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不動産特定共同事業法とは?法律の概要と法改正のポイントを分かりやすく解説!

2023/05/29
不動産特定共同事業法とは?法律の概要と法改正のポイントを分かりやすく解説!

 「不動産投資について調べていたら、不動産特定共同事業法って法律を目にする機会が増えてきた気がするなぁ・・」

少額から不動産投資ができる、不動産投資型のクラウドファンディングサービスが増えてきています。

不動産会社がクラウドファンディングのサービスを行うためには、不動産特定共同事業法に定められた要件を満たす必要があります。

実際に、不動産投資型のクラウドファンディングに出資をする前に、不動産特定共同事業法についてポイントだけでも理解しておきたいという人は少なくありません。

今回は、不動産特定共同事業法の概要と、法改正のポイントを中心に解説していきます。不動産特定共同事業法について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお付き合いください。

不動産特定共同事業法(不特法・FKT法)について

まずは、不動産特定共同事業法について詳しく解説していきます。

不動産特定共同事業法の概要

 不動産特定共同事業法は不特法(ふとくほう)もしくは、FKT法とも呼ばれ、1995年4月に施行された法律になります。

不動産投資型クラウドファンディングなどの不動産特定共同事業について、適正な運営や、投資の利益保護を目的として定められた法律であり、社会のトレンドに合わせて、2013年、2017年、2019年と法改正が進み、不動産クラウドファンディングの発展・促進を図るために法整備が進められています。

不動産特定共同事業法の歴史・背景

不動産特定共同事業法は、バブル崩壊の教訓を元に施行されました。
バブル崩壊に伴い、不動産小口化商品を取り扱っていた多くの企業が倒産してしまい、多くの投資家が損失をしてしまいました。

不動産小口化商品とは、高額な不動産の権利を分割して、少額から投資をできるように商品化をし、多くの投資家から出資を集めて不動産投資を行う商品のことです。

不動産特定共同事業法が整備される前は、企業基盤が脆弱であっても取り扱いができてしまったため、バブル崩壊をきっかけに多くの企業が倒産、結果として投資家に被害が出てしまいました。

不動産投資家を保護していく目的で、1995年4月から不動産特定共同事業法が施行されることになりました。

不動産特定共同事業法の許可要件

不動産特定共同事業法により、不動産特定共同事業をおこなうためには、国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要となります。

許可制度になることで、認可を受けた事業主だけが不動産特定共同事業を運営できるようになりました。

許可を受けるためには、資本金の下限、適切な人員や管理者が配置できることなど多岐に渡り、結果として、健全な事業主だけが事業を行えることで、投資家の保護に繋がっています。

参考として、許可要件について以下の図を参考にしてください。

出典:国土交通省、不動産特定共同事業法の概要より転載

2013年(平成25年)不特法改正のポイント

2013年に改正された不動産特定共同事業法のポイントとしては、倒産隔離型の事業を可能とする特例事業の制度が導入されました。
特別目的会社(SPC)を活用することで、不動産特定共同事業法の許可を得なくても、例外的に不動産特定共同事業を運営できるようになりました。

特別目的会社とは、資金調達や債券発行など、投資家への利益配分を目的として設立される会社になります。

結果として、大手の機関投資家と関わりがある大手の不動産会社は、許可を得ることなく、不動産特定共同事業に参入できるようになりました。

しかし、中小の不動産会社にとっては、参入ハードルは高いままでした。

2017年(平成29年)不特法改正のポイント

2017年に改正された不動産特定共同事業法のポイントとしては、不動産特定共同事業に参入するための規制緩和と、電子取引のための法整備があります。

小規模不動産特定共同事業の創設

不動産特定共同事業法は許可制を採用しており、限られた事業者だけが不動産特定共同事業を行える仕組みでした。

しかし、2017年に「小規模不動産特定共同事業」が創設され、事業に参入するための要件が緩和されました。

事業主の資本金や出資金の要件が緩和されることで、大手の不動産業者だけではなく、中小の不動産業者でも不動産特定共同事業に参入しやすくなり、投資家が選べる商品の選択肢が増えるきっかけとなりました。

