不動産売買や賃貸借の契約が成立すると、仲介した不動産投資会社に仲介手数料の支払いが必要です。一方で「仲介手数料無料」と謳う物件は一見お得に感じますが、注意点はないのでしょうか?今回は、不動産投資で仲介手数料が必要なケースについて、仕組みや注意点を交えながら解説します。
まずは仲介手数料が不動産投資でかかる仕組みについて、金額の上限や計算方法、取引形態、その他の経費の観点からみていきましょう。
仲介手数料とは、不動産売買や賃貸借契約が成立した際に、不動産投資会社に支払う成功報酬です。例えば不動産オーナーが物件の売却を不動産投資会社に依頼した場合、無事に買手が見つかり成約したら、元のオーナーは不動産投資会社に仲介手数料を支払います。しかし、売買や賃貸借の契約が成立しなかった場合や、オーナー自身が買主を見つけて物件を売却(貸し出し)した場合などでは、仲介手数料の発生はありません。
不動産売買における仲介手数料は宅地建物取引業法によって、次のように上限が定められています。なお、仲介手数料の計算方法は税抜計算となっていますので、実際には消費税分の加算が必要です。
2018年1月1日より宅地建物取引業法が一部改訂され、物件価格が400万円以下の場合、売主から最大18万円まで仲介手数料を受け取ることが可能になりました。
また、賃貸借の場合は居住用の物件か居住目的以外の建物かによっても、次のように仲介手数料の計算方法は変わります。
仲介手数料は先述したように売買価格を3つに分割して計算できますが、検討している不動産が複数ある場合は何度も計算を繰り返す必要があります。そこで活用したいのが速算法です。例えば、売却価格が400万円を超える場合には次のような速算法を用いると簡単に仲介手数料の算出が可能です。
この場合、(400万円×3%+6万円)×消費税(1.1%)=19.8万円となり、19.8万円の仲介手数料が必要であると簡単に計算できます。
売買の仲介をする場合は、売手と買手の両方が仲介手数料の支払者となります。しかし実際には不動産投資会社が仲介手数料を受け取る数によって、仲介手数料は2つの取引形態に区分されます。
片手取引とは、不動産投資会社が売主(貸主)または買主(借主)のどちらか一方から仲介手数料を受け取る取引形態です。
両手取引とは、不動産投資会社が売手(貸主)と買手(借主)の両者から仲介手数料をもらう取引形態です。片手取引と比較すると、両手取引における仲介手数料の総額の方が多くなる傾向にあります。
不動産取引では、仲介手数料以外にもさまざまな経費がかかります。ここでは、不動産投資で必要になる代表的な経費の項目についてみていきましょう。
印紙税とは契約書に添付する収入印紙の代金です。不動産取引の売買契約書や土地賃貸借契約書、ローン借入れのための金銭消費貸借契約書などの記載金額によって税額が決定します。契約金額に応じた規定の印紙を契約書に貼り、消印されて印紙税の納付が完了となります。規定の印紙税の詳細に関しては国税庁の「印紙税一覧表」をご確認ください。ちなみに、同じ契約書を複数作る際には、1通ごとに印紙の貼付が必要です。
不動産取得税とは、土地や建物を購入した際に都道府県に納める地方税です。
不動産を購入して約半年後に税金納付書が届くので、納付書に記載された金額を元に税金を納めます。納税金額は物件の場合、固定資産税評価額の3%です。しかし、土地に関しては固定資産税評価額の2分の1が課税標準になるため、実質的な税率は1.5%となります。
登記免許税とは登記の際にかかる税金のことです。登録免許税の税率は土地や建物の固定資産税評価額に基づいて税率をかけて計算されます。なお、新築物件でまだ固定資産税がつけられていない際には、法務局で認定した課税標準価格に税率をかけて算出されます。建物と土地の種類によって規定されている登記の税率は次の通りです。
不動産投資の場合は、火災や地震など予期せぬ自然災害のリスクに備えて、火災保険や地震保険などに加入するケースが多くあります。保険料は、投資する物件の築年数や建築構造などによっても変わります。
