新型コロナウイルスの影響で、飲食や観光業界をはじめ大きな打撃を受けています。
不動産賃貸業に関しても、賃借人が家賃やテナント料が支払えないケースが出てくる可能性があります。
また、国土交通省は不動産オーナーに対して支払い猶予など柔軟な措置を検討するように要請しているのが現状です。しかし、不動産オーナー側も決して余裕があるわけではありません。
そこでこの記事では、不動産投資をしている人に対して、コロナ滞納で知っておくべき対策などについて解説します。
まさに今コロナ滞納されている…。今後コロナ滞納されそう…。という不動産投資家はぜひ確認してみてください。
新型コロナウイルスの影響で、保有する物件のテナントから賃料の減免や猶予を要請されることは多いでしょう。
不動産オーナー側が減免や猶予を受け入れた際、オーナーは国から支援を受けられる制度があります。
この章では、その制度の内容について解説します。
まず、保険料・税の納付猶予です。
税金・社会保険料の納付が困難であれば、原則として1年間納付が猶予されます。なお、支払いが遅れることによる延滞税などのペナルティはありません。
賃料の支払い猶予・減免をすれば、不動産オーナー側も一時的に賃料収入が落ちます。
しかし、この制度を利用できれば、不動産オーナーは自身のキャッシュフローを改善させることが可能です。
次に税金の減免です。
中小事業者は自社で保有する設備・事業用建物の、2021年度の固定資産税・都市計画税をゼロまたは1/2にできます。
ゼロになるか1/2になるかは、どのくらい売上が減少したかによるので確認が必要です。いずれにしろ、税金の減免ができれば不動産オーナーの収支は改善するというメリットがあります。
次に、損害額の損失計上です。
なお、損害額の損失計上は「賃料を減免した場合」のみであり、「賃料の支払いを猶予」した場合は対象外になります。
損金の計上とは、減免した賃料を損金算入するということです。つまり、収入を減額できるため税金も減るというメリットがあります。ただ、損金計上するためには条件があるため、詳細は国土交通省のサイトよりご確認ください。
次に、家賃支払いの猶予に応じる場合の注意点を解説します。
また、法人ではなく個人も新型コロナウイルスの影響で収入が下がったり離職したりというケースも考えられるため、賃借人が家賃の支払い猶予を要請する場合もあることを想定する必要があります。
仮に支払い猶予に応じる場合は以下2点に注意しましょう。
詳しく解説していきます。
まずは、家賃猶予後の支払い計画のヒアリングです。
つまり、家賃の支払いを猶予するものの、その家賃はいつ支払われるか?という点をヒアリングするということです。
きちんとスケジュールをヒアリングしておくことで、将来的に家賃を回収できるという見込みを立てておくことができます。
実際は管理会社に賃借人への対応を任せているケースがほとんどだと思います。そのため、賃借人へのヒアリングは管理会社に依頼すると良いでしょう。
次に合意書を作成しておくことです。
賃料の支払い猶予に応じるものの、以下の点を合意書に記載して賃借人から署名・捺印をもらっておきましょう。
前項のヒアリングを基に上記のようにきちんと書面で残しておきましょう。こちらも実務は管理会社に任せて問題ありません。
次に、テナントに対して支援策を告知しましょう。
というのも、新型コロナウイルスの影響で政府も「テナント事業継続のための家賃補助」のように法人に対して支援制度を手厚くしています。
この支援制度を利用すれば、法人は賃料の支払いを猶予・減免しなくて済むかもしれません。以下より、上記支援策の概要と告知方法について解説します。
「テナント事業継続のための家賃補助」はまだ正式に決まっているわけではありませんが、この制度が実現すれば以下のようなメリットがあります。
要はビルなどを賃借しているテナントが、好条件で融資を受けられたり補助を受けられたりするということです。
仮に実現すれば手元にキャッシュが振り込まれるため、賃料の支払いができる状態になるかもしれません。
このような制度は新しく発表されたりしますので、不動産投資家であるご自身を守るという観点でも、常に情報をキャッチしておく必要があります。
前項の制度はテナントが情報をキャッチした上で、自己判断で申請してくれることが理想です。
しかし、テナントによって情報感度は異なるため、なるべく不動産オーナー側から告知した方が良いでしょう。
