不動産投資において、ローンを組んだ際の金利はつきものです。
金利の種類は大きく固定と変動があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
ご自身の属性や、金利に対する考え方によって選び方が異なります。金利の決定方法について、分かっているのとそうでないとでは、後々非常に大きな差となります。
こちらの記事で、金利についての知識を深め、投資を有利に進めましょう。
契約した時点から、金利が一定になっているものになります。
固定金利には、2つの種類があります。
借りてから返済終了まで金利が全く変わりません。
5年や10年という期間を選択し、その期間内は固定金利で期間終了後に固定金利を継続するか、変動金利に切り替えるかを選ぶことができます。
著者作成
変動金利は返済している途中の段階で、市場金利と連動し金利が見直されるものです。
一般的には、1年に2度のペースで金利の見直し、5年に1度のペースで返済額が見直されることになっています。
例えば、借り入れてから2年後に金利が上昇しても毎月の返済額は変更ありません。
しかし、返済額に占める利息が金利の上昇分だけ上がってしまうので、毎月の元金の返済額が減少してしまいます。
もしも、金利が上昇したままの場合、5年後の返済額の見直しの際に、ローンの残高が当初の予定より多くなってしまい、毎月の返済額が増加してしまいます。
逆に金利が下落すると毎月の返済額が減少することになります。
現在の状態においては、固定金利に比べて変動金利の方が低いので、変動金利の方がお得にみえるでしょう。
しかし、日本銀行が決定する「政策金利」によっては、変動金利が固定金利を上回る可能性がないわけではありません。
変動金利は、「いつ上がってしまうのか」が分からないのが難点でもあります。
固定金利と変動金利のメリットとデメリットは、下記一覧表にまとめてみましたので、ぜひ参照にしてみてください。
メリット | デメリット(リスク) | |
---|---|---|
固定金利 | ・金利が上がってしまっても、返済額は変化しない ・金利が変わらないので、返済計画が立てやすい | ・変動金利に比べて金利が高い ・今の状態(低金利)が続くと、変動金利を比べて、返済額が多くなってしまう |
変動金利 | ・固定金利に比べて金利が低い ・今の状態(低金利)であれば、返済額が少なくて済む | ・金利が上昇すると、返済金額も同時に増えてしまう ・金利が変動するので、返済計画が立てづらい |
著者作成
では、金利はどのように決まるのでしょうか。
固定金利は、10年物国債利回りが基準となって決定します。
10年物国債は、国の運営のために必要な資金を調達するために発行している債券です。
満期は10年となっています。
金利が決まっていく過程には、景気動向が大きく関わってきます。
景気動向が好調の時には、物価が上昇していきます。
金融政策の引き締めによって、国債の価格が下落させ利回りを上昇させます。
こうして、金利も連動してあがっていく形となるのです。
景気動向が不調の時は、その逆です。
金融政策の緩和によって、国債の価格を上昇させて利回りを下落させます。
そうすると、金利も連動して下落する形となるのです。
変動金利は、各金融機関で決定する「短期プライムレート」に連動します。
短期プライムレートとは、金融機関が企業などに1年以内でお金を貸す際の金利のうち、最も優遇された金利のことを指します。
これが、市中金利(市中の金融機関がお金を貸し借りする際の金利)に連動します。
この市中金利は、「無担保コール翌日物」の影響を受けます。
「無担保コール翌日物」を日銀が「政策金利」としていて、日銀自体がそれに介入して操作できるようになっているのです。
つまり、変動金利は日銀の「政策金利」が基準となって決定することになります。
この政策金利は、景気動向が好調時には引き上げられ、不調時には引き下げられる傾向にあります。
一般的には、政策金利が上昇すれば変動金利も連動して上昇し、政策金利が下落すれば変動金利もそれに連動して下落します。
変動金利は、マイナス金利政策の影響もあり、2020年8月現在で変動金利は0.3%台~0.5%台で推移しています。
不動産投資をする時は、固定金利と変動金利のどちらを選ぶとよいのでしょうか。
不動産投資では、ローン期間が短いという方はそれほどいないようです。
多くの方が20年・30年・35年という長期のスパンでローンを組まれています。
この20年後や30年後の変動金利がどうなっているかは、誰にも予想ができませんので、「どちらのほうがいい」ということを断言することは難しいです。
投資用不動産を数年程度で売却を検討しているのであれば、現在の金利が低い変動金利を選択することをオススメします。
現在よりも低い金利(0.3%~0.5%)で固定金利を組むことは、恐らくできないと考えるからです。
2020年8月現在、マイナス金利政策の影響もあり、低金利が続いています。
また、新型コロナウイルスの影響で、経済が停滞してしまうことを回避するために、日銀はさらなる金融緩和に踏み切ってきます。
新型コロナウイルスは、収束の目途が立っておらず、この問題は長期化することが予想されます。
よって、金融緩和が長期継続する可能性が高いことを鑑みると、金利の低い変動金利を選択しておいた方が有利かもしれません。
金利は、今後も景気動向次第で変化していきます。
新型コロナウイルスが収束して、景気が回復していけば金利も上昇していきます。
逆に、さらにウイルスが猛威を振るい景気が低迷するようなことがあれば、今以上に金利が下落する可能性もあります。
ただ、現在の低金利はしばらく継続するでしょう。
なぜなら、日銀の黒田総裁が、2020年6月に行われた「金融政策決定会合」の記者会見において、「金融緩和は長期戦覚悟」とか、「国内景気は、極めて厳しい状態で、必要に応じてさらなる追加緩和も考える」と述べているからです。
さらに、今後の利上げは「2021年度、22年度でも遠い」として、自身の任期である23年春までのマイナス金利脱却は厳しいとまで言っています。
金融緩和が続き、政策金利が下がったままだと、前述の通り変動金利も上昇していきません。
また、金融緩和では、長期国債を購入して長期金利の上昇を抑制します。
よって、長期金利の影響をうける固定金利も上昇していかないことになります。
また、日銀は目標として「物価上昇率2%」を掲げて金融緩和を実施しています。
しかし、2020年7月に発表された資料では、下記の表の通り、2022年になっても目標の2%は達成できない見込みになっています。
見込みでは0.5%~0.8%としており、1%にすら届かないという状況です。
この目標が達成されない限りにおいては、金融緩和は継続されるのではないでしょうか。
実質GDP | 物価上昇率 (除く生鮮食品) | |
---|---|---|
2020年度 | ▲5.7%~▲4.5% | ▲0.6%~▲0.4% |
2021年度 | +3.0%~+4.0% | +0.2%~+0.5% |
2022年度 | +1.3%~+1.6% | +0.5%~+0.8% |
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2007b.pdf
下のグラフは、2015年からの物価上昇率の推移グラフです。
2015年2016年はマイナス圏を低空飛行、2017年にマイナス圏を脱出したものの、過去5年間で1%台を超えたことがないことがお分かりいただけると思います。
さて、目標の2%を超えるのはいつになるでしょうか。
出典:日本銀行
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2007a.pdf
金利に関しての理解を深めることは、不動産投資で成功するために不可欠です。
不動産投資は、金融機関からの借り入れでローン返済を行っていくため、ローンの組み方がとても大切になります。
金利は、複雑かつ常に変化するものです。
損をしないためにも、日銀から出る情報に敏感になりましょう。
金利について、イマイチ分からず、どうしたらよいか分からない方は、金利や投資用不動産に詳しい方と縁をつないでおき、いつでも相談ができる環境を作っておくと良いでしょう。