不動産投資は金融機関から融資を受けて物件を取得するケースがほとんどです。
しかし、「金融機関」といっても銀行、地銀、信用公庫など色々種類があり、自分に合った金融機関から融資を受ける必要があります。
今回は、金融機関の種類ごとの特徴や、金融機関を開拓するポイントを解説していくので、この記事を参考に金融機関選びをしましょう。
詳細は後述しますが、昨今の不動産投資ローンの動きは、昨年の不祥事を受け一棟投資物件の融資が非常に厳しくなっています。
そのような現状を知るのも、有利に融資を受けるためには必要といえるでしょう。
まず、不動産投資ローンが今どんな状況か?という点を解説していきます。
結論からいうと、シェアハウス会社の倒産に関する一連の不祥事によって、金融機関は一棟投資物件の融資を絞っている状況です。
その代わり、金融機関は区分(一室)マンション投資への融資を積極的に行っています。
そもそも、シェアハウス会社の倒産に関する一連の不祥事とは、シェアハウスのサブリースをメイン事業にしていた運営会社が破綻したことがキッカケで起こった事件です。
その事件の影響で、不動産投資の融資に積極的だった銀行の不正融資も発覚し、結果的に一棟投資物件の融資審査が非常に厳しくなりました。
シェアハウスの運営会社は投資家にシェアハウスを建築してもらい、そのシェアハウスを一棟借り上げ(サブリース)することで収益を上げていました。
つまり、投資家からすると運営会社が借主になるので、運営会社から賃料をもらい、運営会社は第三者を賃付けすることで賃料収入を得るというスキームです。
ところが、運営会社が上手く賃付けすることができず家賃収入を得られなくなり、投資家への賃料を滞納したまま倒産してしまいました。
つまり、投資家は賃料未払いのまま借主が倒産してしまったので、その分損失を被ったということです。
また、前項で解説したシェアハウスには、ある銀行(A銀行)が積極的に融資をしていました。
要は、投資家はA銀行からお金を借りて、シェアハウスの建築費用を支払っていたということです。
しかし、A銀行は自行内で審査を通すため、「預金の水増し」などの不正を行っていました。
つまり、本来は属性(年収や資金力)的に借りられない人でも、無理やり審査を通し融資していたということです。
これら一連の事件を受け、金融庁はA銀行をはじめとした金融機関に立ち入り検査を行い、A銀行は行政処分されるまでに至っています。
この影響で、ほかの金融機関も一棟投資に関する審査を厳しくせざるを得ず、その結果一棟投資に対する融資は絞られているというわけです。
金融機関としては、一棟投資に関する融資は積算評価が出ない物件にはしなくなり、融資するときは自己資金が1~3割程度は必要になりました。
一方で、区分マンション投資に関するローンは積極的に進めています。
区分マンションの場合は一棟投資よりも融資額が小さいため、一棟の投資物件に対する融資よりも自ずと審査ハードルは下がります。
そのため、審査を厳しくしても、審査をクリアする人が一棟投資よりも多いことが、区分マンション投資ローンが堅調である理由でしょう。
まずは、このような一連の事件によって、現在の融資状況がどのようになっているかを理解しましょう。
次に、銀行の種類を以下に分けて、それぞれの特徴を解説していきます。
ただし、たとえば中堅銀行といっても、たくさんの銀行が該当します。
そのため、以下より解説する特徴は全体的なザックリとした特徴として捉え、金融機関を大きく種別にしたときの「イメージ」として捉えておきましょう。
まず、メガバンクや大手銀行は審査が厳しいです。
大手銀行とは、「みずほ銀行」「三井住友銀行」「りそな銀行」などが該当します。
審査が厳しい理由は、法人部門への融資など色々な収益の柱があるので、属性が良く返済不安が小さい人にしか融資しなくても問題ないからです。
ただ、そもそもメガバンクや大手銀行の審査に通る人は属性が高い、金融資産があるなどの前提条件もありますので、審査に承認すれば比較的低金利で融資を受けられることが多いでしょう。
中堅銀行は、メガバンクや大手銀行よりも審査は緩い傾向にありますが、銀行によって審査基準は大きく異なるのが特徴です。
中堅銀行とは総資産が数千億円~兆単位の銀行であり、A銀行、あおぞら銀行などが中堅銀行に該当します。
中堅銀行は大手銀行と比較して、審査基準は少し緩いイメージありますが、同じ規模の中堅銀行でも大手銀行並みに審査が厳しい銀行もありますので、個別に見極めることが重要です。
地銀や信用金庫は、メガバンク・大手銀行や中堅銀行などから融資を受けることが厳しい方の受け皿になっています。
