「不動産投資は住民税の節税ができるの?」
不動産投資の節税について疑問を持たれている方は多いでしょう。
本記事では、住民税の仕組みや不動産投資で住民税を節税する上で知っておきたい3つのポイントなどを紹介しています。
この記事を読むことで、住民税の節税仕組みへの理解を深めることができ、節税効果を高めることができます。ぜひご覧ください。
不動産投資で得た所得には所得税や住民税が課税されます。
まずは税率や計算方法、仕組みなど住民税の基本的知識について見ていきましょう。
住民税の税率と計算方法は次のとおりです。
所得割は前年所得額に応じて計算します。
都道府県民税は「課税所得×4%」、市区町村税は「課税所得×6%」で算出することができます。
均等割は一定以上の所得のある方に定められた額で一律に課税されます。
自治体によって異なり、例えば板橋区の場合は5,000円。
例えば、夫婦2人+子ども2人で前年給与収入が500万円(所得345万円)、基礎控除や生命保険料控除などの合計所得控除が150万円だとした場合、住民税の計算は以下のようになります。
※ここではわかりやすい数字にしています。
「所得金額345万円−控除150万円=課税所得195万円」
■所得割
・都道府県民税:195万円×6%=117,000円
・市区町村税:195万円×4%=78,000円
※調整控除額が都道府県民税1,500円、市区町村税6,000円
上記より、都道府県民税は「117,000円−1,500円=115,500円」、「市区町村税は78,000円−6,000円=72,000円」となり、合計187,500円です。
均等割が5,000円とした場合、住民税額は192,500円(187,500円+5,000円)となります。
1年間の所得に対してその年に課税される所得税とは異なり、住民税は前年1月1日〜12月31日までの所得に対して翌年度に課税されます。
つまり、住民税の額は前年度の所得を基準に計算されます。
賃料収入など不動産投資で得た不動産所得は総合課税になります。
総合課税とは、給与所得など他の所得と合算した所得をもとに税額が算出される課税方式のことです。
したがって、不動産所得のみに住民税が課税されるのではなく「不動産所得+給与所得等」の合算した課税所得によって、住民税額が決まります。
では、不動産投資は住民税を節税できるのでしょうか。
結論から申し上げますと、節税することができます。下記にて節税のために押さえておきたいポイント3つをご紹介します。
ぜひ覚えていただき、少しでも税負担を軽減させましょう。
(1)損益通算にて節税する方法
(2)減価償却期間が長い不動産を購入する
(3)経費をしっかり把握し計算漏れのないようにする
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
まずは、損益通算で節税する方法について紹介します。
損益通算とは、赤字の所得を他の所得から差し引く仕組みです。
たとえば、不動産所得が200万円の赤字で他の所得が500万円の場合、損益通算をすることで所得が300万円になります。
このように、損益通算で課税所得を減らせるため節税になります。
もし、赤字が大きく損益通算後の所得がマイナスになる場合は、損失分を最長3年間繰り越して控除(繰越控除)することが可能です。
不動産所得や事業所得、譲渡所得、山林所得が、損益通算できる所得になります。
つまり、株式、FXなどの金融商品はこのように損益通算することができないので、これは不動産投資ならではのメリットと言えます。
不動産所得は「収入−経費」で計算することができ、不動産経営に関連する経費であれば計上することができ、また建物や設備は経年で実質の出費はない費用として、減価償却費という費用を経費として計上することができます。
なお、不動産投資で経費として認められる費用は以下のとおりです。
など。特に減価償却費は、大きな費用となり節税効果が高いです。
不動産所得がマイナスになれば、損益通算によって課税所得が抑えられ、節税することが可能です。
たとえば、年間の賃料収入が150万円、管理費や固定資産税、減価償却費などの年間経費が200万円の場合、不動産所得はマイナス50万円になります。
給与所得が500万円の場合、損益通算により所得は300万円です。
