不動産投資における収益物件を選定する際に、建物構造を確認することは非常に大切な要素になります。なぜなら、収益物件の建物構造に応じて、銀行からの融資期間やご自身にとって適切な投資方法が異なるからです。
投資者が建物構造と不動産投資の関係を把握しきれていないと、キャッシュフローで思ったような利益があげられず、予想に反した損失を負いかねません。
本記事では、不動産投資におけるリスクを避けるべく、建物構造の特徴をメリットとデメリットを交えて解説していきます。
不動産投資における建物構造としては
の3種類が代表と言えます。
この章では、それぞれの建物構造の特徴や工法についてみていきます。
木造は柱や梁など、建物の主要部分に木材を使用している建物構造のことです。
アパートや戸建てなどは主に木造の建物構造になっています。
鉄筋コンクリート造はRC造ともいわれており、複数の太い針金を編んで組み上げられた鉄骨の型枠に、コンクリートを流して固めて造られる建物構造のことです。屈強な構造なので、低層から高層まで幅広い建築物に利用されています。
鉄骨造はS造ともいわれており、主な構造部に鋼材を入れて作られる建物構造のことをいいます。鉄骨造は木造よりも強く、鉄筋コンクリート造よりも軽量なので、階数の多い建築物や面積の広い建物などでよく用いられる工法です。また、鉄骨造には、「重量鉄骨造」と「軽量鉄骨造」の2種類があります。
重量鉄骨造は、鉄骨の厚さが4〜6mm以上ある建物構造です。重量鉄骨造は、階段数の多いマンションや大型の建物を建設する際に使われています。
軽量鉄骨造は、鉄骨の厚さが4mm未満の建物構造です。軽量鉄骨造は、階段数の少ないアパートや小規模のマンションなどでよく用いられます。
この章では、不動産投資における建物構造のメリットとデメリットについて解説していきます。では、それぞれみていきましょう。
不動産投資における収益物件の観点からみた、木造のメリットとデメリットは次のとおりです。
木造には「建築費用が安い」という不動産投資上のメリットがあります。木造はコンクリート造や鋼材などより費用を要さないため、投資コストを抑えながら利回りの高い運用が可能です。
また、木造は「改修のハードルが低い」という不動産投資上のメリットもあります。木造の建物構造は木材で組み立てられるため、コンクリートや鋼材を用いた工法より簡単に改修ができ、工期も短く抑えることが可能です。
不動産投資における木造のデメリットは「遮音性が低い」という点です。木造は建物構造の中でも最も音が伝わりやすいと言われています。木造の「音の問題」がネックとなり、アパートの入居希望者から敬遠されるケースは多く、そのリスクを回避するために壁の間に防音材を詰めて対処することもあるほどです。
また、木造は「耐火性が低い」というデメリットもあります。木造は木材を用いて建築しているため、鋼材やコンクリートを用いた工法より燃えやすい傾向にあります。したがって木造の建物構造は、外壁や屋根などに不燃材料や純不燃材料を用いたり、窓に網入りガラスを使用したりして、火災リスクの低減を図ることが可能です。
そして、木造の「賃料が低い」という点も、不動産投資においてデメリットとなります。木造は他の建物構造と比べて単身者向けの物件が多く、部屋の面積が狭いので家賃は比較的安価であり、築年数に応じた入居希望者の下落率も高めなので、新築時の収支だけでなく長期的な観点から賃料水準を確認することが大切です。
加えて「耐用年数が短い」という点も、不動産投資でローンを組む際に不利となる場合があります。木造の耐用年数は22年と他の建物構造と比較して短い傾向にあり、とくに木造の中古物件を購入して不動産投資をおこなう際には、銀行からの融資期間が取りにくい点にも注意が必要です。
続きまして不動産投資における収益物件の観点からみた、鉄筋コンクリート造のメリットとデメリットは次のようになります。
不動産投資における鉄筋コンクリート造のメリットは「遮音性が高い」という点です。鉄筋コンクリート造は、コンクリートで覆われており音が響きにくく、騒音トラブルの可能性が低いため、入居希望者に人気があります。
また、「耐火性が高い」という点も鉄筋コンクリート造のメリットです。コンクリートは木材に比べて燃えにくい材質であるため、住居に使用した場合も強い耐火性が期待できます。他の部屋への燃え広がりや、隣家への燃え移りなども防ぐことが可能で、出火してもその部屋の中で鎮火できるケースがほとんどです。
