不動産を購入しようとする際に目にする「用途地域」。聞いたことはあるけれども、具体的にどういうものなのかが分かっていない・・・
そんな方も多いのではないでしょうか。
簡単にいうと、「この土地にはこういう建物を建ててよい」といった制限が定められているものです。
つまり、エリアによっては、建築可能な建物に制限がかかるため、きちんと理解した上で、不動産を購入したいものです。
こちらの記事では、用途地域の目的や調べ方のポイントを徹底解説していきます。
下のような地図を見たことはありますでしょうか。
出典:東京都豊島区
上図は、東京都豊島区の「都市計画図」です。この都市計画図は、一般的にどの自治体にも存在しています。
カラフルに色付けされていますが、この色分けが「用途地域」ごとに塗られているのです。
なお、用途地域は都市計画法という法律に基づき作成されており、約5年に1度見直しがかけられます。
用途地域を定めている目的とはなんでしょうか。
各自治体には、さまざまな住居や商業や工業が存在していますが、みんなが好き勝手に工場を建てたり、家を建てたり、病院を建てたりしたらどうなるでしょうか。
もし、家の隣に工場が建ってしまい、1日中機械の音やトラックの排気ガスなどに悩まされたら一溜りもありません。
このように異なる種類の土地利用が入り混じっていると、生活環境の悪化や、利便性の低下を招いてしまう可能性が高くなります。
そこで、同じような建物を意図的に集めて、それぞれに応じた環境を保護し利便性も向上させる目的で用途地域が定められているのです。
都市計画においては、住居専用地域や商業地域など13の種類に分類し、それぞれの用途を定めています。
用途地域は以下の13に分類されています。
用途の制限に関するものは、建築基準法によって規制されています。
建物の高さ自体に制限がかけられることから、そのほとんどが1階建てや2階建ての住宅が並ぶ街にケースが多いです。
非住居部分の床面積が50㎡以下の事務所兼住宅程度であれば建てることができますが、基本的にはコンビニすら建てることが出来ない、最も規制の厳しいエリアとなります。
なお、このエリアには、小中学校を建てることができます。
こちらのエリアも、建物の高さ自体に制限がかけられることから、①のケース同様に1階建てや2階建ての住宅が並ぶ街になります。
「床面積が150㎡まで」かつ「店舗部分が2階以下」という条件を満たせば店舗を建てることができますが、①に次ぐ規制の厳しいエリアとなります。
①や②と比べると、やや規制が緩くなるものの、制限がまだまだ多いエリアです。
店舗は、「床面積が500㎡まで」かつ2階以下」の条件を満たせば建てることができます。
3階建て程度のマンションやアパート、小規模のスーパーマーケットやドラッグストアなどが立ち並ぶ街となるケースが多いです。
また、こちらのエリアでは病院や大学も建てることが可能となります。
店舗は、「床面積が1500㎡までかつ2階以下」の条件を満たせば建てることができます。
③と比較して、床面積などで規制が緩くなることから、戸建て住宅のほか、3階建て程度のマンションやアパート、及び中規模のスーパーマーケットやドラッグストアなどが立ち並ぶ街となるケースが多いです。
こちらのエリアでも③同様に、病院や大学も建てることが可能です。
③や④と比較してさらに規制が緩くなります。
店舗や事務所は、床面積が3,000㎡まで可能になるほか、こちらのエリアにおいてはホテルも建てることが可能になります。
中規模のスーパーマーケットやドラッグストアのほか、小規模のホテルなどが立ち並ぶ街となるケースが多いです。
⑤と比較して、より規制が緩くなります。
店舗や事務所やホテルは、床面積が10,000㎡まで可能になるほか、カラオケボックスも建てることが可能となるエリアです。
⑥の制限内で建てることが出来るものは建築可能です。
また、床面積が150㎡以下の「自動車修理工場」を建てることが可能になります。
また、「客席部分が200㎡未満の映画館」などもこのエリアで解禁となります。
こちらのエリアは、国道及び幹線道路沿いなどで指定されるケースが多いです。
「田園」の名称から分かるように、農産物の生産・集荷・処理施設などの建築が認められているエリアです。
事務所については、①に準ずる形となります。
建物の高さについても、①や②に準ずるものとなっており、農業関連で利用する方以外にとっては、厳しい規制となっています。
店舗や事務所のほか、劇場や映画館、パチンコ店などが床面積の制限を受けずに建築可能となります。
小規模の店舗や中規模以上の商業施設まで建てることから、商店街が出来るような街となります。
大規模な駅の周辺は、こちらの商業地域に指定されているケースが多くなっています。
工場の建設や危険物などを扱う業態など以外においては、ほとんど規制を受けることなく商業施設の建築が可能となっています。
住宅も建てることができます。金融機関の本社や大規模な商業施設などが集まるエリアです。
この地域においては、工場が建てられる一方で、住宅や商店なども建てることができるエリアとなっています。
土地利用の選択肢が多い反面、さまざまな物件の形態が混在するエリアでもあるため、騒音や排気ガスなどのトラブルが起こる可能性も高いです。
こちらの地域では、住宅を建てることが出来ます。
しかし、ここではどのような工場であっても建築が可能になっているため、こちらのエリアに住宅を建てることは避けるべきだといえるでしょう。
また、住宅が建てられる一方で、学校や病院やホテルなどは建築不可となっています。
⑫と比較して主に異なる点は、住宅の建築が不可であるということです。
よって、このエリアには人が住むことはできません。
同じ坪数の土地で、駅からの距離や利便性が変わらなければ、金額が安い方にどうしても手を出しがちですが、用途地域を調べておくと金額が安い理由が分かることがあります。
例えば、とても日当たりが良さそうな土地で一戸建てを建てるのに適しているような土地であっても、すぐ目の前に高いマンションなどが建ってしまうような用途地域である可能性があります。
現在、住んでいるエリアや今後住みたいと考えているエリアが、どんな用途地域になっているかを知っておくことは重要です。
用途地域を調べるポイントを2点紹介します。
第1章で紹介したように、用途地域が載っているのは「都市計画図」です。
調べたい自治体名+都市計画図で検索するとよいでしょう。
例えば、渋谷区の用途地域を調べたい場合は、「渋谷区 都市計画図」で検索します。
そのページの中に「都市計画図・日影規制図【用途地域等】」があるので、それをダウンロードして閲覧しましょう。
ダウンロードしたものが次の画像です。
出典:渋谷区
自身が住んでいる役所に行って、「都市計画図」を見せてもらうこともできます。
閲覧が有料となる自治体もありますので、気になる方は、事前に役所へ問い合わせてみると良いでしょう。
所有している土地で、もし用途地域が複数に跨っている場合は、どのように考えたらよいのでしょうか。
結論から言うと、所有している土地すべてにおいて「面積が大きい方の用途」に従うことになります。
例えば、所有している土地が300㎡だとしましょう。
そのうち200㎡がA地域で、残りの100㎡がB地域であるケースでは、面積の大きいA地域が300㎡の土地全体に適用されることになります。
ただし、建蔽率や容積率については、面積が大きい方が適用されるのではありません。
建蔽率は指定建蔽率、容積率は按分計算によって求める必要があることに留意が必要です。
いかがでしたでしょうか。
用途地域の存在する理由やその種類、また調べ方のポイントについて解説してきました。
きちんと把握することは、資産価値の動向を知る上でも非常に大きなポイントとなります。
ご自身が住んでいるエリア、今後住もうとしているエリアについて、きちんと把握しておくことをおすすめします。