不動産投資とは

水害が多発?不動産投資する際にハザードマップも確認すべき

2020/11/26
水害が多発?不動産投資する際にハザードマップも確認すべき

近年、日本各地で豪雨の影響により水害のニュースを多く耳にするようになりました。

このような状況を鑑みて、宅地建物取引業法の改正が行われ、重要事項説明に盛り込むことが義務付けられました。

今後は、ハザードマップを確認することがより重要になってきます。

こちらの記事では、不動産投資をするにあたって水害のリスクを回避するためのポイントを解説していきます。

近年の日本各地における水害の状況

報道にあるように近年水害のニュースを多く耳にするようになりました。

まずはこの数年、日本各地で起きた水害の状況からを見ていきましょう。

令和2年7月豪雨

被災地域:熊本県・福岡県、鹿児島県、大分県、佐賀県、長崎県、岐阜県、長野県、静岡県、山形県など

  • 死者数:82人
  • 家屋被害:全壊319棟、半壊2009棟、一部破損2230棟、床上浸水6985棟、床下浸水6949棟

出典:ウィキペディア

令和元年東日本台風(台風19号)

被災地域:関東地方、甲信地方、東北地方など

  • 死者数:105人
  • 家屋被害:全壊3,229棟、半壊28,107棟、一部破損40,212棟、床上浸水7,524棟、床下浸水21,549

出典:ウィキペディア

令和元年房総半島台風(台風15号)

被災地域:千葉県など

  • 死者数:9人
  • 家屋被害:全壊457棟、半壊4,806棟、一部破損87,833棟、床上浸水125棟、床下浸水151棟

出典:ウィキペディア

令和元年8月の前線に伴う大雨

被災地域:佐賀県、福岡県、長崎県など

  • 死者数:4人
  • 家屋被害:全壊87棟、半壊110棟、一部破損14棟、床上浸水1,645棟、床下浸水4,513棟

出典:ウィキペディア

平成30年7月豪雨

被災地域:北海道、長野県、岐阜県、京都府、兵庫県、岡山県、広島県、島根県、山口県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、宮崎県、鹿児島県など

  • 死者数:263人
  • 家屋被害:全壊6,783棟、半壊11,346棟、一部破損4,362棟、床上浸水6,982棟、床下浸水21,637棟

出典:ウィキペディア

平成29年7月九州北部豪雨

被災地域:福岡県、大分県

  • 死者数:40人
  • 家屋被害:全壊336棟、半壊1,096棟、一部破損44棟、床上浸水180棟、床下浸水1,481棟

出典:ウィキペディア

2017年以降だけでも、これだけの大規模な水害が起きています。

宅地建物取引業法の改正内容に関して

第1章で紹介したように、近年、大規模な水害が頻発しています。

その度に、甚大な被害が生じていて、不動産の取引においても水害のリスクに関わる情報がより重要になっています

このような状況を鑑み2020年7月に国土交通省から、不動産の取引時にハザードマップにおける取引対象物件の所在地について重要事項説明の対象として説明することが義務付けられ、2020年8月28日から施行されました。

出典:国土交通省

ハザードマップから見る「購入していけない物件」とは?

ハザードマップを目にしたことはありますか?

下記は、東京都千代田区(荒川版)のハザードマップです。

このハザードマップによると、荒川が増水し氾濫してしまった際に東側の方が浸水してしまうリスクがあることがわかります。

出典:東京都千代田区

不動産投資において、利回りはもちろん大切ですが、それと同じくらい重要なのは災害(水害や地震)リスクの回避です。

上のハザードマップで水色になっているところは、浸水の目安が1メートル~3メートルが想定されるエリアです。

3メートル近い浸水になってしまうと、1階~2階部分は浸水してしまうことになりますので、戸建て投資は基本的に論外ということになります。

マンションであっても、2階から下の物件は購入を避けた方が良いかもしれません。

黄色になっていて、少しでも浸水のリスクがある物件については、事前に十分な検討が必要といえるでしょう。

ハザードマップの落とし穴

ハザードマップは、日本全国が統一の基準で作成しているわけではありません。

自治体によって作成基準が異なります。さらにいえば同じ自治体の中でも河川によって想定基準が異なることに注意が必要です。

例えば、東京都の中央区では、「隅田川・神田川・日本橋川版」では平成12年9月の東海豪雨を想定して作成されているのに対して、「荒川版」では1000年に1度の大雨を想定して作成されています。

出典:東京都中央区

また、想定浸水深が0メートルであったとしても、過去に浸水被害があった事例もあります。ハザードマップが万能でないことを認識しておく必要があります。

東京都内におけるハザードマップの例

東京都千代田区

東京都千代田区の荒川版のハザードマップです。

想定浸水深は、水色が1メートル~3メートル、緑色が50センチ~1メートル、黄色が~30センチとなっています。

千代田区の東側に集中していることが分かります。

出典:東京都千代田区

東京都江東区

東京都江東区のハザードマップです。

想定浸水深は青色が2メートル以上、水色が1メートル~2メートル、緑色が50センチ~1メートルになっています。

江東区内の多くのエリアが50センチ以上の浸水リスクがあることが分かります。

出典:東京都江東区

東京都渋谷区

東京都渋谷区のハザードマップです。

想定浸水深は、緑が1メートル~3メートル、黄色が~1メートルになっています。

渋谷駅から代々木公園駅にかけて、緑色エリアが広がっていることが分かります。

一方で、区全体で見ると全く浸水しないであろうエリアが多い(白色)こともお分かりいただけるのではないでしょうか。

出典:東京都渋谷区

東京都内で水害のリスクが少ないエリアとは?

東京都建設局より、「浸水実績図」が公表されています。

現在、アップされている中で最新版は平成23年~平成27年版ですが、こちらによると東京都内で13の区や市が浸水の実績があったことになります。

裏を返せば、こちらの記載がないエリアでは浸水がなかったことになります。


区全体の色が変わっているので、危険度が高いと誤解される方もいらっしゃると思いますが、全域が浸水しているわけではない点に留意してください。

例えば渋谷区では浸水の実績があったのは青色になっている2か所だけになっています。

出典:東京都建設局 浸水実績図(渋谷区)

足立区においても青色になっているのは、牛田駅の北のエリアの1か所だけです。

出典:東京都建設局 浸水実績図(足立区)

東京都内では、東側(東京湾に近いエリア)の方が浸水のリスクが一見高いように思われますが、実際にはそういうことでもなさそうです。

水害のリスクが少ないエリアを一括りにして語ることは難しいといえるでしょう。

実際に「このエリアはどうなの?」という方のために、東京都建設局より「浸水リスク検索サービス」というものが出されています。

条件を設定することで、エリアごとでの浸水リスクを調べることができます。

かなり細かいエリアで検索することが可能ですので、購入しようとしている物件の住所が大丈夫かどうか検索してみるとよいでしょう。

出典:東京都建設局

まとめ

いかがでしたでしょうか。

近年の水害が目立つようになってきていますが、日本全国でいつ同様の被害が出てもおかしくない状況です。

せっかく投資した不動産が水害にあってしまっては、大変です。

水害のリスクを0にすることは難しいですが、購入前に水害のリスクを限りなく減らす努力はできるはずです。

是非、購入を検討しているエリアのハザードマップや浸水リスクを調べてみていただいてから購入することをオススメします。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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