不動産投資の最も大きなリスクは「空室リスク」です。このリスクを回避するために「空室保証」という仕組みがあります。
空室リスクの一つの回避策ですが、空室保証には落とし穴があることに注意する必要があります。
この記事では、空室保証を検討している人に向けて、どのポイントを理解しておけば良いかを解説していきます。
不動産投資で空室保証契約をするときに知っておくべき1つ目のことは、空室保証の仕組みを知るという点です。
ここでいう空室保証とは、サブリースの空室保証のことを指します。
たとえば、区分(一室)マンション投資をする場合に、不動産会社と空室保証のサブリース契約を結んだとします。
その場合、サブリース会社は新たに賃借人を見つけてきて又貸しするという流れを取ります。
ただし、オーナーはあくまでサブリース会社と賃貸借契約を結んでいるので、又貸しできなくても(空室でも)、サブリース会社から賃料を得ることができます。
つまり、空室保証契約を結ぶことで、不動産投資における最大のリスクである「空室時の家賃収入がゼロ円になる」という事態が防げるのです。
そんな空室保証で知っておくべき以下5点を、次章より詳しく解説していきます。
不動産投資で空室保証のサブリース契約を結ぶときに知っておくべき2つ目は、入居率が高ければ損をするという点です。
この点については以下を知っておきましょう。
ここでいう「損をする」とは、空室保証契約ではなく「通常の賃貸借契約を結ぶときと比べて」という意味合いです。
空室保証のサブリース契約をしているとき、オーナーがサブリース会社から受け取る保証家賃は相場家賃の80%~90%程度まで下落します。
というのも、サブリース会社が相場通りの家賃をオーナーに支払った場合、サブリース会社は相場価格以上で貸し出す必要があるからです。
そうなると、サブリース会社は客付けに苦労するため、空室期間が長くなる可能性があります。
そのため、空室保証のサブリース契約だと、どうしても収益性が下がりやすいのです。
たとえば、家賃収入が年間144万円の区分マンション投資をしていた場合、保証家賃が85%であれば、122.4万円まで収入が下がります。
仮に、この物件が都心の人気物件であり、通常の賃貸でも「2年に1か月」のペースでしか空室にならないとします。
その場合、年間家賃収入は138万円になるので、サブリース契約をする方が収益は下がってしまうのです。
もちろん、サブリース契約には「空室時にも家賃をもらえる」というメリットはありますが、元々空室率が低い好条件の物件などは、通常の賃貸を選択する方が収益は高くなるかもしれません。
不動産投資で空室保証のサブリース契約を結ぶときに知っておくべき3つ目は、「家賃は改定される」という点について以下を知っておくことです。
まず、サブリース契約の場合、家賃はオーナーの一存では決められません。
もちろん、オーナーの意向を全く聞かないというわけではありませんが、基本はサブリース会社から保証家賃を提示されるという流れです。
また、「35年家賃保証」などの文言の本当の意味を理解することも重要です。
というのも、「35年家賃保証」という文言を見ただけでは、最初に設定した保証家賃が35年間つづくという意味にも捉えられるからです。
しかし、実際には保証家賃は見直されるので、2年周期などで家賃は下落する。
不動産は建物部分がどうしても経年劣化していくので、どうしても築年数が経過すると家賃は下がる傾向にあるのです。
前項のように、「○○年家賃保証」の意味を理解していない人が多かったので、国土交通省が「サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!」という報道発表資料を出しました。
参考:http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000180.html
その資料には以下のようなことが記載されています。
この発表資料からも、家賃は保証され続けると勘違いしていた人が多かったことが分かります。
そもそも、保証家賃は相場よりも低い金額で設定されているので、さらに家賃が下がると収益に大きな影響が出てしまいます。
そのため、サブリース契約で空室保証を選択する人は、家賃下落については十分に注意し、span class="pink_line">「家賃は下落する」という前提で長期スパンの収支シミュレーションを組む必要があるのです。
不動産投資で空室保証のサブリース契約を結ぶときに知っておくべき4つ目は、免責期間を必ず確認するという点です。
この点については以下を知っておきましょう。
免責期間とは、一定期間は家賃の支払いが免責になる期間。つまり、家賃保証と謳っているものの、家賃収入がゼロになる期間のことです。
免責期間の取り決めはサブリース会社によって異なるので、契約前に必ず確認しなければいけません。
具体的には以下のような取り決めがあります。
当然ながら、免責期間の家賃収入はゼロ円でシミュレーションする必要があります。
サブリース会社が免責期間を設ける理由は、客付けできない期間を見込んでいるからです。
たとえば、オーナーとサブリース契約を結んだ直後に入居者を募集しても、すぐには客付けできない可能性があります。
仮に、オーナーと結んでいる保証家賃が80%だったとしても、免責期間なしで客付けに1か月の期間がかかった場合、無収入の状態で保証家賃を支払っている状態になるのです。
このような事態を避けるため、サブリース会社は免責期間を設けます。
不動産投資で空室保証のサブリース契約を結ぶときに知っておくべき5つ目は、更新料や礼金の取り決めを確認するということです。
というのも、更新料や礼金の取り決めは会社によって異なり、「サブリース会社が収入として受け取る」という契約もあります。
一般的に、更新料は「新賃料の1か月分」であり、礼金は「家賃の1~2か月分」のケースが多いです。
更新料や礼金も不動産投資をする上では大事な収入源なので、取り扱いをどうするかは必ず確認しておきしょう。
不動産投資で空室保証のサブリース契約を結ぶときに知っておくべき6つ目は、原状回復費用の取り決めを確認するということです。
原状回復費用については以下の点を知っておきましょう。
原状回復費用はオーナーが負担するケースが多いです。
というのも、国土交通省のガイドラインによると、原状回復は以下のように定義づけられているからです。
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」
つまり、賃借人の故意・過失以外の経年劣化は、賃借人は原状回復する義務がないのです。
たとえば、冷蔵庫を置いていたことで壁紙が黒ずんだり、家具を置いていることで床が多少凹んだりしたとします。
その場合でも、賃借人の故意・過失によるものでなく、自然にできた黒ずみや凹みであれば、オーナーは賃借人に原状回復費用を請求できません。
参考:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
参考:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun2.pdf
このように、まずは「原状回復費用はオーナーが支払うケースが多い」と認識しておきましょう。
そして、空室保証における原状回復費用の取り決めには、以下のようなパターンがあります。
色々なプランがあるので、詳細は空室保証契約を結ぶサブリース会社に確認しましょう。
この場合には、原状回復費用はサブリース会社が負担します。
そのため、入居者が退去したとしても、オーナーが原状回復費用を請求されることはありません。
ただし、このケースの場合にはサブリース会社の負担が大きくなるので、保証家賃が低くなるケースが大半です。
一方、このケースは原状回復費用をオーナーが毎月定額積み立てておくというパターンです。
そして、賃借人が退去するときに原状回復費用がかかるのであれば、その積み立てたお金から費用を捻出します。
この場合、前項の「原状回復費用はサブリース会社の負担」よりも保証家賃は高くなり、かつ原状回復費用を積み立てていないときと比べて過度な支払いリスクも抑えられます。
ただし、毎月の「積立金」は不動産投資における支出になるので、その金額を踏まえた収支計算が必要です。
このように、空室保証といっても将来的に家賃が改定したり、免責期間があったりと、契約を結ぶ前に知っておくべきことがあります。
空室保証のサブリース契約は確かに空室リスクを防いでくれますが、物件によっては収益性が下がることにつながります。
大事なのは、上述した点をよく理解し、収益の観点からきちんと判断することです。