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不動産投資を無借金で行うメリットとデメリットを解説

2020/01/21
不動産投資を無借金で行うメリットとデメリットを解説

不動産投資というと、銀行から多額のローンを借入して行うイメージがあります。

しかし一方で、無借金で不動産投資を行う不動産投資家も少なくありません。では一体、無借金で不動産投資をするメリットはどこにあるのでしょうか?

この記事では、不動産投資を無借金で行うメリットやデメリット(リスク)、成功させるために必要なポイントをわかりやすく解説します。

不動産投資における無借金経営とは?

不動産投資における無借金経営とは、銀行などの金融機関から一切借入などを受けずに、不動産投資を行うことです。

物件や土地の購入で多額の初期投資が必要となるため、一般的には借入(借金)を行なった上で不動産投資を始めますが、中には借金をせずに不動産投資を行う方もいらっしゃいます。

自己資金いくらを持っているかにもよりますが、無借金で不動産投資を行う方の多くは、貯金した数百万円ほどの資金を元手に、中古の格安物件を購入するところからスタートする割合が多いです。

また、日々行う物件の管理については大家の方自身で行い、なるべくコストを抑えるケースが多いです。

不動産投資を無借金で行うメリット

不動産投資を無借金で行うと、どのようなメリットを享受できるのでしょうか?

今回は、不動産投資を無借金で行うメリットを3つご紹介します。

利子の支払いが不要

不動産投資を無借金で行う一つ目のメリットは、利子の支払いが不要となる点です。

金融機関から借入を受けた上で不動産投資を行う場合、定期的に「利子」を支払う必要があります。

利子とは、借入を行なった側が、お金を貸した側に対して定期的に支払うお金です。つまり、不動産投資において利子は、物件の運営で必要となる資金を貸してもらっている対価として支払うものです。

具体的な金利は借入先によって異なりますが、およそ2〜4%程度(年間)です。たとえば5,000万円借入した場合、年間で支払う利子の額は100万円〜200万円となります。

よほど不動産投資で儲かっている場合を除いて、利子の支出はとても大きな負担となるでしょう。

そんな利子ですが、最初に借りた資金(元本)とは別に支払う必要があります。

つまり資金の借入を行うと、無借金で行う場合と比べて支出が増えてしまうのです。この余計な支出を抑えられる点が、無借金経営の魅力と言えるでしょう。

元本返済による資金繰りの悪化リスクがない

元本返済により資金繰りが悪化するリスクがない点も、不動産投資を無借金で行うメリットの一つです。

当たり前ですが、借入を行なった上で不動産投資を行う場合、定期的に元本を返済する必要があります。たとえ不動産投資が上手くいっていなくても、基本的に元本の返済は当初の計画通りに進めなくてはいけません。

そのため、元本の返済をきっかけに資金繰りが悪化する可能性があります。資金繰りの悪化が続くと、最悪の場合不動産投資を続行できなくなってしまいます。

一方で、不動産投資を無借金で行うと元本返済が不要であるため、返済による資金繰りが悪化する心配はありません。

そもそも不動産投資では、空室リスクや価格下落リスクなどにより、家賃収入が突然減少する可能性があります。突発的な収入の減少が起こり得ることを考えると、無借金経営で支出を普段から下げておくことは効果的な戦略と言えます。

物件を担保に出さずに済む

最後にお伝えするメリットは、購入した不動産を担保に出さずに済む点です。

融資を受けて不動産投資を行う際には、ほとんどのケースで投資用の不動産を担保に出す必要があります。仮に不動産投資が上手くいかず資金の返済が不可能となった場合、金融機関は担保に設定されている不動産を売却する形で資金を回収します。

つまり不動産投資が失敗すると、せっかく購入した不動産を失ってしまいます。これまで不動産投資に費やした努力が水の泡となってしまい、手元には何も残りません。

無借金で不動産投資を行えば、不動産に担保を設定せずに済みます。そのため、万が一不動産投資が失敗に終わっても、不動産は最悪手元に残ります。

手元に残った不動産を売却してキャッシュを得ることもできますし、相続して家族に資産を残すこともできます。

不動産投資を無借金で行うデメリット(リスク)

無借金で行うと多くのメリットを得られる一方で、注意すべきデメリットやリスクもあります。

不動産投資を無借金で行うか迷った場合には、下記3つのデメリットも考慮した上で最終的な判断を下しましょう。

レバレッジ効果によって大きな利益を得るのが困難

不動産投資を無借金で行う最たるデメリットは、レバレッジ効果による大きな利益を得られない点です。

借金にはリスクがつきものですが、一方でレバレッジをかけられるという側面があります。

自己資金で不動産を購入する場合、資金を貯めるのに数年〜20年かかり、貯まった段階でようやく賃貸経営を始めることができます。

一方で不動産を全額借入で購入した場合、今すぐ賃貸経営を始めることができる上に、借金を完済したら全ての収入が自分自身の手元に残るようになります。

つまり借入を利用した方が、すぐに不動産投資を始められるため、長期的により多くの収入を得られるのです。長期的な目線で見ると、不動産投資のリターンがスケールしにくい点は無借金経営における致命的なデメリットです。

