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不動産投資には年収いくら必要?金融機関でローンを通すコツを解説

2020/01/14
不動産投資には年収いくら必要?金融機関でローンを通すコツを解説

不動産投資は高額な資産を購入するため、金融機関からの借入で物件を購入するケースが大半です。その際、

  • そもそも年収がどのくらい必要なのか?
  • 年収が低くても不動産投資できるのか?

と疑問に思う方も多いでしょう。

この記事では、そんな悩みを解消するため、不動産投資は年収がどのくらい必要か?仮に年収が低いときは、審査に通るためにどのようなコツがあるか?を解説していきます。

不動産投資ローンの審査基準は?

不動産投資にどれだけの年収が必要かを知るには、不動産投資ローンの審査基準である以下を理解しておきましょう。

  • 借入者の年齢や雇用形態
  • 借入者の年収や自己資金率
  • 借入者の信用情報(過去の延滞歴など)
  • 不動産の収益性
  • 不動産の担保価値

というのも、年収がいくら必要か?という点は、金融機関のローン審査に通るかどうかに最も影響するからです。仮に、年収が原因でローンが組めないとなると不動産投資自体ができなくなります。そのため、まずはそもそも何を基準に審査するのか?を知っておくことが重要です。

借入者の情報

借入者の年齢は、完済時に何歳か?という点を重視します。

また、雇用形態や年収に関しては「安定して返済できるか?」について知りたいので、正社員で高年収の方が審査には通りやすいです。

ただし、高年収でも自営業者や会社経営者などは、不安定と見なされる場合もあります。そのため、一部上場の大企業に勤める会社員や公務員の方が審査には有利なケースが多いでしょう。

不動産の担保価値と収益性

不動産投資ローンを組むと、金融機関は融資する物件に担保を設定します。というのも、もし借入者が返済できなくなれば、その物件を売却して返済に充てるためです。そのため、不動産の担保価値も審査項目に入ります。

また、借入者がローン返済するときの原資は、その物件からの家賃収入を想定しています。このような背景があるので、金融機関は物件の収益性も審査するのです。そのため、たとえば高利回りでも「現状空き部屋が多い地方の築古アパート」などは、審査ハードルが高くなります。

融資を受けるときの年収の目安は?

融資を受けるときの年収の目安を、以下2つの不動産種類別に解説していきます。

  1. 区分マンション投資の場合
  2. 一棟投資物件の場合

区分マンション投資の場合

区分マンション投資とは、一棟ではなくマンションの一室を購入して、その部屋に賃借人を入居させて収益を上げる投資のことです。

区分マンション投資をする場合の年収は、目安として500万円と思っておきましょう。

一時期は「中古物件なら年収400万円」という時期もありましたが、昨今は不正融資による引き締めにより、年収400万円では厳しいケースもあります。

もちろん、物件価格や上述した審査項目によって借入可能な年収は変わりますが、一旦の目安として500万円をボーダーラインに考えるとよいでしょう。

一棟投資物件の場合

一棟投資物件とは、アパートやマンションを一棟購入し、物件の全戸に賃借人を入居させて収益を上げる投資のことです。一棟投資物件を取得するときの年収目安は700万円ほどと思っておきましょう。

①区分マンションよりも高い年収が必要?

理由は、基本的には一棟投資物件の方が区分マンションよりも高額になるので、審査のハードルは上がるからです。

また、一棟投資物件の場合は以下のようにランニングコストも高額になりがちなので、理想は年収1,000万円以上で、自己資金もある程度あった方が良いでしょう。

  • 建物全体の修繕費用
  • 室内の補修費用
  • 設備入れ替え費用

②区分マンションと一棟投資物件の違い

一棟投資物件の場合は、建物全体の修繕や管理も所有者が義務を負います。また、一戸ではなく複数戸を保有することになるので、室内の補修や設備入れ替え費用も高額になります。

これらのランニングコストを考えると、1,000万円以上の年収かつ自己資金を確保していることが理想です。

有利に融資を受けるには?