そのほか鉄筋コンクリート造はコンクリートだけでなく鋼材も使われているので、「地震の揺れに強い」という利点があり、鋼材とコンクリート両方の素材の強みを活かした耐久性の高い建物の建築が可能です。
加えて、鉄筋コンクリート造には「耐用年数が長い」というメリットがあります。鉄筋コンクリート造の耐用年数は47年あり、投資者の状況に応じて融資期間を長く取ることも可能です。
不動産投資における鉄筋コンクリート造のデメリットは「建築費用が高い」という点です。鉄筋コンクリートは、耐震性に優れた頑丈な構造であるため、それだけ建築構造におけるコストを要します。一方で、鉄筋コンクリート造の建築物には資産価値が高くなるという一面もあり、収益物件としてみた場合は運用収支とのバランスが重要と言えるでしょう。
また、「改修費用が高い」のもデメリットと言えます。鉄筋コンクリート造は壁面がコンクリートで囲まれているため、間取りや戸数の変更が難しく、改修ができたとしてもコストがかかる点に注意が必要です。加えて、コンクリートや鉄筋を用いた工法なので、建築工事だけでなく、解体の費用も木造に比べてかかります。
最後に不動産投資における収益物件の観点からみた、鉄骨造のメリットとデメリットは次のようになります。鉄骨造を重量鉄骨造と軽量鉄骨造に分類して、それぞれみていきましょう。
不動産投資における量鉄骨造の一つ目のメリットとしては、「耐震性が高い」点が挙げられます。重量鉄骨の建物構造は強い地震の揺れが生じても、振動をしなるように吸収するため、倒壊や破損が起こりにくい性質となっています。大地震の後の余震は何年にもわたって生じる傾向にありますが、重量鉄骨は繰り返しの揺れにも耐えられる建物構造です。
また、重量鉄骨造には「耐用年数が長い」というメリットがあります。重量鉄骨の耐用年数は34年と、鉄筋コンクリート造の建物構造よりも短めですが、木造よりも長いので、融資期間を設定するうえで有利にはたらくケースもあるようです。
また軽量鉄骨造は、鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造と比べると材料費が安いため、「建築費用が安く抑えられる」というメリットがあります。
不動産投資における重量鉄骨のデメリットは「建築費用が高い」という点です。鉄筋コンクリート造ほどのコストはかからないとは言え、木造や軽量鉄骨造と比較すると鋼材の使用量が多くなるため、その分建築費用が高くなります。
また、軽量鉄骨造は木造と同じく「音漏れがしやすい」という短所があり、収益物件の状態によっては、防音性を高めるために壁の間に防音材を敷き詰めることが必要です。
一方、軽量鉄骨造には「耐用年数が短い」というデメリットもあります。軽量鉄骨でアパートを建築する場合は3mm内の厚さの鉄骨を用いることが多く、耐用年数は19年と木造よりも短めです。軽量鉄骨造の建築物は新築時には融資期間を25年と長期間取れるケースもありますが、中古物件を購入する場合は融資期間を取りにくくなる可能性がある点にご注意ください。
収益物件の建築構造は融資条件や物件規模によって変わるため、不動産投資の目的に合った収益物件を選択することで、適切な不動産投資が可能です。
たとえば「木造」への不動産投資の場合は「自己資金が少ない人」や、「税金対策を考えている人」に適しています。なぜなら、木造は物件価格が安く、耐用年数が短いという特性があるからです。ただし、木造物件を購入して不動産投資をおこなう場合は、新築か築浅の収益物件選択し、耐用年数や投資運用の収支バランスに注意しましょう。
また、「融資を活用してキャッシュフローを得たい人」や「都心部にある駅近の収益物件で不動産投資を検討している人」には、「鉄筋コンクリート造」が適しています。なぜなら鉄筋コンクリート造は耐用年数が長いため、不動産投資において融資期間が取りやすく、都市銀行で融資が付きやすい傾向にあるからです。
今回は、「不動産投資における建物構造の特徴とメリット・デメリット」についてみてきました。本記事の要点は、次のとおりです。
建物構造の特徴について理解することで、ご自身の目的にあった不動産投資運用が実現します。今回ご紹介した建物構造の特徴を、ぜひご参考になさってください。