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袋地(ふくろち)とは?囲繞地(いにょうち)との違いや活用方法について

2021/05/14
袋地(ふくろち)とは?囲繞地(いにょうち)との違いや活用方法について

袋地は、道路に接していない、かつ周囲自身が所有していない土地に囲まれている土地のことを指します。

生活するのに困ってしまうため、周囲の土地を通行して道路に出る権利が民法によって認められてはいます。しかし、再建築不可であったり、日当たりが悪かったりするため、売りたくてもなかなか売れないという方も多くいらっしゃいます。

このような土地の活用には、どういった方法があるのでしょうか。また、購入にあたってはどのようなことに留意すればよいのでしょうか。こちらの記事では、囲繞地との違いも含めて徹底解説していきます。

袋地とは?

道路に接していない、かつ周囲自身が所有していない土地に囲まれている土地のことを指します。公道に出る道もないことから、無道路地とも言われています。

下記の図で袋地の場所をご確認ください。 

上の図からわかるように、他の方が所有している土地を通らなければ、公道にすら出ることができません。ちなみに、他の方の土地を通行することが民法によって決められています。

また、「都市計画区域」や「準都市計画区域」においては、建築基準法の中にある「接道義務」を満たしていないため、袋地に現在建てられているものを一度取り壊してしまうと、再び建物を建てることができません。

接道義務は、4m以上の建築基準法上の道路に対して、自身の所有している土地が2m以上接していなければならないというものです。つまり、間口が2mに満たない土地や、そもそも道路に接していない土地には新しく建物を建てることができないのです。火災が起こった際の消防車や、急病人が出た際の救急車など、緊急車輛が通ることができるようにするためだと言われています。

このようなデメリットがあるため、袋地の評価は決して高くありません。安く購入できる可能性が大きい一方で、売りたくても中々売れず、どのように活用したらよいか悩んでいるオーナーの方もいらっしゃると思います。 

囲繞地とは?

続いて、囲繞地について見ていきましょう。これは「いにょうち」と読みます。

第1章で、解説した袋地の周りの土地のことで、図にすると下のようになります。 

囲繞地通行権とは何か

袋地を所有者している方は、自身の敷地が道路と接していないため、道路に出るためには隣接している囲繞地を通らなければいけません。そのため、袋地を所有している方に対して、民法によって「囲繞地通行権」が認められているのです。

袋地の所有者の義務として、囲繞地の所有者の損害を可能な限り小さくしなければいけません。損害を最小限にとどめるという性質上、車が通る幅は取ることができないのが一般的です。もちろん、付近に全く駐車場がないなどの理由で車の通行が認められているケースもあります。

袋地の所有者は、囲繞地を通行する対価として通行料を支払うということが定められています。具体的な金額の決まりはなく、双方の所有者が協議して決定することが一般的です。

通行地役権

生活をしていく上で、自身が持つ土地を便利に活用していくための権利になります。

「隣接する自身が所有していない土地を通る」という意味においては、前述の(1)と似ているようですが、法的拘束力の有無などの違いから本質的に異なります。また、(1)では不要だった登記が、こちらのケースでは必要となります。

こちらが具体的に、どういったものかを見ていきましょう。 

上図で、Aさんが駅方面に行くとしましょう。

Aさんが道路だけを通って駅方面にいくためには、自身が所有している土地を出た後、一度目的地から逆方面に行き、道路に沿って他の方の土地を迂回しなければなりません。(黄色の線)
Aさんが、もしBさんが所有している土地を通り、道路へ出てしまえば駅方面へは先ほどの半分未満の距離で行くことができます。(赤色の線) 

AさんとBさんの協議を行った結果、AさんとBさんの間で、「AさんがBさんの所有の土地を通行すること」に合意したとしましょう。この権利を「通行地役権」といいます。こちらについては、法的拘束力はないので、Bさんは必ずしもAさんの要望に応じる必要はありません。

袋地を有効活用するためには?