次に、有利に融資を受けるためには、以下を知っておきましょう。

  • 多くの金融機関と提携がある不動産会社を選ぶ
  • 金融資産が多く高属性な方は自分で探すのもあり?

金融機関から融資を受けるときには、年収が高い方のほうが審査に通りやすいのは事実です。

しかし、上述したように金融機関は年収以外の要素からも融資の可否を判断するため、有利に融資を受けるコツを理解しておくことが重要になります。

多くの金融機関と提携がある不動産業者を選ぶ

まず、多くの金融機関と提携している不動産業者を選ぶことが重要です。というのも、金融機関によって以下の点が異なるからです。

  • 金利が異なる
  • 借入期間が異なる
  • 審査条件が異なる

借入者が金利や借入期間、審査条件から受ける影響は大きいので、多くの金融機関に審査できるよう、提携している金融機関が多い不動産業者を選ぶことが大事です。

①金利が異なる

まず、不動産投資ローンの場合は金融機関によって金利が異なります。仮に、借入額が同じで金利が異なる場合には、ローン返済額がどのくらい変わるかを確認してみましょう。

以下は、借入金額3,000万円、借入期間25年、元利均等返済で借り入れた場合の金利別の総返済額と月々返済額になります。

金利総返済額月々返済額
1.50%35,994,148円119,980円
2.00%38,146,723円127,156円
2.50%40,375,309円134,585円
3.00%42,678,858円142,263円

このように、金利が1%違うだけで、金利1.50%と2.50%とでは総返済額で約438万円、月々返済額で約1.5万円もの差になります。

だからこそ、なるべく低い金利で借入できる金融機関を選ぶことは重要なのです。

②借入期間が異なる

一方、同じく借入金額3,000万円、元利均等返済、そして金利2.2%で不動産投資ローンを組んだときに、借入期間によって総返済額と月々返済額がどう変わるかを見ていきましょう。

借入期間総返済額月々返済額
30年41,007,600円113,910円
25年39,029,400円130,098円
20年37,109,520円154,623円
15年35,249,040円195,828円

このように、借入期間が1年違うと、15年ローンと20年ローンとでは月々返済額で4万円以上の差になります。

もちろん、借入期間が短い方が総返済額は小さくなるのですが、月々返済額が高くなる分キャッシュフローが厳しくなるのです。

借入期間も金融機関によっては「25年で希望したものの20年でしか借入できなかった」ということがあり得ます。

そのため、前項と同じく借入期間を自分の条件通りに借入できる金融機関を選ぶことが重要です。

③審査条件が異なる

また、金融機関によって審査条件は異なります。上述した審査項目自体は同じ金融機関が多いですが、たとえば返済比率(年収に対するローン返済額の割合)が低めでも審査に通る金融機関もあれば、勤務先の規模を重視する金融機関もあります。

つまり、自分が審査に通過しやすいかどうかは金融機関次第なので、複数の金融機関と提携している不動産業者がよいというわけです。

金融資産が多く高属性な方は自分で探すのもあり?

前項で解説したのは、不動産業者が提携している金融機関を斡旋してもらうパターンです。

一方、金融資産が多く高属性たとえば高年収で自己資金もあり、勤務先の規模も大きいという場合は、自分自身で金融機関を探すという方法もあります。

ただし、自分で金融機関を探すのはハードルが高いので、不動産投資の初心者は苦戦する可能性があります。仮に、自分で金融機関を探すときも、違う種類の金融機関を複数検討しましょう。

