不動産オーナーにとって立地はとても重要な要素です。
立地が悪ければどんな素晴らしい建物を建てても借主を見つけることは難しく、収益をあげることができません。また、土地は良い・悪いで単純に評価できるものではなく、その土地にあっているかどうかも重要です。
政府はその土地にあっている建物で街を構成するために、土地には「用途地域」というものが定められています。
不動産投資をするうえで、用途地域について知る事はとても重要なため、当記事では用途地域の概要や全13種類の用途地域について解説します。
用途地域は何のために定められて、どのように分類されているのでしょうか。
まずはその概要をみて行きましょう。
用途地域はなぜ定められるようになったのでしょうか。
その理由は人々が暮らすうえで、ある程度同じエリアには同じような目的のものがあった方が都合がよいということがあげられます。
その理由の代表的な一つが日当たりの問題です。低層な住居の横に高いビルが建つと低層の住居には日差しが全く当たらなくなってしまいます。また、建物の高さがデコボコになってしまうことで景観も損なうこととなります。
また、騒音の問題もあります。閑静な住宅街に賑やかな商業ビルが建ってしまうと周辺の住民は騒音で穏やかに暮らすことができなくなってしまいます。
このようにある程度建てられる建物を定めておいた方が、人々が暮らすうえで都合が良いため、用途地域が定められているのです。
用途地域は大きくわけて住居系・商業系・工業系の3種類に分類されています。
この3つの分類の中から住居系地域は8種類、商業系地域は2種類、工業系地域は3種類と更に細かく分かれる形となっています。
土地を購入する時は用途地域を知る事が大事なので、まずは住居系・商業系・工業系のどの分類の土地であるかを見極めることが重要です。
ただし、住居系だから住居しか全く建てられないかというとそうではありません。住居系地域の中にも商業施設や工場を建てられる用途地域もあります。
本来の土地の特性を活かすために住居のみの地域や住居や商業施設・工場等を組み合わせながら街を創っていく地域があるのです。
用地地域は基本販売図面に記載されています。
または市や区のホームページで住所を入力するなどして検索できます。ただし、一部自治体ではホームページが整備されていない場合がありますので、その場合は市や区に問い合わせてみるとよいでしょう。
住居系地域は2019年4月に田園住居地域が追加され、最も多い8種類に分類されています。
住居系の地域について細かく確認していきましょう。
第1種低層住居地域は低層住宅の環境を守ることを最優先とする地域です。
建物の高さ制限は10mまたは12mとなりますので、高い建物を建てることができません。また、店舗や飲食店を建てることができませんので、買い物等には不便ですが、その分閑静な住宅街を守ることができます。
なお、第1種低層住居専用地域には診療所は建てることができますが、病院を建てることはできません。閑静な戸建て住宅が並ぶ住宅街をイメージすると良いでしょう。
第2種低層住宅専用地域も第1種低層住居専用地域と同じく10mまたは12mの高さ制限があるため、高い建物を建てる事はできません。
第1種低層住居専用地域との違いは150㎡までの小規模のスーパーやコンビニ、飲食店等の店舗を建てることができるという点です。
そのため、閑静な住宅を守りながらも、第1種低層住居専用地域よりも生活にも便利な住宅街を守ることを目的としています。
第1種中高層住居専用地域はマンション等の中高層住宅の住環境を守ることを優先する地域です。
飲食店やスーパーに加え、病院や大学・高等学校等の教育施設も建てることが可能。ただし、住居専用地域となっているため、オフィスビルを建てることはできません。
第1種中高層住居専用地域には高さ制限がありませんが、容積率の制限があるため、いくらでも高い建物を建てられると言う訳ではありません。
第2種中高層住居専用地域は第1種中高層住居専用地域に加え、2階建て以下で1,500㎡までの大型の飲食店や店舗やオフィスビル等の事務所も建てることができます。
そのため、第1種中高層住居専用地域よりも幅広い物件を建築することが可能。
また、第1種中高層住居専用地域と同じく高さ制限はありませんので、容積率の限度まで建物を建築することが可能です。
第1種住居地域は住居の環境を保護するための地域ですが、低層住居専用地域や中高層住居専用地域よりも各種店舗等の建築が緩和されています。
