不動産投資とは

不動産投資物件はどのように決まる?価格計算方法を分かりやすく解説

2019/12/17
不動産投資物件はどのように決まる?価格計算方法を分かりやすく解説

「不動産に投資してみたいけど、物件価格が適切なのか分からない」と悩む人も多いでしょう。物件価格は不動産の価値だけではなく、周辺の環境や交渉力によって変動するものです。

売主にうまく値引き交渉することで、不動産価格を抑えて利回りを改善できるのがポイントです。そこで今回は物件価格を計算する方法と、不動産を安く投資する方法について解説します。

不動産投資の物件価格はどのように決まるのか?その3つの方法

消費者が商品やサービスを購入する場合、メーカーや小売店が設定した料金を支払うことが必要です。不動産も同じく、売主や仲介業者が物件価格を設定して買主を探しています。

投資不動産の場合、売主が物件価格を決めるときには、一般的には以下の3つの方法により計算します。

  1. 収益還元法
  2. 原価法
  3. 取引事例比較法

それぞれの評価方法における特徴や計算式について詳しく解説します。

収益還元法

投資の対象である不動産が、将来にわたって生み出す収益を推測して評価するのが収益還元法です。賃貸用物件や事業用物件の価格を計算するのに有効とされています。

収益還元法にはDCF法と直接還元法の2つがあります。

DCF

DCF法はディスカウントキャッシュフロー法の略称であり、将来に獲得できるであろう利益と予想売却価格を現在の物件価格から引いて計算します。

②直接還元法

直接還元法は一定の期間における純収益を推測して、その収益を還元利回りで割ることで計算する方法です。一般的には「1年間における純収益÷還元利回り」という計算式によって評価されます。

還元利回りは投資金額に対して獲得できる利益の割合を示すものであり、類似物件やエリアデータにより算出されるものです。過去の実績がベースとなるため、還元利回りの正確性が十分でない場合があります。

原価法

建築物や土地を不動産鑑定士が査定して、合理性のある価格を計算するのが原価法です。同じようなスペックの物件を新しく建築する時の費用を評価して、そこから建築年数による価値の低下を引くことで算出します。

原価法により算出される物件価値を積算価格と呼び、積算価格は以下の計算式により計算することが可能です。

「積算価格  総面積 × 土地単価 ÷ 建築物の耐用年数 × 残存年数」

不動産の費用を重視して評価する原価法は、自分が物件に住むことを目的とする場合に活用されます。投資目的で不動産を購入する場合は、収益性を重視した収益還元法により評価されることが多いです。

取引事例比較法

投資対象の不動産と似たような物件の取引事例を収集して、事例から調整して価格を算出するのが取引事例比較法です。不動産鑑定士が周辺地域にある不動産と対象の不動産を比較して評価します。

物件によって細かい条件は異なるため、適正価格から離れてしまう可能性があるため注意しましょう。

不動産が適正価格であるのか判断するには?

「評価方法は分かったけど、本当に適正価格なのかの判断ができない」と思われている方もいるでしょう。不動産が適正価格であるのか判断するには、以下4つの方法をあわせて活用することが重要です。

  1. 相場利回りと比較する
  2. 鑑定評価してもらう
  3. 周辺地域の相場を調査する
  4. 公的機関の指標を確認する

それぞれの方法を詳しく解説します。

相場利回りと比較する

一般的に不動産価格が高くなるほど利回りが低くなる傾向です。一般財団法人日本不動産研究所の不動産投資家調査によると、東京のマンションにおける相場利回りは3.5%~4.5%となっています。

参考:http://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2010/10/kouhyou.pdf

利回りが相場よりも高ければ、不動産の価格が適正または割安と判断できるのです。相場利回りを比較して物件の価格が適正であるのかチェックしましょう。

鑑定評価してもらう

対象の不動産や土地、それらに関する権利の価値を評価するには鑑定評価してもらうことがオススメです。不動産鑑定師などの専門家に依頼するといいでしょう。

不動産の鑑定評価を依頼するには、不動産鑑定事務所をインターネットなどで探せます。いくつかの事務所と相談したうえで、信頼できる事務所に申し込むことがポイントです。

後は鑑定士が対象の不動産に関する資料を集めて、物件や周辺地域を調査してくれます。

注意点は鑑定の対象となる不動産の価格が高くなるほど、鑑定士への依頼費用が高額となることです。例えば住宅や建物を鑑定してもらうには、約20万円から30万円の費用を支払う必要があります。

