不動産の大家(オーナー)の都合によって、借主に立ち退き料を払って引っ越しをしてもらうケースがあります。
しかし、立ち退き自体があまりないケースなので、分からないことが多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、立ち退き料の相場や交渉のポイントなどについて解説していきます。
立ち退き料とは、大家(オーナー)の都合によって、借主が賃借物件を明け渡して引っ越しをしなくてはいけなくなった場合に、その代償として支払われる費用のことです。
しかし、立ち退き料自体に法律的な決まりはありません。よって、絶対に払わなければならないというものでもありません。
交渉次第では、全く支払うことがなかったり、わずかな金額の支払いだけで済んだりするケースもあります。
また、立ち退き料自体は、交渉が上手くいかずに拗れてしまった場合に提案するケースが一般的です。
最初から立ち退き料の提案をする必要がないということを理解しておきましょう。
ただし、法律的な決まりがないゆえ、交渉次第で大きな支出になってしまう可能性もあることを忘れてはいけません。
立ち退き料の相場は、家賃の5ヶ月分~6ヶ月分であることが一般的です。
ただし、前述のように法律的な決まりはないため、地域や状況や事案等によって大きく変動します。
考え方としては、立ち退くことによって借主に関わる経済的な損失を補てんするというイメージになります。
敷金や礼金、仲介手数料など新居の契約時にかかる初期費用は、「本来引っ越しをしなければかからない費用」なので立ち退き料に含まれるケースがあります。
文字通り、引っ越しを行うにあたり業者などを利用した際にかかる費用です。
こちらも「本来はかからない」費用ということで立ち退き料に含まれるケースがあります。
インターネットや電話は、新規で契約をする場合には費用がかかります。
また、インターネット・電話は、契約期間中に解除をするとなると「解約料」がかかってしまいます。
これらの費用は、立ち退き料に含まれるケースがあります。
ほとんどの賃貸物件では火災保険への加入を義務付けられています。
また、地震保険への加入が義務となっている物件も少なからずあります。
これらの費用も、立ち退き料に含まれるケースがあります。
前述の4項目は、「本来払う必要のない金額の補てん」という側面がありましたが、こちらは少々異なります。
引っ越すことによってさまざまなストレスなどがかかることによる「迷惑料」です。
例えば、「新居を探す手間」や「環境が変わることのストレス」や「役所への届け出の手間」などがこちらに該当します。
ストレスなど目に見えない部分も立ち退き料としてかかってくるケースもあります。
大前提として、賃貸借契約を理解する必要があります。
賃貸借契約によって、借主は守られているのです。
具体的には、賃貸借契約(普通借家)によって、正当な事由がない限りにおいては借主が立ち退き要求に応じる必要はありません。
また、大家(オーナー側)が契約更新を拒否することもできないのです。
よって、無理に立ち退きを要求することによって、借主の神経を逆なでしてしまい、裁判などになってしまうのは避けなければなりません。
最悪のケースは、高額な損害賠償を請求されるケースもあります。
借主の事情も聞きながら、立ち退いてもらう理由や経緯などをきちんと説明するなど、歩み寄る姿勢を忘れないようにすることが大切です。
前述のように「正当な理由」がなければ、借主は退去をする必要はありません。
正当な理由とは、例えば「家賃を数ヶ月滞納した」などです。
仮に「古いから建て替えたい」という場合は、正当な理由にはあたらないと考えてよいでしょう。
交渉を進めるにあたって、立ち退きを求める理由を明確にするようにしましょう。
立ち退きの条件などは、まず口頭で話し合い、大家(オーナー)と借主の双方の合意のもと手続きを進めていくことになりますが、その都度交渉内容については書面に残していくようにしましょう。
口約束だと、後になってから「言った・言ってない」、「聞いた・聞いてない」の水掛け論になってしまうケースもあり立ち退きがスムーズにいかなくなってしまうことも考えられます。
また、万が一裁判になってしまった際に交渉内容が書面で残っている方が望ましいです。
作成後の書面は、大家(オーナー)と借主の双方で確認し、お互いの認識に齟齬がないかどうかをその都度確認していくことがトラブル防止につながります。
交渉に臨む前に、先方がどのくらい費用がかかるのかをシミュレーションしておくと良いです。
最初から立ち退き料を提示する必要はありませんが、話がこじれそうになった際に、すぐに立ち退き料のシミュレーションを出せるようにしておくと、「きちんと考えてくれている」と感じてくれて。借主側の心証がよくなり、スムーズに交渉を進めやすくなるでしょう。
借主側が契約違反をしているケースとしては、例えば、「家賃の滞納」、「大家(オーナー)に無許可でのリフォーム」、「契約内容と別用途での利用」などがあります。
これらが「正当な理由」となって立ち退きを求めることができます。
大家(オーナー)自身が賃貸している物件を利用するケースでは、立ち退き料の支払いが必要なくなる場合もあります。
自己使用の必要性といって、大家(オーナー)自身の居住用に利用する際には、正当な理由として認められるケースもあります。
しかし、これはあくまで交渉の際の一つの手段に過ぎません。
正当な理由として確実に認められる保障はありませんので、立ち退き料の支払いが必要になる可能性が0になるわけではないことに留意が必要です。
立ち退きというのは、求める側も求められる側も双方にとって、あまり経験のないケースです。
経験がない分、方法を誤ると大きなトラブルに発展する懸念もあります。
立ち退き交渉でトラブルを防止するには、専門家に交渉依頼することも1つの選択肢です。
専門家に依頼するわけですから、当然費用はかかってしまいますが、専門家に任せた方が、トラブルが起きる確率は低いといってよいでしょう。
また、自身で交渉を行うよりも、より良い条件で交渉をまとめてくれる期待もあります。
いかがでしたでしょうか。
立ち退き料についてご理解いただけたと思います。
こちらの記事で解説したように、立ち退き料の目安は家賃の5ヶ月~6ヶ月が相場となっていますが、経緯、状況、借主の状況によって異なってきます。
大家(オーナー)として、立ち退き交渉を行う際には、あくまで「お願いをする」というスタンスで臨むことをオススメします。
もし、立ち退きに関して不安な方がいれば不動産会社や専門家へ相談してみるようにしましょう。