平成16年10月1日以後に賃貸を借りたことがある方は、重要事項説明書などの説明と一緒に「賃貸住宅紛争防止条例」という書類の説明も、受けたことがある方はほとんどではないでしょうか。
賃貸物件の入居中の修繕、退去時の原状回復などにめぐるトラブルが多発していることから、国道交通省が発行した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に沿って、平成16年10月1日に東京都が「賃貸住宅紛争防止条例」を作りました。「東京ルール」とも呼ばれています。
賃貸契約を締結する際に説明を受けたものの、実際にこの書類はどんな条例なのか、賃借人の我々の何を守ってくれるのかなどについて、あまり理解をされていない方も少なくないでしょう。
そこで今回の記事ではこの「東京都紛争防止条例」について詳しく解説していきます。賃貸を借りている方はぜひ条例の内容について理解して頂き、賃貸で不利にならないよう、自分の身を守るようにしましょう。
「東京都紛争防止条例」は分かりやすく言うと、入居中の修繕、退去時の原状回復などのトラブルを防ぐため、東京都が作った条例となっています。
今まで退去時に敷金を返してもらえなかったりなどのトラブルが多発しており、契約を締結する前に借主と貸主の責任所在などを明確に決めることによって、トラブルにならないようにするのが目的です。
なお、こちらの条例は原状回復などについて、法律上の原則、判例に基づいた考え方による内容になっており、賃貸契約書の内容、敷金の精算方法を決めるものではないことを認識しておきましょう。
東京には4割近く約270万世帯が賃貸物件に入居していますが、賃貸について様々な相談が寄せられているようです。
下記のグラフを見て頂ければ分かりますが、相談する内容の割合としては
が約4割を占めており、その次は
の順番になっています。
出典:東京都住宅政策本部
つまり、退去時、入居時においてトラブルが非常に多く起きており、このようなトラブルを減らすために作られたのが「東京都紛争防止条例」です。
「東京都紛争防止条例」の適用対象は下記となります。
「東京都紛争防止条例」の名前の通り、東京都内にある居住用の賃貸住宅が対象となります。
テナント、事務所など事業用の賃貸契約は対象外となります。
「東京都紛争防止条例」は平成16年10月1日以後、新規で賃貸契約を締結される場合が対象となり、契約の更新は対象外となっています。
個人間の契約は「東京都紛争防止条例」に適用せず、宅地建物取引業者が「媒介」または「代理」にて契約が締結された場合が該当します。
なお、東京都の宅地建物取引業者でなくても、東京都内にある物件を媒介などする場合は、説明をする義務付けされています。例えば、神奈川県の宅地建物取引業者に媒介を依頼して、東京都内の物件を借りることになった場合は、依頼した宅地建物取引業者から「東京都紛争防止条例」の説明を受けることになります。
宅建業法の決めにより、賃貸を借りる個人のお客さんの場合は、宅地建物取引業者は賃貸契約を締結する前に、重要事項説明書の説明と併せて、「東京都紛争防止条例」の書面を交付し説明する必要があります。
なお、宅地建物取引業者が賃貸を借りる場合は、書面の交付のみで特に説明する必要はありません。
「東京都紛争防止条例」について説明する内容としては、下記となります。
では、それぞれについて見てみましょう。
こちらの条文では、退去時の原状回復についての考え方を述べています。
例えば、日照などによるクロスの変色、冷蔵庫の背面の電気ヤケなど、経年変化及び通常の使用による損耗などは賃貸人の負担になります。
一方、引っ越しなどで生じたキズ、賃借人の故意・過失、通常の使用による損耗を修復するにかかった費用は、賃借人の負担になります。
つまり、通常の使用をしただけで特にキズなど修復する箇所がない場合は、退去時に賃借人はクリーニング代のみを負担することになります。
入居中に部屋にあるエアコン、給湯器などの設備が不具合により修理が必要な場合は、その費用は賃貸人の負担になります。
一方、酔っ払って窓を割ってしまったなど、入居者の故意・過失などにより壊れた場合は、賃借人の費用負担となります。
上記のように通常の負担内容の他に、特約などを決めることもできます。
例えば、入居中に電球、蛍光灯など小さな備品の交換をする際は、賃借人の負担となるなどが挙げられます。
共有部分、専用部分の設備などの修繕及び維持管理などに関する連絡先が記載されています。
「東京都紛争防止条例」の詳細については、「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書(モデル)」よりご確認ください。
今回は「東京都紛争防止条例」について書きましたが、参考になりましたでしょうか。
賃貸にて部屋を借りる際にトラブルにならないよう、自分を守るためにも、ぜひ条例の内容について理解しておきましょう。