というのも、たとえば大手都市銀行は審査が厳しいものの借入できれば低金利、一方、信用金庫は審査ハードルが低いものの少々金利が高いという状況があり得るからです。

収支シミュレーションをきちんと行うことが大切

不動産投資をするときには、収支シミュレーションをきちんと行うことが重要です。そのため、以下の点は物件選びの過程で理解しておきましょう。

  • 物件運営にかかる費用を知る
  • 空室リスク、金利上昇リスクなどのリスクについて理解する

上述したように、金融機関は「不動産の収益性」も審査するため、きちんと収支シミュレーションをしておくことで、年収の低い方もローンを借り入れしやすくなります。

物件運営にかかる費用を知る

まずは、物件運営には以下の費用がかかるという点を知りましょう。

  • 不動産投資ローンの返済
  • 賃借人が退去したときの補修費用
  • 毎年かかる税金(固定資産税や都市計画税)
  • 管理会社に支払う手数料
  • 保険料(火災保険や地震保険)
  • 管理組合に支払う管理費、修繕積立金(区分所有のみ)
  • 共用部の修繕費用(一棟投資のみ)
  • 税理士への報酬(確定申告依頼時のみ)
  • その他費用(交通費など)

上述した費用は不動産会社と相談の上算出し、収支シミュレーションの「支出」として盛り込む必要があります。

空室リスク、金利上昇リスクなどのリスクについて理解する

次に、空室リスクや金利上昇リスクを理解することが重要です。というのも、空室リスクは家賃収入に大きな影響を与えますし、金利上昇リスクは支出増につながるからです。

①空室リスク

空室リスクを回避する方法は以下です。

  • エリア選定
  • 相場の確認
  • エリアの賃貸にニーズを意識

まずは、人口推移や最寄り駅の乗降客数をチェックし、ニーズがあるエリアかどうかの選定をします。

そして、「REINS Market Information」「土地総合情報システム」で物件価格の相場を調べ、さらにポータルサイトで賃貸物件の家賃相場を調べることも重要です。

そして、その物件の仕様・設備は賃貸ニーズに合っているか?という点についても、周辺物件と比較して調べておきましょう。

たとえば、セキュリティが完備されている物件が多いのであれば、比較的防犯に関するニーズが高い可能性があります。

②金利上昇リスク

不動産投資ローンの金利タイプは、以下3種類です。

  • 変動金利
  • 期間選択型固定金利
  • 全期間固定金利

変動金利とは、半年ごとに金利を見直し、5年ごとに返済額が見直される金利タイプです。

期間選択固定型とは、たとえば3年固定や5年固定などの金利タイプのことです。仮に3年固定であれば、3年間は固定金利なものの、期間満了後は再度金利プランを選びます。そして、全期間固定金利は、借入期間中ずっと金利が変わりません。

このような仕組みのため、変動金利・期間選択型固定金利の2つのタイプに関しては、将来的に金利上昇リスクがある点を加味しておきましょう

つまり、収支シミュレーションをする際は、「ローン返済額」が増額になる可能性があるということです。

ムリして不動産投資をすべきではない?

最後に、不動産投資は「身の丈に合った投資をすべき」という点を解説します。勘違いをしてしまう方が多いですが、「金融機関で借入できる金額」と「自分が返済できる金額」はイコールではありません。

上述したように、区分マンション投資をするなら、一旦の目安は年収500万円です。しかし、年収500万円といっても、以下のようにプロフィールは借入者によって異なります。

  • Aさん:既婚で子供が2人、自己資金もわずかで不安定な自営業者
  • Bさん:独身で一部上場の大企業の会社員。自己資金も潤沢
  • Cさん:既婚でダブルインカム。勤務先も一部上場で自己資金も潤沢

このようなケースだと、同じ500万円の年収でもAさんは安定性に欠け、子供がいることからも支出は多いと考えられます。

つまり、人によって家計の収支は異なるので、自分自身の家計収支を見つめ直した上で、「不動産投資をするべきか?するなら予算はいくらか?」について考える必要があります。

まとめ

不動産投資の融資を受けられる年収は、区分マンションで500万円、一棟投資物件で700万円が一旦の目安になりますが、金融機関の審査は年収だけではありません。

また、金融機関の審査以外にも、将来も踏まえた「自分の家計の収支」を加味して収支シミュレーションを行うことが大切です。

年収はあくまで目安であり、きちんと現実的な収支を考えた上で不動産投資を行いましょう。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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