近年、日本各地で過去になかったような自然災害が頻発しています。
特に集中豪雨による「水害」は以前と比較にならないくらい増加しています。
2021年8月の集中豪雨でも、九州地方を中心に過去最大の降雨量を記録した地域が多くありました。
このような状況を鑑みて不動産取引時に、ハザードマップの説明が重要事項説明に盛り込まれるように法律が改正されたほどです。
水害をはじめとした災害リスクが高いエリアの物件では融資の内容に影響するのでしょうか。それとも無関係なのでしょうか。
こちらの記事で解説していきますので、これから不動産投資を検討されている方は、ぜひ最後までお付き合いください。
テレビや新聞での報道にもあるように、近年水害や土砂崩れなどのニュースを多く耳にするようになりました。
2021年(令和3年)に、7月3日には「伊豆山土砂災害」が発生しました。
つい先日の8月11日~15日には、西日本を中心とした「大雨」が降り、各地で甚大な被害が出ています。
伊豆山土砂災害では、梅雨前線による豪雨が原因となって起こりました。
西日本から東日本にかけて梅雨前線に暖かく湿った空気が次々に流れ込んで、大気の状態が非常に不安定となり、土砂災害が起きた熱海市では48時間の間に321ミリもの降水量を記録して7月の観測史上最多の降雨量となっていました。
これを受けて、静岡県熱海市には災害救助法が適用されることになっていました。
また、先日の大雨では梅雨末期に近い気圧配置となって、「線状降水帯」が発生し、九州北部の佐賀県嬉野市では降水量が1,000ミリを超えました。
年間雨量の50%以上を超える地域も出るなど、全国各地において記録的な大雨となり、土砂崩れや河川の氾濫などが相次ぎました。
嬉野市がある佐賀県をはじめ、島根県、広島県、福岡県などには災害救助法が適用されることになりました。
九州北部は、ここ近年毎年のように水害に悩まされています。
この2~3ヶ月の間だけでも、雨が原因となる大きな災害が起きており、地球温暖化の影響とする専門家の声もあります。
日本各地において、今後このような水害が、いつ・どこで起きてもおかしくない状況となってしまっているのが現状です。
第1章で解説してきたように、近年では大雨による水害が頻発しています。
以前にも増して、甚大な被害となるケースが増えてきており、不動産の取引においても水害に係るリスクについても情報が大切になってきています。
国土交通省では2020年の7月に、取引対象不動産についてハザードマップを用いた所在地の確認を重要事項説明に盛り込むことが義務化され、同年8月より施行されています。
国としても、水害をはじめとした災害リスクを重要視していることが分かります。
出典 国土交通省
ハザードマップは、「自治体名+ハザードマップ」で検索することができます。
東京都のハザードマップは、下記リンクからご覧いただけます。
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/river/chusho_seibi/index/menu03.html
以下は、東京都千代田区のハザードマップです。
出典:東京都千代田区
大雨などで荒川が増水して氾濫してしまった際に影響を受けるエリアが着色されています。
区全体でみてみると、川に近い東側が浸水の可能性が高く、西側にいくほど浸水リスクが低くなっています。
不動産投資において成功をおさめるためには、利回りの良い物件を手に入れるのと同等かそれ以上に、災害リスクの回避が重要となります。
ハザードマップで水色になっている部分は、3m近い浸水が予測されている地域です。
3mともなると、1階~2階部分が浸水してしまうため、区分マンションであっても1階~2階への投資は、避けるべきだといえるでしょう。
少しでも浸水のリスクがある地域においては、購入前に慎重かつ十分な検討が必要と言えるでしょう。
不動産投資で収益不動産を購入する際には、金融機関から融資を受けることが一般的です。
融資の可否は、「オーナー個人の属性」と、「物件自体の評価」によって決定します。
オーナー個人の属性は、年収、勤務先、勤続年数、他の借入状況などです。
物件自体の評価とは、端的に言えばオーナーに万が一のことがあった、または物件が滅失してしまった際に、融資したお金をきちんと回収できるかどうかという視点になります。
きちんと回収できる可能性がない物件では、貸してもらえません。
ほとんどの金融機関は、融資をする際に火災保険への加入を義務化しています。
これは、火災やその他の災害で不動産がなくなってしまったとしても、保険金等によって融資した金額が返って来なくなるリスクを軽減しているのです。
つまり、水害が発生しやすいエリアの不動産においては、きちんと保険に加入しているか、いくら保険金が支払われるのかといったことも融資の判断基準になる可能性もあります。
オーナーにとっては、保険に入るだけでコストアップ、保険金額を増やそうとすると、さらに保険料が上がってしまうため、キャッシュフローに影響が出てしまいます。
直接的な融資内容には影響が出ないかもしれませんが、条件面で縛りが生まれる可能性も出てくるといえるでしょう。
浸水実績図が、東京都建設局より公表されています。
出典:東京都建設局
最新版が平成23年(2011年)~平成27年(2015年)のものですが、色がついている13の市区で浸水があったことを示しています。
逆に、色がついていない市区町村では浸水がなかったことになります。
江戸川区は浸水の実績があり、かつ東京湾に面しているため危険度が高いと感じた方もいらっしゃると思いますが、区全体危険度が高いというわけではありません。
実際に浸水したのは、上の浸水実績図の青くなっている地域になります。
東京都においては、東京湾に面している自治体が必ずしも浸水実績があるわけではありません。
海に近いエリアの浸水リスクが一見高いように思われがちではありますが、実際には一概にそうでもなさそうです。
実際の細かいエリアで、浸水リスクが気になる方は、「浸水リスク検索サービス」を活用してみると良いでしょう。
出典 東京都建設局
もう1点は、地震の災害リスクをどう抑えるかということについてみていきます。
日本は、地震大国です。
2011年には東日本大震災が起こり、家屋の倒壊のみならず津波や火災といった2次災害によって被害が拡大してしまいました。
不動産投資をしていくにあたって、火災保険や地震保険などに加入していれば、補償はされます。
しかし、起こらないに越したことはありません。
「地震に関する地域危険度調査」が東京都都市整備局から公表されています。
この調査では、都内において「建物倒壊」及び「火災」の危険度を5段階で示しています。
下の図は、東京都の地図です。
水色のエリアは危険性が低く、オレンジや茶色になっているエリアは危険性が高いことを示しています。
出典:東京都都市整備局
細かいエリアの危険度を知りたい方は、下記のリンクから調べてみてください。https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/chousa_6/home.htm#data1
物件を選定の段階から浸水、地震などのリスクをきちんと考慮して、投資用不動産を購入することが大切となります。
どのような地域のどの物件であっても災害に遭う可能性をゼロにすることは残念ながら不可能です。
大切なのは、災害に巻き込まれる可能性を下げることと、万が一災害に遭ってしまった際の備えです。
巻き込まれる可能性を下げるという意味においては、水害についてはハザードマップの活用や浸水実績図の活用、地震については地域危険度調査の活用し、リスクの高いエリアの物件に手を出さないなど事前に打てる対策はあります。
また、万が一の備えとしては保険の活用です。
危険度や保険料を考慮した上で、どのくらいの補償を受けられると良いのか、総合的に判断をするようにしましょう。
近年、自然災害が増加してきていることを受け、災害リスクが融資に与える影響について解説してきました。
ご理解いただけたでしょうか。
今後不動産投資を始めるにあたって、物件を探している方は、こちらの記事の内容を参考にしていただけますと幸いです。