不動産投資とは

その債務償還年数で大丈夫? 不動産の評価基準をわかりやすく解説!

2020/12/01
その債務償還年数で大丈夫? 不動産の評価基準をわかりやすく解説!

債務償還年数とは金融機関が不動産を評価するうえで、重きを置いている指標のひとつです。しかし、債務償還年数とは一体どのような年数を指すのか、マイナス評価が投資にどう影響を与えるのかなどについて、理解しづらいと感じている方も多いのではないでしょうか。

 そこで今回は債務償還年数について、融資がおりる年数の目安や注意点なども交えながらわかりやすく解説します。

 不動産の債務償還年数について

まずは不動産の債務償還年数の意味や構成要素についてみていきましょう。

不動産の債務償還年数とは「何年で借金を返済できるか?」

不動産の債務償還年数とは端的にいうと「金融機関から借りた借金を何年で返せるのか?」という指標です。つまり、現在のキャッシュフローだと借金を何年で完済できるのかという年数で指し示しています。

 金融機関が融資を審査する際に重要視するポイントは 

  1. 「資金の使い道」
  2. 「借金を返済できる能力」

です。そしてその中でも「借金を返済できる能力」は、融資を受ける人の信用の根幹に関わるため、再重要視されています。また、債務償還年数が短いと健全な投資運用ができない可能性があるため、債務償還年数は投資の実現性の指標でもあります。

不動産の債務償還年数における3つの構成要素

債務償還年数に構成されている要素は「キャッシュフロー」「有利子負債」「正常運転資金」の3つです。それぞれの要素の意味についてみていきましょう。

①要素1:キャッシュフロー

キャッシュフローとは現金の流れのことで、不動産投資ではとくに家賃収入や物件売却などで得られる収入から、税金や設備費用などの支出を差し引いた後に手元に残る資金(もしくは流出する資金)を指します。

債務償還年数におけるキャッシュフローは、当期純利益(税引き後の利益)に減価償却をプラスして簡易的に算出が可能です。ちなみに、不動産投資での減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少する固定資産を指します。

 ②要素2:有利子負債

有利子負債とは利息を付けて返す必要のある負債のこと。つまり、不動産投資では金融機関から融資されている全金額の残債(支払い終わっていない借金)です。借入金の残高が年間キャッシュフローと比較してどれくらい残っているかは、借金をどのくらいの期間で返済できるかに大きな影響を与えます。

③要素3:正常回転賃金

正常回転資金とは、投資運営を続けるうえで必要な資金を指します。たとえば、不動産投資における正常回転資金は次のとおりです。

  1. 物件の取得費用や設備資金
  2. 書類作成や依頼で必要な費用
  3. 毎月の投資運用に必要な人件費

ただし、一部の金融機関では何かを仕入れて販売する小売業や飲食業と不動産業は異なるとみなし、不動産業における回転資金への融資が拒否される場合もあります。

 不動産投資で重要な債務償還年数の3つの計算式

不動産投資における債務償還年数の計算式は主に3つあります。金融機関は、これらの計算式で算出された年数をベースに借金の返済能力があるかどうか客観的に判断します。この章では、それぞれの計算式の概要についてみていきましょう。

計算式1:(借入金の残高)÷(当期純利益+減価償却)

この計算式は、債務償還年数における最も基本的な式です。当期純利益は年間利益から税金を差し引いた手取り額のことで、純粋な利益を指します。実際には毎月使用されているわけでない経費である減価償却費を計上し、年数を算出する方法です。

計算式2:(借入金の残高-回転資金)÷(当期純利益+減価償却費)

2つ目は借入金の残高から回転資金を差し引き、債務償還年数を算出する計算式です。回転資金とは事業を続けていくうえで立て替え続ける必要のある経費を指します。たとえば、原状回復費用や広告料、空室期間の家賃などが不動産投資の回転資金などです。

計算式3:借入金の残高-回転資金-現金預金)÷(当期純利益+減価償却費)

