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国道16号線への移住が増加!?新経済圏がコロナ禍に与えている魅力とは?

2021/06/23
国道16号線への移住が増加!?新経済圏がコロナ禍に与えている魅力とは?

コロナ禍で不動産への価値観にも変化があったといわれています。今まで都心に流れていた人の動きは都心から郊外へと移行しているためです。その移住先として注目を集めているのが「国道16号線エリア」です。しかしなぜ、新経済圏として国道16号線が人々に選ばれているのでしょうか。

本記事では、国道16号線への移住が増加する背景について、土地の特徴や歴史なども交えて解説します。国道16号線エリアの不動産投資にご興味のある方は、ぜひご一読ください。

国道16号線とは?

「国道16号線」とはどのような地域を指すのでしょうか。この章では、国道16号線の範囲や歴史、現在の傾向を解説します。エリアに関する理解は、不動産投資をする際の適切な戦略にも活かせるポイントです。将来性を見据えたエリアへの投資にぜひお役立てください。

国道16号線の範囲

国道16号線は「東京の郊外」を指し示す指標として用いられることがありますが、いったいどの範囲をいうのでしょうか。国土交通省の関東地方整備局によると、国道16号線の概要について、次のように示されています。

“国道16号線とは横浜市を起点に町田市、八王子市、さいたま市、柏市、千葉市などを連絡する、都心より半径約30km圏の東京近郊の都市を結ぶ全長約331kmの環状道路。

(引用:国土交通省 関東地方整備局「川崎国道事務所」一部抜粋、改変)

つまり、国道16号線とは、首都圏から3040km離れた範囲内(郊外)を走る、約330kmの環状になっている道路です。

国道16号線の歴史

『国道16号線―「日本」を創った道―』の著者であり、国道16号線のポテンシャルについて見識の深い柳瀬博一氏によると、国道16号線は古くから人々が住みついていたエリアだといいます。小流域(山と谷と湿原と水辺がセットになった地形)、台地や大きな河川、2つの半島が連なっているため、国道16号線エリアは人が住むのに適していたからです。事実、国道16号線の周囲には古い遺跡や貝塚、中世の城が数多く存在していた形跡があり、人類が文明をもって生活を始める前の時代から人々が暮らしてきた地域とされています。

国道16号線の地形は、広大な平地や豊富な水は馬や牛を育てる場所に適しており、多くの武士階級の台頭を促しました。結果、国道16号線エリア(鎌倉)に最初の武士政権が成立。その後の室町時代から戦国時代にかけての多くの武士が城を築く地域となっています。

幕末から明治以降にかけて、国道16号線は「日本のシルクロード」といわれるほど輸出を目的とした生糸や絹織物の運搬ルートとして活用されました。軍事施設が存在したことで花街が形成されたこと、横浜港から海外文化が入り込みやすかったことが経済的な発展に大きな影響を与えています。

戦中は日本軍の飛行場が設置され、戦後はアメリカ軍基地でした。このように、国道16号線エリアは日本の歴史における重要な拠点として活用され続けている地域です。

国道16号線の現在の傾向

古くから人々の生活や文化と深い関連性のある国道16号線ですが、現在の活用方法にはどのような傾向があるのでしょうか。3つの特徴を解説します。

大型ショッピングモールが急増

2000年代から大規模小売店舗立地法の廃止により大型商業施設の建設が顕著になりました。現段階で、16号線エリアには30以上もの大型ショッピングモールがあるといわれています。

例えば、「三井アウトレットパーク入間」、20206月に横浜にオープンした「コースカ ベイサイド ストアーズ」、201911月にリニューアルオープンした「南町田グランベリーパーク」などです。その他、アメリカ玩具量販店の「トイザらス」や、「コストコ」「IKEA」など海外からのディスカウントストアも16号線を中心として出店している点が特徴的です。

この傾向は「都心の地価高騰」「自家用車の普及」に深い関連があります。バブルに都心の地価が高騰し、一流企業に勤めていた多くの人たちが16号線エリアを居住地とするようになりました。また、同年代に世帯あたりの自家用車の所有台数が1台以上に増え、県外からの多くの消費者が16号線エリアへのマーケット需要を満たしたといわれています。

分譲住宅地の普及

分譲住宅地とは、間取りや仕様が決まっており、分譲地に建てられている住宅のことです。国道16線の外側に位置する千葉県印西市に、「印西牧の原エイテスタウン」という分譲住宅が20195月から販売され、コロナ禍で大変注目を集めています。最寄駅は都心から電車で1時間以上かかるものの、北総線の印西牧の原駅から徒歩6分と好立地に位置している点が特徴的です。

「印西牧の原エイテスタウン」は大手住宅メーカー数社が区画を分けて開発し、コロナ禍で地方移住を希望する家族もちの世帯を中心に好調な販売を続けています。

サテライトオフィスの建設

コロナ禍でテレワークが普及したことに伴い、国道16号沿線にサテライトオフィスが急増しています。例えば、国道16号線が縦断する位置にある千葉県柏市にショッピングモール「ららぽーと柏の葉」の敷地内に、勤務者が遠隔勤務をできる通信設備を整えたオフィスができました。

