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【後編】“不動産テック”最前線 日本が誇る不動産テック(REAL ESTATE TECH)のポテンシャルは?

【後編】“不動産テック”最前線 日本が誇る不動産テック(REAL ESTATE TECH)のポテンシャルは?

前回のコラムで不動産テックの本場アメリカの事情を少しだけ紹介した。今回は、注目されている日本の不動産テック企業やサービスを紹介したい。中でも読者が気になる不動産投資に近い企業を中心に取り上げてみよう。

回のコラムはこちらから

ローン借り換え提案が魅力のMFS

最初に紹介するのはMFS(東京・千代田区)だ。同社が提供するのは不動産ローンに関連したサービスだ。住宅ローン(英語でモゲージ)を冠にしたサービスやアプリを開発しており、「モゲチェック」は、自分がいまいくらまで住宅ローンが借りられるのかが分かるもので、利用者が増えている。

しかし、不動産投資家にとっては「モゲチェック・プラザ」が最も役立ちそうだ。このサービスは各社が提供している住宅ローンの中から、金利や返済期間などの条件を考慮して、自分にとって最適な住宅ローンへの借り換えを提案してくれるもの。不動産の購入時から、特に意識することなく払い続けている住宅ローン人は多いが、このサービスを使えば総支払額を大幅に削減したり、月々の返済額を減らすこともできる。金利の安い銀行に借り換えることで、総支払額が1000万円以上も安くなることも少なくないという。

自宅用の住宅ローンからスタートしたサービスだが、昨年から投資用アパートローンの借り換えサービスも始まった。相談は無料で、同社のアドバイスで借り換えが実施された時のみ手数料を支払う仕組みで、それも削減額の範囲内で支払える金額になっている。

また、一度相談すれば、借り換えをしなくても、刻々と変わる金融機関の状況に応じて現時点で最適なローンをメールなどで提案し続けてくれるのも、うれしいサービスと言えるだろう。すでに投資用の不動産を購入している人ならば、一度は話を聞いてみたくなるはずだ。

良質の口コミサービス維持するマンションノート

投資用不動産の購入を判断する上で、役に立ちそうなのがマンションノートだ。レンガ(東京都港区)が運営しているこのサイトは首都圏を中心に全国のマンションに関する口コミを集めたもの。住民や元住民、近隣の住民などの貴重な生の声を知ることができる。

マンションの口コミならば他の専門サイトや5ちゃんねるまで幅広くあるが、マンションノートがすごいのはヤラセや悪意のある誹謗中傷を極力排除する仕組みがあるところ。

例えば、口コミを書き込む時に良いことと悪いことの両方を書き込まないといけない設定になっている点もそうだ。悪意を持った人が長文の悪口を書き込んだ上で、良い点を少しだけ書いたりすると口コミとして採用されないこともあるようだ。書き込んだ口コミはすぐには反映されず、サイト運営側でチェックしてから、口コミとして採用するか決めているという

利用者は、実際に住むために口コミを参考にしたい人が多いようだが、口コミには投資用のマンションを購入しようとする人にも役立つ話題が満載だ。例えば、「ゴミ出しのマナーを守らない住民が多い」といった不満から、「管理が行き届いていて、とても良い住環境でした」といった高評価まで幅広く知ることができる。

「マンションは管理を買え」とは古くからある格言だが、購入後のトラブルを避けたいなら「投資用マンションもまた管理を買え」だ。利回りや物件価格だけではなく、購入前の口コミもしっかりと確認しておきたい。

賃貸物件ビッグデータで収益分析、Gate.

最後はリーウェイズ(東京都港区)の不動産投資に特価した物件の収益分析サービス「Gate.」(ゲート)だ。

投資用不動産を購入する時は、現状の家賃などから表面利回りを計算して、それが重要な判断材料になる。しかし、時間の経過とともに家賃は下落するため、長期的な収支計算は表面利回りとは別に考えなければならない。

ところが、地域や物件種別によって家賃の落ち方は大きく違うため、プロの投資家でも数年先の予想で精一杯だったりする。そのため、家賃が下落しづらいとされる都心に投資が集中するのだが、これが物件価格の高騰と利回りの低下を招いている。

ゲートでは価格と表面利回りに加えて、将来の家賃下落を予想し、売却するまでの総利益を予想することができる。つまり、購入後から売却して利益を確定するまでの全期間での投資利回りの判断ができるのだ

これを支えているのは、膨大な賃貸物件のデータだ。世に出ている賃貸物件の入居者募集情報を何年にもわたって蓄積し、分析することで将来の予想を可能にしたという。

現在、投資用不動産の販売会社向けに提供されているほか、金融機関でも不動産への融資判断のための新しい指標として利用が進んでいる。今後、利用する企業が増えてさらなるデータに蓄積があれば精度はさらに高まるはずだ。

シェアリングサービスも不動産投資の可能性拡大

今回取り上げた3つのサービス以外にはシェアリングサービスが不動産投資に役立ちそうだ。民泊や駐車場のシェアリングサービスは、不動産が生む収益を高めてくれる可能性がある。

しかし、Airbnbに代表される民泊はここ数年で一挙に増加した。賃貸マンションを民泊に用いることで、住居として貸す場合の何倍もの収益を上げることもあった。しかし、あまりに急速に増えすぎたことや、昨年施行された民泊新法によって規制が強化されたことなどから、最近ではそれほど高い収益を上げることは難しくなったといわれている。

シェアリングサービスについては、最新の状況を含めて別の機会に取り上げたい。

株式会社グローバル住販(THEグローバル社グループ)

株式会社THEグローバル社(東証1部上場)を中心とした企業グループで不動産開発~販売~管理を一貫して行う。従来からの実需用住宅に加え、近年はホテル運営や投資物件開発・販売等へと事業領域を拡大している。

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