投資したい不動産の価格設定に不安を感じた時に、活用していただければと思います。

周辺地域の相場を調査する

「高額な鑑定費用を支払うことなく、適正価格かどうか判断したい」と考えている人にオススメしたいのは相場価格の調査です。

周辺地域の物件価格をWebサイトや情報誌で見ることによって、おおよその相場を把握できます。

例えば、実際に成約した価格を公表されている不動産取引情報提供サイト「REINS」にて、成約価格を調べることができます。面積や間取りが近い物件の価格を見れば、対象の不動産が適正価格かどうか一つの参考値になります。

参考:http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do

なお、実際の成約価格は、売主が売却する理由、売却したタイミングなど様々な用意によって、似たようなスペックの物件でも、成約価格に差があること注意しましょう。

また、今売却に出されている物件の売却価格を調べることもオススメします。例えば「CENTURY 21」「ホームズ」などのサイトから調べることができます。価格だけではなく、売りに出された期間も合わせてチェックしましょう。

参考:https://www.century21.jp/参考:https://www.homes.co.jp/

公的機関の指標を確認する

実際の取引事例を見るだけでなく、公的機関の指標を見ることでも相場をチェックできます。例えば国土交通省が公表する地価公示価格を知ると、適切な土地の価格を判断できます。

また、各都道府県が公表する基準地価格を見ることで、不動産の基準値1平方メートルあたりの価格指標を把握できます。公的機関の指標を参考にして、対象の不動産における適正価格を判断しましょう。

安く購入するには?売主と価格交渉するには?

少しでも利回りを良くするために、不動産をより安く購入したい人は多くいると思います。ですが、売主側としては少しでも高く売りたいため、簡単には値下げを受け入れてはくれません。

一般的には売主は高く売却したいものです。値下げを持ちかける売主には、何かしらの事情があること注意しましょう。

質の良い投資不動産を安く購入するには、以下の2つのポイントを参考に交渉することが重要です。

  1. 大幅な値引き交渉はしない
  2. 仲介業者を活用する

それぞれのポイントを詳しく解説します。

大幅な値引き交渉はしない

不動産の価格交渉には適正な値下げ幅があり、大幅な値下げを交渉しないのが取引のコツです。たとえ相場価格よりも明らかに高い場合でも、適正幅を超える値下げは難しいと言えます。

不動産取引では下二桁を端数切りして取引するパターンが多いです。例えば2,850万円の物件を購入する場合、50万円の値引きであれば交渉で成立する可能性があります。

端数切りしても物件価格が高い場合は、タイミングが悪いと判断して様子を見ることが重要です。リターンを得られる物件を確実に取引するために、大幅な値引き交渉は避けましょう。

仲介物件は仲介業者を活用する

仲介物件は自分から売主に対して価格交渉するのが難しい場合、仲介業者に依頼して代行で交渉してもらうことがオススメです。あなたに代わって第三者が、合理的な範囲内で値下げ交渉をしてくれます。

相場価格より安い物件に対する考え方

物件数は少ないですが、割安な物件が出回っていることもあります。

相場価格より安い物件を見つけたときは、すぐに食いつくのではなく、なんで相場より安いのかの理由を探すことが重要です。大きく以下の3つのチェックポイントが挙げられます。

  1. 近くに線路や繁華街がある
  2. 建物や設備が劣化している
  3. 事故物件である

それぞれのポイントを詳しく解説します。

近くに線路や繁華街がある

相場価格より安い物件が現れる理由の1つとして、騒音による問題があります。

騒音などの環境に問題がないかチェックするには、"物件を地図で確認してみることがオススメです。その物件の周辺を散策してみることで、ホテル街や飲み屋があるのか把握できます。

たとえ安く物件を手に入れたとしても、騒音問題により人が入らなければ意味がありません。物件価格が相場より大きく安い場合は、周辺地域に問題がないことを確認しましょう。

建物や設備が劣化している

不動産は年数が経過すると劣化するものであり、古くなるほど価格は安くなります。

また築年数が50年を超える物件では、建物が古い耐震基準で建築されています。安全性の面でも経過年数が長いと不利であるため、不動産の価格は相場より安くなるのです。

事故物件である

世の中には何かしらの原因により、人が室内で死亡してしまう場合が稀にあります。心理的嫌悪感を抱かせるような不動産を俗に事故物件と呼び、事故物件の価格は相場よりも大きく下がる傾向です。

極端に物件価格が安い場合、その物件は事故物件である可能性が高いため注意しましょう。安く物件を購入できたとしても、空室が続けばリターンは見込めません。

まとめ

不動産に投資するときは価格の計算方法を知っておき、適切な価格であるのか分析することが重要です。売出価格で不動産に投資してしまうと、想定よりも利回りが悪くなってしまいます。

価格交渉するにはタイミング、交渉方法などを考慮したうえで、交渉することがポイントですが、いい物件はすぐ売れてしまいますので、そこのバランスが大切と言えます。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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