不動産投資の利回りの最低ラインはいくつなのかと、気になる方は多いのではないでしょうか。
しかし実は、不動産投資の利回りに明確な最低ラインは存在しません。なぜなら人によって投資する目的が異なり、その目的によっても利回りに対する考え方も変わるからです。
では物件の収益性は、何を基準に見極められるのでしょうか。本記事では物件の利回りの計算方法、利回りを決める条件などについて書いていきますので、利回りの考え方について知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
不動産投資において利回りは数値だけで、不動産収益が決まるわけではありません。ここでは、不動産投資における利回りの考え方や、手残り金額に対する考慮の重要性についてみていきます。
不動産投資の利回りといっても、大きく2つの種類があります。それぞれの違いについてみてみましょう。
表面利回りは下記の式で算出できます。
表面利回り(%)=(年間家賃収入÷物件価格)×100
表面利回りから算出できる家賃収入は、粗利ではありません。つまり表面利回りは、諸経費や管理費などのコストを考慮していない、表面的な収益性を示す利率にすぎないのです。
例えば、年間家賃収入が108万円で、物件価格が2,500万円の物件の場合、表面利回りは「108万円÷2,500万円×100=4.32%」になります
一方で「実質利回り」は、諸経費や税金などの支出を差し引いた利率ですから、下記の計算式にてより正確に投資先の収益力を判断できます。
実質利回り(%)=(年間家賃収入-諸経費)÷物件価格×100
物件の販売図面に記載されている利回りもそうですが、不動産会社がいう「利回り」も、多くの場合「表面利回り」を指します。したがって表面的には高利回りでも、実際に管理費や税金がかかったり、突発的な修理費が発生することもあり、実質利回りが想定より悪かったりするかもしれません。
中には、表面利回りは負けますが、管理費などの諸経費が安くおさえられたことによって、実質利回りが高くなる物件もあります。
下記の例をみてみましょう。
■物件A
■物件B
つまり、利回りの数値だけで物件選定するのではなく、実質的に収益性が高い物件かどうかも大切な判断ポイントといえます。
利回りについてより詳しく知りたい方は、下記の記事を参照にしてみてください。
不動産投資は家賃収入が主な収入源なので、入居者がいなければ収益はゼロになります。
一般的には表面利回りの計算にて空室率を入れていないので、利回りだけで物件を選ぶことは非常に危険です。
つまり、不動産投資では利回りも1つの参考値ですが、「空室が出ない物件かどうか」を選ぶことが最も重要です。相場より高利回りの物件は、なんらかの理由があります。投資物件を選ぶ際は、利回りだけに惑わされず、収益を生む物件かどうかも見極めましょう。
こちらの章では、不動産利回りの最低ラインを決める条件について解説します。
投資物件を選定する際の基準として、ぜひ参考にしてみてください。
当サイトのプロデューサーである、八木チエのYou Tubeチャンネル「不動産投資の女神チャンネル」にて、分かりやすく解説する動画も公開しておりますので、ぜひご覧ください。
収益性の高い投資物件かどうかは、何を基準に判断すればよいのでしょうか。
投資物件を選ぶ際に着目すべき、物件の特徴について説明します。
「RC造<鉄骨造<木造」のように、構造が強固になると物件の利回りの最低ラインは低くなります。
なぜなら投資物件の構造が頑丈になればなるほど物件価格も高くなり、その分利回りが低くなるからです。物件価格はRC造、鉄骨造、木造の順に安くなり、利回りは逆の順番となって、木造の利回りラインは最も高くなります。
なお、物件の法定耐用年数は木造が22年、鉄骨造が34年、RC造が47年と定められています。つまり、構造が頑丈になればなるほど、減価償却が取れる期間は長くなるのです。
投資物件の利回りは地方物件ほど高く、都心ほど低い傾向にあります。なぜなら家賃相場の地域差は少ない反面、物件価格は都心が地方を大きく上回るからです。
たとえば東京の家賃相場は地域によって緩やかではありますが、上昇しています。それでも物件価格の右肩上がりのような上昇幅と比例しません。先述したとおり、利回り(表面利回り)は、「年間家賃収入」を「物件購入価格」で割った比率を指します。つまり物件価格の差が、立地による物件の利回りの違いを生んでいるのです。
築年数の古い物件ほど利回りは高く、築浅物件ほど利回りは低くなる傾向にあります。なぜなら不動産物件は築年数が古くなるほど、購入価格が下がるからです。一方、中古物件は築年数に比例して修繕費や管理費などの支出も増えるため、実質利回りは低く、収支が赤字になる可能性もあります。
なお、新築物件など築浅物件は入居希望者に人気があり、空室のリスクは低めです。また、入居者の需要に乗じて、新築物件の家賃を相場以上に設定することもできます。しかし、新築時の家賃設定が相場より大きく離れた場合、中古物件になったときのキャッシュフローは一気に悪くなる可能性があることを認識しておく必要があります。
「不動産投資の目的」に応じて、利回りの最低ラインは変わります。投資目的にしたがって、利回りの位置付けが決まるからです。
たとえば投資目的がキャピタルゲイン(売買益)の場合は、都内一等地にある物件だと短期間で買い手が見つかる可能性は高く、状況によっては「表面利回り4パーセントが最低ライン」という見方もできます。
また、相続税対策を投資目的にした場合は、利回りよりも物件の資産価値が重要です。資産価値が高い物件は同じく物件価格が高くなるケースが多く、利回りは低くなる可能性が高くなります。
このように不動産投資でも投資目的がさまざまです。そのため、一概に利回りの最低ラインを決められないのが実情です。
ここまで読んでいただいた方には、不動産投資における最低利回りはあくまでもひとつの指標にすぎず、実際のキャッシュフローでの判断が大切だと分かっていただけたのではないでしょうか。
とくに区分マンション投資の場合、フルローンを利用すると借入金額が多くなり、ローン返済額が増えてキャッシュフローを圧迫します。一方で、ローンを組んでの不動産投資は他人資本を活用しておこなうため、低利回りでも資産形成が可能な点がメリットです。
そのため、空室になりにくい物件を選ぶことが最も重要と言えます。収益物件の選び方について知りたい方は、下記の記事を参照にしてみください。
今回は、「不動産投資利回りの最低ライン」の考え方について書きましたが、いかがでしたでしょうか。
本記事の要点は、次のとおりです。
物件自体の資産価値が低いと、最終的な手残り金額は赤字になります。収益物件を選定する際には、利回りだけでなく、実質的な収益を上げるための収支管理も大切です。