コロナ禍で会社に行く回数が減った人や、住まいの近くの商業施設で働きたい人など、新しいライフスタイルの一つとしても注目されています。ショッピングモールも近いため、仕事終わりのショッピングも便利なため、職住隣接に価値を求めるビジネスパーソンにも人気です。

国道16号線への移住がコロナ禍で増える背景

先述したとおり、コロナ禍で国道16号線への移住が注目されているのは事実です。しかし、この現象は感染症の拡大前から生じているともいわれています。そこでこの章では、国道16号線への移住が増える背景をさらに詳しくみていきましょう。

子育て世代の郊外ブーム

子育て世代が積極的に首都圏以外(郊外)に住むようになった傾向が、国道16号線への移住が進んだとされる一因です。毎年、都心への人口は流入傾向にあり、古いベッドタウンやニュータウンは人口減の傾向にありました。

しかし、柏市や町田市などの国道16号線エリアは子どもの人口が増加している点から、子育て世代の移住が増えているとわかります。通勤に時間がかかるものの、商業施設や学習環境も揃っているため便利であることも理由としてあげられるでしょう。

多様な働き方の普及

国道16号線のエリアは、自然と都会とのバランスが良いため、「どのように生活し、どのように働くか」を自分自身の指標をベースにしながら形作りやすい環境です。仕事中心で通勤しやすい立地かばかりに重点をおいていた人も、リモートワークの普及で多様な働き方ができるようになってきました。「どこに住むか」だけでなく「どこで働くか」を自分で選べるようになり、住居選びの基準を生活に重点をおいて選択できるようになった点も特徴的です。

潜在的なニーズの表面化

「都心から程よい距離にある郊外に住みたい」という潜在的なニーズは、通勤のしやすさやコロナ禍に関係なく存在しており、そのニーズが表面化したことが新経済圏の形成へと少しずつ繋がっているともいえます。

特に、郊外は都心に比べて自然豊かな場所が多く、スポーツ施設も充実している点も特徴的です。都心に住むことに価値を見出す人ばかりではないため、多様なニーズにより郊外を住まいとして選ぶ人がでてきたのだといえるでしょう。

国道16号線が移住先に選ばれる新経済圏としての魅力

国道16号線が移住先に選ばれるのには、新経済圏としてそのエリアにどのような魅力があるからでしょうか。考えられる4つのポイントを解説します。

アクセスのしやすさ

国道16号線は古くから日本の流通網として活用されてきただけあって、アクセスのしやすさに優れている点が特徴的です。成田空港にも近いため、国内外を問わずヒトとモノの大動脈としての役割があります。

ビジネスパーソンが魅力に感じる「住みやすさ」の指標として、「文化・交流」や「環境」などがありますが、「交通・アクセス」も重要な要因の一つです。アクセスのしにくさは、生活の質や満足度を下げるきっかけになるため、経済の指標としても重視される点といえるでしょう。

耐震性の高い地盤

地震大国の日本では、地盤の耐震性も指標の一つです。東京のエリアの中には地盤が緩い場所もありますが、国道16号線のエリアは比較的地盤がしっかりしており、建物の建設に向いているといわれます。

住まいは一生モノの投資であるため、長期的な見方で立地を選定することが重要です。ここ数十年以内に都心直下型地震が高確率で発生すると予測されていることから、「より地盤のしっかりした場所に住みたい」「地震被害のリスクの低い立地が好ましい」というニーズがあるのは当然でしょう。

教育環境の充実

国道16号線エリアには100以上の大学キャンパスがあり、その周辺には学習塾も充実しています。また、先述したとおり近くには山や海などの自然も豊かで、休日には野外活動やアウトドアスポーツも楽しむことが可能です。子どもの養育環境として理想的なだけでなく、大人にとってもキャンプや散策を楽しめる環境といえるでしょう。

まとめ

今回は国道16号線への移住や、新経済圏がコロナ禍によってどう変化するのかをみてきました。要点は次のとおりです。

  • 国道16号線エリアは、首都圏から3040km離れた範囲内(郊外)を走っている約330kmの環状道路であり、日本の歴史における重要な拠点として活用され続けている地域である。    
  • 国道16号線への移住がコロナ禍で増える背景は、都会での密を避ける目的だけでなく、子育て世代の郊外ブームや多様な働き方の普及、潜在的なニーズの表面化なども一因としてあげられる。

投資を検討するエリアがどのような特徴をもっているか、人々のニーズや背景への理解は、不動産投資をする際の適切な戦略にとって重要な観点です。

本記事では国道16号線のエリアについて言及しましたが、立地の将来性を見据えることはどのような不動産投資でも求められるでしょう。ご紹介した内容を、ご自身の不動産投資の知識や投資戦略にぜひお役立てください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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