不動産の登記はご自身で行うことが可能です。しかし、登記では難解な法律用語と細かい規則に基づいた書類作成が必要になるため、多くの場合は司法書士に依頼し、その際には「司法書士報酬」が発生します。また、その他にも不動産投資ローンを組む場合には、金融機関や、デベロッパーに支払うローン事務手数料や保険会社に支払う保証料が発生する場合があります。
ここまでご紹介してきた経費は、不動産を購入した年にかかる費用ですが、その経費とは別に毎年経常的にかかるコストもあります。例えば、次のような費用です。
ここまで不動産投資における仲介手数料の仕組みについてみてきましたが、そもそもなぜ仲介手数料は必要なのでしょうか?この章では、仲介手数料が不動産投資で必要である代表的な理由についてみていきます。
不動産投資会社によっては、自社のもっている投資用物件のリストから、収益性の高い優良物件を選び出して紹介してもらえます。また、場合によっては投資家の提案した物件条件をもとに売主を募集したり、業界のネットワークを駆使して条件にマッチした物件を探し出して現地案内をしてもらったりも可能です。インターネットに掲載されていないノウハウや情報を個人の力で入手するのは労力が要りますが、仲介業者を通せばスムーズに投資へと進めます。
出来るだけ物件を高く売りたい売主と、安く買いたい買主の間を取りもって交渉をしてくれます。円滑な交渉には物件相場の客観的な指し示しが重要ですが、不動産のプロである不動産投資会社のアドバイスを元に適切な価格を提案できると、売買を成立に導くことが可能です。
物件の売買契約が成立した際には売買契約書を作成する必要があります。しかし、そうした書類は法律用語や細かい規則があるので、時間と労力がかかるものです。その点、不動産投資会社に依頼すれば煩雑な書類作成や移転登記などを包括的にサポートしてもらえます。
投資用物件をご検討される中で、「仲介手数料無料」という物件を目にした経験のある方も多いでしょう。この章では、どのようなケースで仲介手数料が無料になるのか、事例ごとにみていきます。
投資用物件の売主が不動産会社の場合、仲介ではなく直接的に物件を購入する形になるため、仲介手数料はかかりません。
両手取引で売主からのみ仲介手数料を受け取る際にも、仲介手数料はかかりません。両手取引とは先述した通り、1つの仲介業者が売主と買主の両方から依頼を受けていた場合、両方から仲介手数料を受け取れる取引形態です。買主側の仲介手数料を無料にすることで、売主側にとっても早く物件を売買してもらえるメリットがあります。
「仲介手数料が無料」とあると、とてもお得な印象を受けますが、何か注意点はないのでしょうか?
仲介業者の中には、物件価格に上乗せして仲介手数料を受け取っている場合があるため、物件の売買をご検討の際には物件の相場がどれくらいなのかを知ることが重要です。事前に相場を知っていれば、物件価格に手数料を上乗せされているトリックを避けられるので、信頼できる不動産業者に相談したり、事前に不動産の相場を確認したりしておくようにしましょう。
仲介業者の中には「手数料無料」と宣伝していたのにも拘らず、別の名目で高い手数料を請求されるケースもあるようです。仲介手数料はあくまで成功報酬なので、契約が成立しない限り支払う必要はありません。ゆえに、宅地建物取引業法の範囲内の手数料であれば、むしろ仲介手数料を支払う方が利用者にとってメリットになるという考え方もあります。
「手数料無料」とあっても、すべての物件が手数料無料であるとは限りません。場合によっては本来受けられていたはずのサービスの質が低下してしまうケースもあるため、信頼できる仲介会社か十分に確認をするようにしましょう。
今回は、仲介手数料が不動産投資で必要な理由について、仕組みや注意点を交えながらみてきました。要点は次の通りです。
本記事でご紹介した内容を不動産投資にぜひご活用ください。