)のために、あの旅館は何度も通った場所です。私以外にも同業者がよく顔を出していました。そんな場所がワイドショーにまで取り上げられて、何か不思議な気分になりました。いや、実際に当社が被害者であっても不思議はなかったんです」と語っていた。

 

地面師詐欺事件に詳しい司法書士は解説する。「いま思えばあそこは地面師が狙う要素がそろった土地でしたね」

 

地面師が狙う土地とは何だろうか。司法書士は下記を例示する。

 

①本当の所有者と連絡がとりにくい、または連絡がとれない

②不動産会社が欲しくなるような、良い条件の土地

 

この二つが必須条件であるという。

 

  • は偽の持ち主をでっち上げるために必要だ。海外に住んでいるとか、長期入院中、認知症が始まっていて老人ホームにいるなどの条件があると、地面師が狙いやすくなる。

 

  • は当然ながら、誰もが欲しくなるような土地でなければ、持ち込んだ話に誰も乗ってこないからだ。

 

こうした条件にピタリとはまったのが、大手ホテルチェーンが被害にあった、東京・港区赤坂の地面師詐欺事件である。人通りの多い、ビルが立ち並ぶ都心になぜか放置されるような駐車場があった。持ち主とされてきたのは、90歳前後の兄弟でどちらも連絡がとれない状態だった。

 

この土地を地面師は狙い、兄弟になりすまして、大手ホテルチェーンから金をだましとったのだ。


世間を騒がした地面師詐欺事件

 

  1. 1、五反田元旅館詐欺事件


大手ハウスメーカーが品川区内の土地売買をめぐり約63億円の金銭をだまし取られた事件。舞台となったのは品川区五反田の元旅館だった土地で、不動産業界では誰もが知る超一等地だった。本来の土地の所有者である旅館の女将になりすました「偽女将」など、詐欺には総勢20人以上が関わったとされる。的確な役割分担や、人数集めなど詐欺の舞台裏まで事細かく報じられた。また被害にあった大手ハウスメーカーで、責任の所在を巡って社内抗争が生じ、その模様も一般紙や週刊誌を賑わせた。

 

2、赤坂ホテルチェーン地面師詐欺事件

東京都港区内の商業地を舞台に、大手ホテルチェーンが被害にあった地面師詐欺事件。大手ホテルメーカーが被害者になった点、また舞台が人通りも多い赤坂の一等地であった点などから、世間の注目を集めた。被害額は12億5000万円とされる。

 

なぜ騙されるのか?

不思議なのは、なぜ地面師達は大手ハウスメーカーや大手ホテルチェーンなど、しっかりとした経営基盤をもつ大企業のチェックをすり抜けて、大金を手にすることができたのかだ。

 

実は五反田の地面師は誰もが騙されるような、完璧な詐欺を演じたわけではない。例えば、偽女将は会話の中で「連休中は田舎に帰ります」とか「郷里は桜がきれいで」などと、旅館が実家であることを忘れてしまった場面があったのだという。なかには生まれ年の干支を間違えるなど、初歩的なミスを積み重ねたこともあった。しかし、それでも騙された人がいるのだから不思議だ。

 

先述の司法書士は、むしろ大手企業ならではの理由で騙されるのだと解説する。
 

「まず十億~数十億円単位のお金が必要な一等地は大手企業くらいしか購入できない。だから、彼らが地面師のターゲットになります。また大企業は取引の話がでて、いったん動き出すと、多くの部署が絡んで案件を進めていきます。用地取得の担当者として、地面師グループと直に接する社員以外にも、購入時の資金繰りを担う財務担当、購入後の建築計画を作る企画担当や工務担当などが一挙に動き出します。そういった流れができると、『この話は危ないのではないか』と誰かが思っても、止められないものなのです」


 逆に、一般人は引っかかりにくいのも地面師詐欺の特徴だ。なぜなら、それほど急いで土地を購入する必要がないからだ。不動産取引に生活をかけているプロならではの、事情を巧みについて詐欺をしかけてくるという。「もうこんな良い土地はでてこない」「地主が急いで売りたがっている」「決断しないなら、この話は他に持って行く」地面師達はそういった言葉で、本来なら取引のプロである不動産会社の判断力を低下させていくのだ。

 

実は地面師集団の中心人物は日常から詐欺を行っているわけではないという。普段は不動産会社を経営しており、土地や住宅を売り買いしていることが多い。それが地面師詐欺に使えそうな土地を見つけるや、詐欺師に豹変するのだという。つまり不動産会社が何に騙されるかを熟知しているのだ。

 

個人投資家が直接、地面師詐欺の害を被ることは考えにくいが、不動産業界の影の部分として知っておいて損はない世界だ。プロですら騙されることがあると自覚し、不動産取引には慎重になるべきという、教訓を刻むべきであろう。

株式会社グローバル住販(THEグローバル社グループ)

株式会社THEグローバル社(東証1部上場)を中心とした企業グループで不動産開発~販売~管理を一貫して行う。従来からの実需用住宅に加え、近年はホテル運営や投資物件開発・販売等へと事業領域を拡大している。