3つ目は、借入金の残高から回転資金を差し引き、さらに現金預金も控除して債務償還年数を算出する計算式です。現金預金の金額が大きいほど借入金を返却できる能力がある状態です。したがって、算出される債務償還年数の期間も必然的に短縮されます。

 不動産投資における債務償還年数の目安について

不動産投資の債務償還年数とは何かについて、概念や計算方法などをみてきたところで、この章からは、不動産投資における債務償還年数の目安について解説します。

不動産における債務償還年数の目安は「20年以内」

一般的に債務償還年数は短いほど金融機関からの評価が高く、銀行によっては10年以内を指標とする場合もあります。しかし、不動産賃貸業は資産の購入が目的であり、借り入れに依存する事業であるため、一般的には基準を緩めて適用されるようです。したがって、可能であれば15年以内、最低でも20年以内が債務償還年数の目安といえるでしょう。

 不動産の債務償還年数が20年以上だった場合の対処法

債務償還年数が20年以上だった場合でも、融資がおりないわけではありません。しかし、融資において不利になるだけでなく、投資計画としても見直す必要性があります。次の2つのポイントを抑えて対処すると、金融機関からの評価をより良いものに変えることが可能です。

 ①対処法1:有利負債を小さくする

この対処法は端的にいうと、「繰り上げ返済すること」です。繰上げ返済をすると、他の指標でマイナスになる可能性もありますが、手元のキャッシュが少なくなるため、ローン返済を早く済ませることが可能です。たとえば、借り入れを元金均等返済(毎月の返済額のうち元金の額が一定となる返済方法)にすると、返済期間を早められ、債務償還年数の改善が期待できます。

 ②対処法2:経常利益+減価償却費を大きくする

この方法では収入を上げたり支出を抑えたりなど、先述した有利子負債を小さくする対策法よりもさらに多くの策を考えられる点が特徴です。

 債務償還年数における不動産投資の注意点

金融機関から融資を受け続けるには、債務償還年数をできるだけ短くする投資運営が必要です。この章では、投資の際で注意すべき代表的な点についてみていきましょう。

注意点1:過度な節税

1つ目の注意点は「過度な節税」です。過度に節税して利益を削ろうとすると、債務償還年数が長くなり融資で不利になる可能性があります。例えば、純粋な借金が800万円あり、投資運営のキャッシュフローが毎年80万円出ていた場合。債務償還年数は800÷80=10(年)となり、借金を返すのに10年くらいかかると判断できます。

 しかし、もし一括償却できる設備費用70万円を経費に計上したら、キャッシュフローは80万円から10万円。800÷10=80(年)になります。つまり、借金を返済できるのに80年かかる利益しかあげてないと金融機関から判断されるのです。

 したがって、過度に節税して利益を削る行為は償還年数を長くし、金融機関からの評価を下げてしまう可能性もあるので注意が必要です。ただし、借り入れの控えすぎや節税をしなさすぎるのもマイナスにはたらくケースがあります。

注意点2:築古物件の耐用年数

2つ目の注意点は「築古物件の耐用年数」です。築古物件の耐用年数はそもそも短いため、債務償還年数も短く設定されています。建て替えや修繕リスクのある築古物件は、多額の費用がかかったり再び借り入れが必要となったりする可能性が考えられるためです。したがって、金融機関から長い債務償還年数の評価を得るには、耐用年数をオーバーしているような古い物件の選定は避けるといいでしょう。ご自身の目指す投資プランに関するご不明な点は、信頼できる不動産投資会社の担当者にぜひご相談ください。

 まとめ

今回は債務償還年数に関する目安や注意点などについて書きました。要点は次のとおりです。

  1. 債務償還年数とは、「現在のキャッシュフローと照らし合わして借金を何年で完済できるのか」という年数の指標である
  2. 債務償還年数は金融機関からの融資や、投資運営の健全性を客観的に見極める際の判断材料になる

収益性の高い投資用不動産の選定や、リスクの低い投資運用を達成するには正確かつ客観的な第三者のアドバイスが不可欠です。ご自身のご希望に沿った投資プランは、不動産投資会社のプロに相談することで実現します。本記事でご紹介した内容をぜひお役立てください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

関連コラム