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新型コロナウイルスの影響により拡充した「家賃支援制度」を徹底解説

2022/03/09
新型コロナウイルスの影響により拡充した「家賃支援制度」を徹底解説

今回の新型コロナウイルスの影響を受け、店の営業ができないことや、収入が減少したことによって、「賃借人やテナントが家賃未払いになる」という事態に陥っているケースがどんどん増えています。

その中で、賃借人から家賃の減額交渉を受けているオーナーもいらっしゃるでしょう。

そこでこの記事では、新型コロナウイルスの影響によって拡充した家賃支援制度について解説していきます。

オーナーが家賃支援制度を理解しておき、管理会社経由でその制度について賃借人に知らせることによって、家賃の未払いリスクを軽減させることができるかもしれません。

ぜひこちらの記事をお読みいただき、対策を立てるようにしてください。

住居確保給付金

家賃支援制度として、国が実施する制度である「住居確保給付金」です。

  1. 制度の概要とは?
  2. 給付対象者住居確保給付金については以下を知っておきましょう。
  3. 支給期間と支給額
  4. 支給要件

参考:
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000622924.pdf
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0914_shiryou03_1.pdf

制度の概要とは?

住居確保給付金とは、離職や廃業などによって経済的に厳しくなった人に対して給付金を支給する制度です。

実は、この制度は新型コロナウイルスが流行する前から存在していました。経時的に厳しい状況になる人が増えることを想定し、給付対象者が拡充されたのです。

そのため、今までは給付対象でなかった賃借人も給付対象になる可能性があるため、賃借人にその旨を告知すれば家賃未払いの対策になるでしょう。

給付対象者

住居確保給付金の対象は、現行制度(新型コロナウイルス感染拡大前)だと以下の通りです。

  • 申請日において65歳未満
  • 離職や廃業などをして2年以内
  • 世帯の生計の主であること
  • ハロワークに求職の申込みをしていること
  • 国の雇用施策による給付を受けていないこと

上記に追加して、「給与などが離職・廃業と同程度の状況にある人」も対象になりました。

つまり、離職・廃業したときと同じくらい新型コロナウイルスによって収入が下がった人も、住居確保給付金の対象になったということです。

支給期間と支給額

支給期間と支給額は以下の通りです。

  • 支給期間:原則3か月
  • 支給額:自治体による

支給期間は原則3か月であるものの、求職活動を誠実につづけている場合は最長9か月まで給付されます。

要は、きちんと求職活動をしているにも関わらず就職できない人は、給付期間の延長もあり得るということです。また、支給額は自治体によって異なるので管轄の役所などで確認しましょう。

一例として、東京都特別区では「単身世帯:53,700円」「2人世帯:64,000円」「3人世帯:69,800円」になります。

支給要件

支給される要件は、収入要件・資産要件・求職活動要件と3種類あります。

以下より概要を解説しますが、不明点があれば相談コールセンターなどに問い合わせましょう。

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000622924.pdf

①収入要件

収入要件は世帯収入の合計が「住民税が非課税となる収入額の1/12+家賃額」を超えないことです。

東京都特別区(23区)の目安でいうと以下の収入額になります。

  • 単身世帯:13.8万円
  • 2人世帯:19.4万円
  • 3人世帯:24.1万円

②資産要件

資産要件は、世帯の預貯金の合計が以下を超えないことです。

  • 単身世帯:50.4万円
  • 2人世帯:78万円
  • 3人世帯:100万円

要は、預貯金があるなら預貯金を家賃の支払いに充てられるため、給付対象外になるということです。

③求職活動要件

求職活動要件は、誠実かつ熱心に求職活動を行うことです。

要は就職する意思があり、実際に求職活動していることが給付要件になります。

住居確保給付金は国の制度なので、まずはこの制度の存在を賃借人に告知すると良いでしょう。

地域ごとに行っている家賃支援制度

続きまして、地域ごとに行っている家賃支援制度をご紹介します。

コロナによって制度が拡充していたり追加されていたりという点は、地域ごとに異なります。そのため、どのような家賃支援制度があるかは、お住まいの自治体に別途確認しましょう。

今回は以下の3つの地域をピックアップしてご紹介します。

  1. 新宿区の家賃減額助成
  2. 文京区の緊急家賃助成事業
  3. 神戸市の家賃負担の軽減

新宿区の家賃減額助成

新宿区の家賃減額助成とは、新型コロナウイルスによって売上が減少している事業者への支援制度になります。

以下より対象者や助成額などの概要を解説しますが、詳しくは新宿区のサイトをご確認ください。

参考:https://www.city.shinjuku.lg.jp/jigyo/sangyo01_000001_00017.html

①対象者および要件

助成対象者は、新宿区内に店舗などを構える賃借人です。

要件は以下になります。

・中小企業者もしく小規模事業者

・新宿区内で家賃を減額する物件を2年以上所有している

・2020年4月時点で新宿区に登記(個人の場合は住民票)されている

・2020年4月より引き続き1年以上営業する

②助成額や対象月

新宿区内の店舗などの家賃について、家賃額の1/2が助成額となります。

ただし、助成限度額は1物件につき5万円です。

また、対象月は2020年4月から10月までの最大6か月間であり、1人の賃借人につき5物件が上限となります。

文京区の緊急家賃助成事業

文京区の緊急家賃助成事業は、新型コロナウイルスによって大きな影響を受けている文京区内の中小企業が対象となっています。

助成対象者や助成額は以下の通りですが、こちらも詳しくは文京区のサイトで確認ください。

参考:https://www.city.bunkyo.lg.jp/tetsuzuki/coronakinkyukeizaitaisaku/yachinjosei.html