無借金経営を実現するまでに時間がかかる

意外なことですが、借入を有効活用するケースよりも、ご自身で全額用意するケースの方が、無借金経営を実現するのに時間がかかる傾向があります。

たとえば初期投資で3,000万円必要な不動産投資を無借金で行う場合、年間200万円貯金できる人の場合は全額用意するのに15年かかります。一方で、3,000万円全額を借入した場合、年間家賃収入が300万円だとすると、投資資金を10年で回収でき、それ以降は無借金で経営できます。

たしかに家賃収入を得られないリスクこそあるものの、上手くいけば融資を利用した方がかえって無借金の経営にいち早く移行できるのです。

自己資金では購入できないような優良物件を購入できない

入居者が絶えないような優良物件や土地を購入するためには、多額の初期投資が必要となります。よほどビジネスで成功している起業家などでない限り、多額の初期投資を全額自己資金で準備するのは困難です。

優良物件や利便性のある土地などを購入できないと、入居者が集まらないリスクが高くなります。極端な話ですが、スーパーや駅から遠い場所の物件や、築50年でボロボロのアパートを何もせずに運営しても、空室を埋めるのは難しいでしょう。

長期的な収益性を考えると、無借金での不動産投資はかえってリスクが大きい場合もあるので注意が必要です。反対に「自己資金ゼロ円で始めるリスク」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。

関連記事:自己資金ゼロ円はやめるべき?知っておくべき不動産投資に必要な費用

不動産投資を無借金で行うポイント

最後に、不動産投資を無借金で行う上で、ぜひ知っておきたい3つのポイントをご紹介します。

安く買える優良物件を根気強く探す

無借金経営で不動産投資を行う場合、やはり資金面の問題で優良な物件を購入することは困難です。一等地にある物件や好立地の物件、ほぼ新築でキレイな物件は、どうしてもお値段が張るため、融資を受ける必要が出てきます。

ただし根気強く探すと、ちょっとリフォームしたら顧客が集まるような物件や、今後都市開発により人口が増える場所にある物件など、いわゆる「お宝物件」を安く買えることがあります。

現時点で明らかな優良物件(好立地・築年数が浅いなど)を安く購入することは難しいでしょう。しかし一手間加えることや、今後の需要次第で優良物件に生まれ変わる不動産は安く買えることもあります。

無借金で不動産投資を始めたい方や、こうしたお宝物件を根気強く探すと良いでしょう。「不動産投資の物件の選び方」に関しては下記カテゴリでも解説していますので参照してみてください。

関連記事:不動産投資物件選び

自己資金によって購入できる物件が制限される

前項で安くてもお宝物件を購入できるとは言ったものの、やはり無借金では購入できる物件が制限されるのも事実です。

そもそも、手を加えたからと言って必ずしも優良物件に生まれ変わるとも限りません。また、今後街が再開発されたからと言って、ボロボロのアパートに入居者が集まるとは考えにくいです。

不動産投資が失敗するリスクを抑えたいとなると、融資を受けてでも立地が良かったり、築年数が浅くきれいな物件を購入したりするのが無難です。不動産投資を無借金で始める際には、物件選びの面で不利になる点を許容できるかあらかじめ考えましょう。

相続する場合の相続税対策としてオススメ

無借金での不動産投資は、相続税対策としても非常にオススメです。

現金を相続する場合は、相続する現金全額を基準に相続税を計算します。一方で建物の相続では固定資産税評価額、土地の相続では「路線価方式」や「倍率方式」に基づいて相続税を計算しますので、相続税の評価額が低くなるため相続税の節税に繋がります。

そのため、同じ1億円を相続する場合でも、現金1億円を相続する場合よりも、1億円分の不動産を相続した方が納税額を減らすことができます。

無借金で不動産投資を行なっていれば、相続税対策のメリットを最大限享受できます。なぜなら借金が一切ないため、実質的に相続前後で資産額を減らすことなく相続を実行できるからです。

単なる資金繰りの安定化のみならず、相続税対策にもなる点で、無借金での不動産投資はとてもメリットの大きな投資手法であるといえます。

まとめ

融資を利用して行うのが一般的な不動産投資ですが、無借金で成功している方も少なくありません。

ただし利息や元本の支出がない一方で、レバレッジをかけられない点など、デメリットも少なくありません。

無借金で行う不動産投資は一長一短なので、実施する際にはメリットのみならずデメリットを許容できるかよく考えなくてはいけません。その際には、最後の章でお伝えした不動産投資のポイントを参考にしてもらえると役立つでしょう。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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