新型コロナウイルスの感染拡大を受け、Eコマース市場が一気に伸長しました。これを受け、スペース需要が上がってきているため物流施設への注目が集まっています。
不動産投資業界でも、近年、物流施設への投資が盛んになってきています。こちらの記事では、物流施設への不動産投資の近年の動向やメリット・留意点について徹底解説していきます。
物流施設という言葉を聞いた時、皆さんがまず想像されるのは「倉庫」でしょう。
倉庫と言えば、同じ商品がいくつも在庫として収納・保管されていて、注文などが入り必要になった際に、その在庫から払い出されるといったものであるというイメージがあると思います。
しかし、今や最先端の倉庫の実態は、少し前とは大きく変化してきています。在庫管理の方法や注文から出荷まで、人の手をかけずにスピーティーに行う仕組みを持った倉庫が近年増えてきています。
単なる「在庫を抱えておく場所」から最先端の技術を駆使した「物流施設」へ進化するにあたって、大きな影響を及ぼしたとされているのが、Eコマース市場の伸長です。
今までは、物流といえば、メーカーから商社そして小売に物を流していくといったB2B(企業どうしの取引)がメインでした。
しかし、近年Eコマースの普及により、通販の市場が拡大したことによるB2C(企業と一般消費者の取引)が盛んになりました。
経済産業省から公表された資料によると、Eコマースの市場規模は、2010年には8兆円弱だったものが、2019年には19兆円を超える成長を遂げました。
B2Cでは、1人1人の消費者のニーズに合わせたモノを正確に素早く届ける必要があります。それに応えてきた結果が現在の市場規模の急増です。
急激に拡大を遂げた裏には、「物流施設の進化」抜きでは語ることができません。
出典:経済産業省
シービーアールイー株式会社が公表した資料によると、2020年の不動産投資額は3兆8,480億円となり、前年より5.2%増加しました。
下記のグラフをご覧ください。
この中で、「物流施設」および「住宅」への投資額が2019年と比べて大きく増加しているのがお分かりいただけると思います。
特に物流施設においては、総投資額が2019年に約6,000億円だったものが、2020年に約1兆円と1年間で約4,000億円増加しました。
背景には、2020年に大流行した新型コロナウイルスの感染拡大を受け、経済が停滞する中で、他のオフィスや商業施設、ホテルなどと比べて収益が比較的安定している物流施設への資金が流れたと見ることもできます。
次に、下の表は投資家が選んだ2021年の投資対象です。
投資対象として選ばれた中で最も多かったのは、「物流施設」です。
前年より、やや落としましたが高い人気を誇っています。
昨年まで首位だった「オフィス」は、今後の需要の見通しに対する不透明感からか、不動産投資家の中でオフィスへの投資に対して慎重になっているのが伺い知ることができます。
住宅への不動産投資も前年より大きく数字を伸ばしており、コロナ禍に強い投資物件であるということが証明された形となりました。
次のグラフは、投資家が想定するコロナ前と比較した希望取得価格です。
物流施設については、16%の方が「売主の希望を上回る」とし、77%の方が「コロナ前と比べても下がらない」と回答しています。
つまり、16%+77%=93%の方が、物流施設への投資に対して非常に積極的になっていることが分かります。
堅実な需要に支えられている物流施設は、賃料も上昇していき、取引価格も上がっていく可能性が高くなっています。
一方で、オフィスや商業施設、ホテルなどは非常に苦しい状況となっています。
空室の増加や賃料収入の減少が改善される見通しが依然として立たず、不動産投資家にとっては、コロナ前よりも価格が大きく下がった物件でないと手を出しにくい状況にあります。
第1章で紹介したグラフを再掲載します。
出典:経済産業省
ここで注目していただきたいのは、赤いグラフです。
これは「Eコマース化」されている率を表しています。市場規模に対するEコマース(電子商取引)の割合です。2010年に2.84%だったものが、2019年に6.76%と右肩上がりに成長しています。
しかし、それでもまだ6.76%です。これが7%を超え、やがて10%を超える日もそう遠くないでしょう。
Eコマース率が高まるとどうなるでしょうか。
受注側は、顧客から発注されたモノを素早く、正確に届ける必要がありますが、それが可能な物流施設が必要になります。
物流施設抜きでは、Eコマース率の上昇は成しえないと言っても過言ではないくらい、最先端の技術を持った物流施設が必要となるのです。
需要が高まると分かっている中で投資の選択肢に入れる方が賢明と言えるでしょう。
第2章で簡単に解説しましたが、物流施設はコロナ禍に強い投資商品です。
コロナ禍においては、国や企業がテレワークを推進したことに伴い、オフィス需要が大きく低下しました。
今まで大きな人気を誇っていたオフィスへの投資ですが、この1年足らずの間で空室も目立つようになってきており、安定的な賃料収入が見込めない状況となってしまいました。
安定的な賃料を得られないということは、取引される物件価格自体も減少傾向となってしまいます。
一方で、コロナ禍において巣ごもり需要で通信販売が大きく伸びました。物流施設への需要も高まり、賃料や取引価格も上昇傾向にあります。
コロナが収束してもコロナ前に戻らないとおっしゃる方もいます。
引き続き、物流施設への需要は続くと見られている中で、逆に今の流れが回復するかは非常に不透明な状況の中、オフィス以外にも商業施設やホテルなどでも、しばらくの間は苦しい状況が続くことでしょう。
物流施設は、何があっても人が出入りできる状態であることが必須です。
近年、自然災害が増加していますが、それが起きたとしても耐えうる立地や設備でなければなりません。
特に台風や大雨に伴う「水害」と「地震」に留意することが大切です。
台風や大雨は、いつどこで起こるか分かりません。どこの場所ならば水害を受けないかどうかなど、数十年先まで予測するのは不可能です。
リスクヘッジとして、最低限「ハザードマップ」を確認するようにしましょう。
浸水リスクが高い場所での投資は避けておいた方が賢明だといえます。
地震についても同様です。
物流は、そこに人が行けてモノを運べることが命綱です。地震などで、道路が封鎖された際に行けなくなるような場所への投資は避けておいた方がよいでしょう。
また、大きな地震が起こると停電がしばらく続いてしまうエリアがありますが、食品などを扱う施設の場合、数時間電気が来ないだけでも大打撃を受けます。
万が一に備えて、予備電源などの設備があるかどうかを確認しておくとよいでしょう。
いかがでしたでしょうか。
物流施設の不動産投資について、近年の動向やメリット・留意点を解説してきました。今後、大きく伸びる分野となっています。興味のある方は、ぜひこの機会に検討してみるのはいかがでしょうか。