①助成対象者

助成対象者は以下の通りです。

  • 中小企業もしくは個人事業主
  • 文京区に事業所がある
  • 生活必需品の小売業、卸売業、飲食業など
  • 緊急事態措置などによって休業や営業時間短縮している
  • 直前1か月の売上もしくは営業利益が前年比5%以上減少

②助成金

助成金は事業所の月額賃料(1月分)の4/5以内の金額になります。ただし、限度額は以下の通りです。

・代表者の住所が区内:20万円

・代表者の住所が区外:10万円

また、1事業所1回のみ助成可能です。

神戸市の家賃負担の軽減

神戸市の家賃負担の軽減とは、新型コロナウイルスによって売り上げが減少した中小企業のオーナーに対して、補助金を交付するという制度です。

補助金の概要は以下の通りですが、こちらも詳しくは神戸市のサイトで確認ください。

この制度は上述した新宿区・文京区の制度と違い、テナントではなく物件オーナーが対象になります。

参考:https://www.city.kobe.lg.jp/a31812/yachin.html

①補助対象者

補助の対象者は以下すべての要件を満たす人です。

  • 店舗を貸しているオーナーまたはサブリース会社
  • 2020年4月および5月の本来家賃を1/2以上減額している
  • 新型コロナウイルスによって売上減少などの影響を受けている
  • 神戸市内の店舗である
  • 物品の販売やサービスの提供を行っている

②補助金額

補助金額は2020年4月分および5月分の家賃2か月分に対して、申請者が減額した金額の8/10になります。

たとえば、月額家賃が30万円の店舗オーナーが、4月分5月分の家賃を半額(15万円)にしたとします。

その場合、2か月で30万円減額しているので、その8/10に当たる24万円が補助金の対象です。ただし、1オーナーあたりの上限金額は200万円になります。

この章では、各自治体が個別に行っている家賃支援制度について解説しました。

不動産投資をしている方(貸主側)の新型コロナウイルスによる滞納については下記でも解説していますので参照してみてください。

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そのほかの支援制度も知っておこう

最後に、家賃支援制度以外に新型コロナウイルスによって拡充もしくは創設された支援制度を知っておきましょう。

これらの支援制度を利用することで、賃借人は家賃の支払いが可能になるかもしれないからです。

そのため、上述した住居確保給付金や各自治体の支援制度と合わせて理解しておき、必要であれば賃借人に告知してあげましょう。

今回紹介するその他の支援制度は以下になります。

  1. 持続化給付金
  2. 雇用調整助成金
  3. 新型コロナウイルス感染症特別貸付

持続化給付金

持続化給付金とは、主に個人事業主を対象とした給付金です。

この制度は、新型コロナウイルスの影響で前年同月比において売上が1/2以下に減少した人が対象となります。

たとえば、2019年2月の売上が80万円の人は、2020年2月の売上が40万円以下であれば給付対象です。

ただし、売上が半減した理由は「新型コロナウイルスの影響」によるものでないと給付は受けられないので、自己都合で売上が減少した場合などは対象外です。

最大給付金は100万円になるため、もし持続化給付金の対象になっているのであれば、その給付金を家賃の支払いに充てることができるかもしれません。

なお、法人の場合は上限額が200万円となります。

参考:https://www.jizokuka-kyufu.jp/

雇用調整助成金

雇用調整助成金とは小規模事業主を対象とした制度であり、テナントオーナーが申請する制度です。

具体的には、テナントオーナーが従業員に支払った休業手当について助成してくれる制度になります。

つまり、この助成金を利用することができれば、テナントオーナーは自己負担なく従業員に「休業手当」を支払うことができるというわけです。

実は雇用調整助成金も、上述した住居確保給付金と同じく、昔から存在する制度です。

ただ、現行制度は実際に支払った休業手当の一部しか助成されませんでしたが、新型コロナウイルスによって全額助成に変わったのです。

雇用調整助成金を利用できれば、助成金によって「浮いた分」を家賃支払いに充てられる可能性があります。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

新型コロナウイルス感染症特別貸付

新型コロナウイルス感染症特別貸付とは「コロナ融資」とも呼ばれている制度です。

この制度の概要は、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化している事業者へ貸し付ける制度になります。

  • 最近1か月の売上が前年または前々年同期比5%以上減少
  • 業歴3か月~1年未満の場合は別の計算で5%以上減少ただし、融資対象者は営業で業績が悪化しており、金融政策公庫の場合は以下どちらかに該当する事業者です。

貸付対象者は、借入から3年間は「基準金利-0.9%」の金利優遇が受けられます。融資の上限は6,000万円です。

ただし、この制度は給付や補助金ではなく「貸付」なので、将来的に返済義務がある点には注意しましょう。

とはいえ、この制度を利用すれば有利に借入できるので、その借入で賃借人はキャッシュが潤います。そのキャッシュを家賃の支払いに充てられるかもしれません。

金融政策公庫の他にセーフティネット保証による保証協会を使う融資政策もありますので、融資条件などについて詳しくは東京信用保証協会の「新型コロナウイルス感染症に関する保証制度・相談窓口について」にて確認してみてください。

参考:
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/covid_19_m.html
https://www.cgc-tokyo.or.jp/cgc_covid-19_info_2020-3.pdf

まとめ

このように、新型コロナウイルスの影響で住居確保給付金の対象者は拡充され、さらに自治体によっては独自に家賃支援制度を用意しています。

不動産投資をしている人は、まず自分もしくは賃借人が利用できる家賃支援制度を調べましょう。

その上で賃借人に告知するなど、賃料の未払いを防ぐための対策が重要になります。

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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