有効活用するうえで、クリアしなければいけないのが「接道義務」です。接道義務を満たすために考えられる手段についてみていきましょう。 

隣接している囲繞地を一部購入する

まず、1つ目の方法として、隣接している囲繞地を購入することです。新たな土地を購入することで、ご自身が所有している土地が公道に面することになります。そうなれば、新たに建物を建てることができ、土地利用の選択肢が広がるといえるでしょう。

購入後の図は以下の通りです。

「4m以上の建築基準法上の道路に対して、自身の所有している土地が2m以上接していなければならない」ので留意することが必要です。 

隣の囲繞地を所有者している方とお互いの土地を交換する

続いては土地の交換によって、「接道義務」を満たすようにするというものです。土地交換のビフォーアフターは下図のようになります。 

交換譲渡資産(交換によって相手に譲渡した資産)と交換取得資産(交換によって相手から取得した資産)が、いずれも固定資産であることや、同種の資産(土地と土地どうし)などの条件を満たすことで、譲渡がなかったとする特例を受けることができます。

これを「固定資産の交換の特例」といいます。特例を受けることができれば、譲渡所得の計上の必要がないため、余計な税金がかかることはありません。

詳細は、国税庁のHPからご確認ください。
出典:国税庁

通行地役権の設定をする

通行地役権については、第2章で解説してきました。隣の土地の所有者との間で合意があれば設定することが可能です。あくまで当事者間の決め事なので、有償のケースもあれば無償のケースも存在します。法務局へ登記の申請をする際には、相手方と共同で行うことになります。

次の図は通行地役権を設定した後のものです。 

 これらの方法で接道義務を満たせば袋地の活用に幅が広がります。

袋地の売却をしたいなら共同売却を検討する

前述のように、袋地のみでは活用が難しく売却するにしても中々売れない可能性があります。また、売却できたとしても、その価格が地域の相場よりも安くなってしまう可能性が高いと言わざるを得ません。

そのような場合は、隣の敷地(=囲繞地)を所有している方と共同売却を検討するとよいでしょう。一緒にすることで、道路に面することになれば、次の購入者は「接道義務」を気にすることなく買い付けができます。また、資産価値も上がるといってよいでしょう。 

もちろん、応じてくれるかどうかは相手方次第となりますが、交渉してみる余地はあります。また、一緒にすることで、相手方の土地の売却価格も上がるなどすれば、相手方にもメリットが大きくなりますので、応じてくれる可能性は高まるでしょう。 

袋地を購入する際の留意点とは?

袋地は、これまでにお伝えしてきた通り、そのままだと中々活用が難しいです。そのため、売れるものなら売りたいと考えている方も少なくありません。このような状態ですので、購入しようとすれば相場よりも安価で購入することができる可能性が高いといえます。 

しかし、安いからといってすぐに手を出すのは危険です。なぜでしょうか。

不動産会社の営業マンから 

「もし、土地の交換ができれば資産価値が高まりますよ!」
「通行地役権の設定をして、有効に活用しましょう!!」

などと言われるケースもあろうかと思いますが、そのためには、囲繞地の所有者との間で交渉が成立することが大前提です。

先方は、どのような方でしょうか。また、交渉に乗ってくれそうでしょうか。また、袋地の所有者と過去にトラブルなどなかったでしょうか。 

せっかく購入したのに、交渉のテーブルにすらついてくれず、全く取り付く島もないような状態では、どうしようもなくなってしまいます。購入前の段階で、上記の内容を不動産会社へ懸念として相談してみるとよいでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。袋地や囲繞地の違いや袋地の活用方法について解説してきましたが、袋地の具体的な活用方法についてはご理解いただけたでしょうか。

購入を検討している方は、すぐに仲介業者の話に飛びつくことなく、慎重に吟味して判断をするようにしましょう。少しでも不安な点がある場合には、専門家に相談してみることをお勧めします。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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