本来500万円の収入に対して課税された所得税などの税金は、確定申告することによって450万円に対して課税となり、払いすぎた税金の還付を受けることができます。
このように、損益通算により課税所得が少なくなることで節税ができます。
減価償却期間が長い不動産であればあるほど、長期にわたる節税効果が期待できます。
減価償却の仕組みや計算方法についても押さえておきましょう。
減価償却とは、不動産や車など固定資産の購入金額を購入年に一括計上するのではなく、長期にわたり分割して計上する仕組みのことです。
分割する期間は法定耐用年数と言われ、以下のように建物の構造で決まっています。
減価償却には、毎年一定額を減価償却費として計上する「定額法」と、初年度が大きくその後は一定の償却率を掛ける「定率法」があります。
建物の償却法は定額法で計算することが、税制上で定められています。
減価償却費は「取得価額×償却率」で計算できます。
償却率については、国税庁のホームページに掲載されています。
構造・法定耐用年数別の償却率は以下のとおりです。
そのため、鉄筋コンクリート造の新築マンションを5,000万円で購入した場合は「5,000万円×0.022=減価償却費110万円」となります。
なお、中古物件の場合は以下の計算方法で耐用年数を算出できます。
■耐用年数の一部を経過している場合
(新築時の法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%
■すでに耐用年数を経過している場合
新築時の法定耐用年数×20%
例えば、鉄筋コンクリート造の中古マンションで築10年経過している場合の耐用年数は次のとおりです。
住民税を節税するためにも、経費を把握して計算漏れがないようにしてください。経費が増えれば、所得は下がり節税できるためです。
不動産投資で計上できる経費を覚えておきましょう。
不動産投資で計上できる経費は、次のとおりです。
など、修繕費は原状回復するためにかかった費用が対象となり、機能価値向上を目的とした工事費用は対象となりません。
また、ローン元本は経費対象になりませんが、ローン金利は経費として計上ができます。
業者との打ち合わせで使った飲食代や交通費、情報収集のための書籍代などは、接待交際費や新聞図書費で計上可能です。
確定申告をする際は、対象でない費用を計上しないようにしてください。
対象外の費用を計上していると、税務署の調査が入る可能性があります。意図的なものだとペナルティが課され、税負担が重くなります。
節税したい気持ちはわかりますが、ルールは必ず守るようにしましょう。
最後に、不動産投資で住民税を節税するための3つの注意点を紹介します。会社員の方は、これらの注意点を押さえておきましょう。
一般的に、サラリーマンの住民税は特別徴収です。
特別徴収は、会社が給与から税金を差し引き、本人の代わりに納付する方法です。
そのため、サラリーマンの住民税額は会社が把握をしていることを認識しておきましょう。
不動産所得が赤字の場合は、住民税の払いすぎが発生する可能性があります。
もし住民税を払いすぎていた場合は、市区町村から「過誤納通知書」が送られてきます。
そして、過誤納通知書に同封されている振込先口座を記入して提出をすることで還付を受けることができます。
住民税が減額されることで、会社に「何か事業をやっているのでは?」と疑問を持たれる可能性がありますので注意してください。
副業禁止なのかどうか、会社の規則を事前に確認するようにしましょう。
不動産所得が黒字の場合、総所得が上がるので税金が高くなります。
会社側からすれば「税金が上がっている、なにか事業を行っているのでは?」と疑問を持たれます。
税金が増える場合は特別徴収ではなく、自分で納付する普通徴収を選択しましょう。普通徴収を選択すれば、会社に住民税の通知がありません。
本記事では、不動産投資で住民税を節税する上で知っておきたい3つのポイントを紹介しました。
不動産投資は減価償却費を活用することによって、実質上の黒字でも損益通算によって住民税を節税することが可能です。
ただし「住民税が節税できる」という理由だけで始めるのではなく、不動産投資のメリット・デメリットなどを把握した上で判断するようにしましょう。