2009年にスタートした「長期優良住宅認定制度」。この基準をクリアして認定を受けた家が「長期優良住宅」と呼ばれています。認定を受けるための条件や基準にはどのようなものがあるのでしょうか。また、認定を受けた後はどのようなメリットがあるのでしょうか。
こちらの記事では長期優良住宅認定制度について詳しく解説していきます。ご興味がある方はぜひ最後までお付き合いください。
国土交通省によると、長期優良住宅は「長期に渡って住み続けることできるための措置を講じられている優良な住宅」とされています。
従来の「作っては壊す」から「良いものを長く使う」社会への転換を目的に、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が、2008年12月に成立し、2009年6月より施行されています。
2009年6月の施行時には新築の住宅のみが認定の対象となっていましたが、2016年4月からは、新築住宅に加えて、既存住宅の増築や改築を対象とした認定も開始されています。
認定を受けることができれば、税金面の優遇や補助金の支給、融資を受ける際の金利面での優遇といったメリットを享受することができるため、ぜひ活用したい制度です。
出典:国土交通省
さて、認定を受けるための条件や基準には、主にどのようなものがあるのでしょうか。
順番にみていきましょう。
数世代に渡って居住可能な構造になっているかどうかがポイントです。
1世代で壊さなければならない構造ではなく、「良いものを長く使える」作りとなっている必要があります。
新築住宅においては、劣化対策等級が3でなければならない他、木造・鉄骨造・RC造などの構造に応じた措置があります。
大地震に耐えうるような住宅であることも認定の判断材料となります。
専門家の間で、今後そう遠くない将来に南海トラフ巨大地震が起こる予想もされています。
「長く使い続ける」ためには、万が一、大地震が起こった際に、仮に住宅が損傷を負ったとしてもレベルが軽微なもので済むことが大切です。
新築住宅では、耐震等級が2以上または、免震建築物であることが条件とされています。
なお、一部は耐震等級1でも認定されるケースもありますが、条件付きとなっています。
耐震等級2のレベルは、一般的に避難所として指定されている学校や病院などの建物と同等です。
長く使い続けるためには、ライフスタイルの変化に対応できなければなりません。
間取りの変化が可能な構造になっているかどうかがポイントとなります。
断熱等性能等級4であることが条件となっています。こちらの等級は1~4の4段階になっています。(4が最高値です)
特にこだわりがない方にとっては、「4がとても良く、2や3が普通」と考えてしまうがちですが、違います。
4は約10年前の基準、3は約30年前の基準、2は約40年前の基準だからです。
数字が下がるほど、住宅に隙間が多く断熱性に乏しくなるといえます。
今の家で、30年前の基準を満たしていればそれでよいというわけではありません。つまり、こちらの基準は4でなければいけないといえます。
良好な居住水準を確保するため、一定基準以上の床面積である必要があります。
一戸建ての場合は、床面積が75㎡以上、マンションなどの場合は55㎡以上が基準となっています。
良好な景観の形成など、居住環境の維持や向上に配慮されているかどうかがポイントです。
地区計画や景観計画などがある場合は、その内容に適合していなければなりません。
天皇の御用邸がある那須に行かれたことがある方は、コンビニやファミレスの看板が、本来の色ではなく茶色になっているのをご覧になったことがある方もいらっしゃるでしょう。
これは、やりたくてやっているのではなく、規制を受けているからなのです。
まず初めに大切なことを述べておきます。
それは、今後お伝えする流れを「着工前に申請」する必要があるということです。着工後や住宅完成後に申請するものではありませんので、ご注意ください。
基本「認定申請書」を提出する形となります。この申請書の中で、
などを記載する部分があります。
書式は、下記のリンクからダウンロードが可能です。
出典:国土交通省
国土交通省のHPから作成の手引きがダウンロードできますが、作成に際して不安な方は、自分だけで行わずに専門家に相談するとよいでしょう。
なお、書類の提出先は所管行政庁です。
提出後は、審査が行われて無事に通過すると認定通知書が交付される流れとなっています。
文字にすると簡単そうに思えるかもしれませんが、必要書類をそろえたり、申請書を提出してから認定を受けるまでに時間がかかったりと、甘く見ていると着工前までに終わらない可能性がありますので、注意が必要です。
なお、住宅の工事が完了した後も、所管行政庁への報告が必要となりますので、忘れないようにしましょう。
住宅ローンを組んだ場合に、住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)を受けることができます。
課税所得に応じて算出される所得税が控除される仕組みとなっていますが、所得税から控除し切れない場合には、一部が住民税からも控除されることとなります。
元々、住宅購入者(住宅ローンを組むことが必須)が税制面で大きく優遇される仕組みとなっています。
一般的な住宅ローン控除は、毎年年末時点での「ローン残高」または「住宅取得対価」のうちどちらか少ない金額(上限4,000万円)の1%が所得税や住民税から控除されるというものですが、長期優良住宅の場合は、上限が5,000万円となります。
また控除期間は一般的に10年間となっていましたが、消費税増税などの影響を鑑み、控除期間は13年間となっています。
本来であれば、現在は10年に戻っているはずでした。
しかし、2020年に起こった新型コロナウイルスの感染拡大で、さまざまな方が経済的に打撃を受けたのを受けたのは記憶に新しいところです。
そのような方々への配慮もあり、2022年12月までの入居者に対しては、13年間の控除となっています。
すまい給付金を受け取ることができる可能性があります。
目安として世帯年収が775万円の世帯が対象で最大で50万円が給付されます。
細かくは県民税の所得割額に基づいて決定される形となりますので、上記の目安付近の方は、課税証明書を準備の上、すまい給付金事務局に問い合わせてみるとよいでしょう。
詳細は、下記のリンクからご確認ください。
出典:国土交通省
また、地域型住宅グリーン化事業があります。
これは、省エネルギー及び耐久性能などに優れている住宅を建てた中小工務店に、建築費用の一部が補助される仕組みになっています。
国土交通省の採択を受けた中小工務店、木造住宅が条件となります。
補助金の額は110万円が上限で、工務店が申請し、住宅購入者は工務店を通して補助金の還元を受ける仕組みになっています。
「長期優良住宅」について解説してきました。
認定を受けるための条件や基準、また認定を受けた後のメリットについてご理解いただけたでしょうか。
これから住宅を建てようと考えている方は、さまざまなメリットを享受できる長期優良住宅を検討してみてはいかがでしょうか。