第1種、第2種中高層住居専用地域と同じく建物の高さ制限はありませんので、容積率の限度まで建物を建てることが可能です。
3,000㎡までの店舗や事務所に加え、ホテル等の宿泊施設も建てることができます。
一方で住環境を保護するための地域となっていますので、カラオケボックス等、騒音被害が予想されるものは建築できません。
第2種住居地域は住環境を保護するための地域ではあるものの、周囲の環境に配慮することでカラオケボックスやパチンコ店等も建築することが可能です。
そのため、かなり建築できる建物の種類が多い用途地域です。
準住居地域は自動車道の沿線としての立地を活かすために自動車修理工場や車庫の建築も認められています。
住居系の地域の中では建築できる建物の種類が最も多い地域です。
住居地域でありながら、幹線道路の利便性を活かすことも目的とされており、他の住居地域よりもあらゆる面で制限が緩和されている地域です。
用途地域は5年に1度見直しがされ、必要に応じて追加される場合があります。
田園住居地域は2019年4月に新設された新しい用途地域です。田園住居地域は農業と調和した低層住宅の環境を守ることを目的としており、第1種低層住居専用地域と近い制限が課されています。
次に商業系地域についてくわしくみて行きましょう。
商業系地域は2種類あります。
近隣商業地域は近隣の住宅地の買い物等の場所を提供することが目的とされています。
近隣商業地域の周辺には必ず住居系の用途地域があり、近隣商業地域内に住宅を建てることも可能です。
近隣商業地域は10,000㎡までの店舗や飲食店等を建てることが可能です。ただし、近隣商業地域はあくまで周辺の住居地域へ買い物の場を提供することが目的となっているため、ターミナル駅にあるようなオフィスビルや百貨店が立ち並ぶという地域ではありません。
また、近隣商業地域の目的は近隣住民の生活を守ることを重視しているため、キャバレーやナイトクラブの建築は認められていません。
近隣商業地域は商業地域でありながら周辺の住居地域を守る目的があるということは認識しておいた方がよいでしょう。
商業地域は商業の利便性を重視して開発していく地域です。
オフィスビルや飲食店等賑やかな街。また、近隣商業地域では建築できないキャバレーやナイトクラブ等の建築も可能です。
商業地域は住居系の地域よりも土地の価格が高くなるため、一戸建てが建てられることはほとんどありません。
住居を建てることも可能ですが、土地の値段が高いため、高層のタワーマンション等が建築されることの多い地域です。
ここまで住居系地域と商業系地域について確認してきました。
最後に工業系地域の3つの分類について確認しておきましょう。
準工業地域は主として環境悪化の恐れが少ない小規模な工業の利便性を確保するための地域です。
工場の規模については制限がありませんが、住宅や店舗が周辺に立ち並ぶことも多いため、騒音や火災、健康上の危険がある建築物については建てることができません。
工業系地域に分類されていますが、マンション等が立ち並ぶことも多く利用用途の幅が広い地域です。
工業地域は主に工業の利便性を重視する地域です。
住宅や店舗等も建てることができますが、公害が発生する可能性が高い工場も建築できるため、どんな工場でも建てることが可能です。
一方で工業地域には、あまり住宅が建てられることはありません。工場の跡地等で、大規模な住宅が建てられることもありますが、環境には配慮する必要があります。また、病院やホテル等の宿泊施設は建築できません。
工業業務の利便性を図るため、工場等の工業用建築物専用の地域です。
住宅や店舗などは周辺住民等に配慮する必要があることから、工業用地としての利用を妨げる恐れがあるため、住宅などは建築が禁じられています。
不動産はその名の通り動かない財産です。
そのため、同じ建物であっても、どこにあるのかによって不動産の価値は大きく変わります。
不動産は人が多く集まる場所の方が高い値段がつくことが多く、地方よりも大都市の方が価格は高くなり、大都市の中でもターミナル駅は更に価格が高くなります。
人が集まるということと、もう一つ重要となるのが「その土地にあっているかどうか」です。土地にはその土地の特性があります。住居中心の地域もあれば工場中心の地域もあります。
建物をその土地の特性から大きく逸脱しないために設けられているのが用途地域です。
用途地域で建物の利用を制限しているからこそ、様々な建物を建てながらも街の特性を残すことができるのです。