そのため、特にメガバンクや大手銀行と比べると審査が緩い点が特徴です。
ただし、地銀や信用金庫は、その金融機関が所在する近辺が融資対象になるケースが多く、エリアによって融資を利用できない場合があります。
つまり、比較的融資に対しては協力的なものの、エリアが限定されているということです。
ノンバンクとは、預金業務は行っておらず、お金を貸すことに特化している金融機関のことです。
たとえば、オリックス銀行などがノンバンクの代表格として挙げられるでしょう。
ノンバンクは、地銀や信用金庫よりも審査は緩い場合が多いですが、金利が高めというのが特徴です。
日本政策公庫とは、政府が100%出資している政策金融機関です。
そのため、利潤を求めているわけではなく、借入者を「支援」するのが主な目的になります。
日本政策金融公庫の特徴は、優遇される属性があり、融資金額・融資期間に上限があるという点です。
優遇される属性とは、女性・若者・高齢者であり、融資金額は通常は4,800万円が上限で女性・若者・高齢者なら7,200万円が上限です。
また、融資期間は一般的には10年か15年、女性・若者・高齢者は最大20年まで借入できます。
上記にて、不動産投資ローンの最新状況、そして金融機関の種類ごとの特徴などについてご理解頂けたかと思います。
次に、不動産投資で融資を受ける場合、自分で開拓するか?提携ローンを利用するか?という点を解説していきます。
まず、自分で銀行開拓した方が良い人は、属性が高い人や金融資産がある人です。
属性が高いとは以下のような人が該当します。
年収や自己資金率は金融機関によって異なりますが、とにかく金融機関から「安定した収入が継続してある」と思われる人が「属性の高い人」です。
たとえば、年収が1,500万円超えていても、会社員ではなく個人事業主で、前年の年収が400万円だと年収の変動が激しい人は属性が高いとはいえません。
次に、金融資産がある人も自分で銀行開拓した方が良いでしょう。
金融資産があるとは、言い換えると金融機関と付き合いがある人です。
たとえば、自宅近くの地銀に定期預金の口座を開設しており、すでに数千万円以上貯蓄している場合などは、その地銀でローンを組めば比較的有利な条件でローンを組んでくれるでしょう。
上記のような人は自身で銀行開拓した方が良いですが、その際は以下がポイントになります。
仮に、前項で解説した地銀との付き合いがあるような人も、複数の金融機関に当たりましょう。
というのも、金融機関によって金利などの条件が全然違うので、付き合いのある金融機関よりも有利な条件でローンを組めるかもしれないからです。
また、銀行の審査項目は、借入者の年収・自己資金率・信用情報(延滞歴)以外に、物件の担保価値・収益性も重要だと理解しておきましょう。
つまり、いくら属性が良くても、取得する物件の収益性が低いと判断されると審査は厳しくなります。
そのため、不動産投資は「事業」と見なし、物件の特徴やキャッシュフローをまとめた事業計画書をきちんと作成しましょう。
一方、不動産会社が斡旋してくれる「提携ローン」を利用した方が良い人は、あまり金融資産がない人や、提携ローンで良い条件がある人です。
まずは、あまり金融資産がない人です。
上述したような「定期預金」もそうですが、そもそも預金が少ないなど、金融機関の評価が上がるような金融資産がない場合は、銀行開拓のハードルは高いといえるでしょう。
また、そもそも不動産会社が斡旋する提携ローンの中で、金利面などで良い条件がある場合は、わざわざ銀行開拓などをしなくても良いです。
というのも、銀行開拓は自ら金融機関と交渉をするので、手間がかかります。
一方、提携ローンの場合は不動産会社が主導してくれるので、提携ローンの方が手間はかからず楽なのです。
そんな提携ローンを選ぶ時のポイントは以下です。
まずは、斡旋する不動産会社の評価が高くないと、提携している金融機関から良い条件を引き出せません。
そのため、不動産会社の今までの実績や、ほかの不動産会社と比べて提携している銀行が多いかどうかは確かめる必要があります。
また、当然ながら金利などの条件面も重要です。
それを判断するためには、複数の不動産投資会社に問い合わせしてみるといいでしょう。
不動産投資では銀行選びは重要ですが、ご自身で開拓した方がいい場合もあれば、提携ローンの方が良い場合もあるでしょう。
上述した金融機関ごとの特徴を捉えつつも、個別に金融機関の条件を探ることが重要になります。
また、複数の金融機関を比較するなどのポイントを押さえることが、自分に合った金融機関選びのポイントになります。