電子取引による対応

不動産特定共同事業のさらなる発展に向けて、不動産投資型クラウドファンディングを電子取引業務と定義されました。

電子取引業務をスムーズに行うために、書面交付についても電子化が進められています。

クラウドファンディングは商品の特性上、インターネットを通じて申し込みをするケースが多いですが、契約が成立する都度、書面の送付が義務付けられていました。

しかし、2017年の法改正によりインターネットを用いた電子的なやり取りが可能になりました。

投資家にとって、また不動産事業主にとってもスムーズな手続きができるように環境整備が整えられました。

2019年(平成31年)不特法改正のポイント

2019年に改正された不動産特定共同事業法のポイントとしては、電子取引におけるガイドラインの策定と、不動産特定共同事業への参入要件の見直しがあります。

電子取引ガイドラインの策定

2017年の法改正によって電子取引が普及するとともに、不動産事業主にとって電子取引がスムーズに行えるように業務体制を整える必要がありました。

そこで、投資家保護のために、整えるべき業務体制や情報開示項目などがガイドラインとして明確化されました。

具体的には、以下の6つがガイドラインとして定められました。

  1. 電子情報処理の組織管理
  2. 適切な審査
  3. クーリングオフ
  4. 定期的な情報提供
  5. 重要事項の閲覧
  6. 分別管理の徹底及び金銭信託の預託

不動産特定共同事業を行う不動産事業主はガイドラインに沿って、投資家への情報提供を行うように整備が整えられました。

不動産特定共同事業への新規参入要件の見直し

不動産特定共同事業を行う許可の申請について、直近3年の決算書類の提出が義務付けられていました。

そのため、実質的に新規法人の参入ができない制度になっていたのです。

2019年の法改正では、新規法人であっても不動産投資型クラウドファンディングが行えるように、不動産特定共同事業の許可が得られることが明確化されました。

つまり、設立3年以内の新規法人であっても、不動産特定共同事業に参入できるようになりました。

不動産特定共同事業法に基づいた不動産投資商品について

最後に不動産特定共同事業法に基づいた、不動産投資商品について簡単に解説していきます。

不動産投資型クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、不特定多数の出資者がインターネットを経由して、特定の目的のためにお金を出し合うのが特徴です。

クラウドファンディングの仕組みを応用して商品化されたのが、不動産投資型クラウドファンディングになります。

不動産投資型クラウドファンディングとは、不動産特定共同事業法に基づいて行われる事業に対して、多くの投資家から出資を集め不動産に投資を行います。

そして、不動産投資から得られた利益を出資金に応じて投資家に利益を分配する仕組みです。

現物の不動産に投資をするので、個人だと投資ハードルが高いですが、インターネット上で多くの投資家から資金を集めることで、都心の一等地の優良物件や、商業ビルなどにも投資をしやすくなります。

不動産小口化商品

不動産小口化商品とは、不動産の権利を小口化して、多くの投資家に出資を募り、集まった資金で不動産投資を行う商品になります。

不動産の運用や管理は不動産事業主に任せることができ、ビル管理や、入居者の募集などの手間を減らして不動産に投資をすることができます。

例えば、10億円の不動産に個人で投資するのはハードルが高いですが、1口100万円に小口化することで、100万円の投資で10億円の不動産の1000分の1の権利を取得できるのです。

もちろん、収益の配分は購入した持分割合に応じて得ることができます。

不動産特定共同事業法のまとめ

不動産特定共同事業法とは、不動産特定共同事業に出資をする投資家の保護を目的として施行された法律になります。

不動産特定共同事業には、不動産投資型クラウドファンディングや、不動産小口化商品といった商品があり、少額から不動産投資ができることから注目を集めています。

個人ではハードルが高いと思われている不動産投資ですが、不動産投資型クラウドファンディングや、不動産小口化商品を活用することで、不動産管理の手間を減らしながら、不動産投資の利益を得ることができます。

ハードルは下がっても不動産投資には元本割れのリスクもあります。

少額から不動産投資を始められるので、資産形成の手段の1つとして、各商品の特徴を比較検討して、ご自身に合ったスタイルで始めるのが大切です。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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