購入予定の物件に関して、物件の条件や取引の条件などに関する「重要事項説明」があります。
重要事項説明は、どの不動産の契約前にも必ず行われます。
物件を購入するにあたって、重要事項の内容をきちんと理解することが大切です。
こちらの記事では、説明の流れや押さえておくべきポイントを解説していきます。
宅地建物取引業法という法律によって定められた手続きで、不動産の売買行う際には必ず行わなければなりません。
重要事項説明以外にも「媒介契約締結」や「売買契約締結」についても法律によって書面交付が義務付けられています。
重要事項説明が行われるのは、売買契約を締結する前になります。
出典:国土交通省
不動産は、非常に高額な買い物になります。購入後に「認識が違った」では済まない話になるわけです。
買主を保護するために設けられている制度だと考えてよいでしょう。
宅地建物取引主任者という国家資格保有者が対面で説明することになっています。
重要事項説明書の内容は、大きく分けると
の2点であるといえます。
まずは物件に関する内容としては、登記された権利に関することや私道に関すること、及び水道、電気、ガスに関する内容や都市計画法や建築基準法などの諸々の法令に基づく制限が中心になっています。
次に、取引に関する内容としては、契約の解除に関することや違約金に関すること、及び金融機関からの金銭の貸借や瑕疵担保責任に関する内容が中心となっています。
区分所有の場合には、敷地に関する権利や修繕積立金に関すること、及びマンション管理の委託先などが説明項目として追加されます。
出典:国土交通省
法令は以下のようなものがあります。
このうち、特に留意すべきは「都市計画法」と「建築基準法」です。
都市計画法では、一定規模の建築物を建てる場合には許可制にすることや、用途地域を定めて、建築できる建物を限定するなどの制限がかかります。
建築基準法では、容積率や建ぺい率等を定めています。
これによって、建てることができる建物の高さや階数などにも影響してきます。
登記の権利部分には、「所有権に係る登記及び所有権以外の登記」があります。
所有権に係る登記に関しては、所有者以外の権利がないかどうか確認が必要です。
これがあると、購入後に所有権をめぐってトラブルに発展してしまうこともあります。
所有権以外の登記に関しては、抵当権や賃借権があります。
買主の所有を阻害するようなものは抹消しなければならないことになっています。
建築基準法43条第1項の定めにより、建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければならないとされています。
出典:東京都都市整備局
また、同基準法42条第2項の定めにより、前面道路の幅が4mに満たない場合には、道路に面する一定部分を後退する必要があるとされています。(セットバック)
出典:東京都都市整備局
水道・ガス・電気などのインフラについて、有無を確認しましょう。
また、公営なのか私設なのかも重要なポイントです。
私設の場合は、負担金等が必要な可能性があります。
急遽契約を取りやめなければならない可能性もあります。
万が一に備えて契約が解除できる期限について確認が必要です。
また、契約解除に際して手付金の返還の有無、違約金の発生の有無についても把握しておきましょう。
重要事項説明書には、利用する予定の住宅ローンが記載されます。
金融機関名や融資条件に間違いがあったりすると、融資特約によって白紙解除になってしまうケースもありますので注意が必要です。
近年、日本では大規模な水害が頻発しています。
その度に、甚大な被害が生じていて、不動産の取引においても水害のリスクに関わる情報がより重要になっています。
2020年の集中豪雨では、熊本県などの九州地方を中心に甚大な被害が出たことは記憶に新しいと思います。
死者数は82人。家屋被害は全壊319棟、半壊2009棟、一部破損2230棟、床上浸水6985棟、床下浸水6949棟にのぼりました。
このような状況を鑑み2020年7月に国土交通省から、不動産の取引時にハザードマップにおける取引対象物件の所在地について重要事項説明の対象として説明することが義務付けられ、2020年8月28日から施行されました。
出典:国土交通省
2020年4月1日から民法が改正され、売主の瑕疵担保責任に関する見直しがされています。
改正法の内容には、「買主の権利」として売主に損害賠償を請求したり契約解除をできることが明記されたり、「隠れた瑕疵」という用語が分かりづらいことを理由に「契約の内容に適合しない」という用語に改められました。
また、改正前までは、瑕疵担保責任の追及は、買主が瑕疵を知ってから「1年以内の権利行使が必要」とされていたものが、買主側の負担が重いことを理由に「1年以内に通知が必要」に改められました。
出典:法務局
宅地建物取引業法では、不動産の売買における重要事項説明は「対面」で行わなければならないことになっています。
不動産賃貸においては、現状オンラインでの重要事項説明も認められており、コロナ禍においても一定の役割を果たしました。
コロナ禍において、不動産に限らずさまざまな分野でオンライン化が急速に進んだことは皆さん承知の通りです。
近い将来、売買においてもオンラインでの重要事項説明が実現するかもしれません。
重要事項説明の一般的な流れです。
宅地建物取引士が書面を交付して口頭で説明します。
物件に関する内容や取引条件、さらに区分所有の場合はその説明など非常に多くの項目があります。
普通に読み合わせていくだけでも、2時間近くかかるものです。
聞くのが面倒と思って聞き流す方もいらっしゃるようですが、前述のように、説明を受けたあとに「認識が違った」では済まないのです。
説明を受けたあとは、納得して「押印」することになります。押印=納得です。
後になって、記載内容に関して「知らなかった」「説明をされなかった」は相手にしてもらえませんので、注意しましょう。
重要事項説明だけでは分からない内容に関して告知書を作成します。
「知らなかった」「説明を受けていない」など、後々のトラブルを防ぐ目的のものです。
告知書の主な内容は以下の通りです。
建物に関する内容
土地に関する内容
いかがでしたでしょうか。
重要事項説明の流れの理解はできたでしょうか。
後になってトラブルにならないためにも、押さえておくべきポイントを理解した上で、説明に臨むようにしましょう。