理想は、制度について簡単にまとめた上で、その内容を書面にして交付することです。
しかし、そこまで管理会社がしてくれないのであれば、せめてどのような制度があるか告知しましょう。
いずれにしろ、テナントへ「制度の存在」を告知することが重要です。まだ未対応であれば、すぐに管理会社へ告知しましょう。
前項は主に法人が対象でした。
そのため、この章では「個人・個人事業主・小規模事業者」が滞納しないための対策について解説します。
新型コロナウイルスの影響で個人や個人事業主、もしくは小規模事業主は以下のような制度を利用できます。
この制度を利用することで、前項と同じく経済的に厳しい場合も家賃の支払いができるようになるかもしれません。
制度の概要について以下より詳しく解説します。
住宅確保給付金とは、離職や廃業によって収入が減少した場合に支給される給付金です。
給付期間は原則3か月、支給額はエリアや家族数によって異なります。
たとえば、東京都特別区では単身者で53,700円、2人世帯で64,000円が給付金額になります。
実は住宅確保給付金はコロナ以前にもあった制度です。新型コロナウイルスの影響によって「離職・廃業していなくても収入減になった人」も対象と追加になりました。
つまり、離職や廃業していない人も支給される可能性があるため、そのお金で家賃を支払うことができます。なお、支給対象の要件についてはサイトを確認くさい。
持続化給付金とは、主にフリーランス・個人事業主を対象とした制度。
この制度は、新型コロナウイルスの影響で前年同月比より売り上げが半減した場合に、最大100万円が給付される制度です。
たとえば、2019年の3月の売上が70万円だった場合、2020年の3月の売上が35万円(半額)以下であれば給付対象となります。
この給付が受けられれば手元にキャッシュが振り込まれるため、家賃を支払えるということです。
参考:https://www.jizokuka-kyufu.jp/
雇用調整助成金とは、主に小規模事業主(概ね従業員20人以下)を対象とした制度です。
助成される額は、今までは「実際に支払った休業手当額×助成率」で計算しました。
ただコロナの影響でルールが変わったので、条件をクリアすれば全額助成されます。
要は、新型コロナウイルスの影響で店を休まざるを得なくなったときに、会社から手当をもらいやすくなるということです。
この助成金は会社側が手続きする必要があるものの、休業時も一定額の給与がもらえる可能性が高まります。それによって住居費が支払える可能性が上がるというわけです。
最後に、中小企業の代表、個人事業主が利用できる新型コロナウイルス感染症特別貸付について解説します。
新型コロナウイルス感染症特別貸付は「コロナ融資」とも呼ばれています。
この融資を受けられる対象者は、新型コロナウイルスの影響で一時的に業績が悪化していて、かつ以下どちらかに該当する人です。
なお、中長期的に業績回復が見込まれるという点も条件になっています。
条件に当てはまれば、最大6,000万円まで融資を受けることが可能です。そして、借入から3年間は「基準金利-0.9%」という金利優遇が適用になります。
つまり、コロナ融資を受けることができれば、3年間は低金利で融資を受けられるということです。詳しくは日本政策金融公庫のサイトを確認ください。
また、コロナの影響でセーフティネット保証に適用され、普通の銀行での融資も可能になりました。セーフティネット保証とは中小企業を対象に、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で保証する制度です。
こちらのセーフティネット保証の枠を利用するには、認定を受ける必要があり、法人登記をされている区役所などにて認定手続きを行ってください。
区によって事前に予約が必要だったり、準備する書類も異なったりしますので、区役所などのホームページにて確認して、手続きを進めるようにしましょう。
なお、適用要件も緩和されていますので、詳しくは問合せしてみるといいでしょう。
このように、新型コロナウイルスの影響で業績が厳しい法人や個人に対しては、色々な制度が設けられています。
新しくできた制度もあれば、従来の内容を手厚くした制度もあります。いずれにしろ、不動産投資家は制度の概要を理解しておきましょう。
その上で、賃借人やテナントへ告知するなり、コロナ滞納がなるべく起こらないように対策することが重要です。