不動産売却

親の家を売却する方法は?留意点や税金面を解説!

2020/10/07
親の家を売却する方法は?留意点や税金面を解説!

「相続した親の家を売却したい」、「親の代わりに親の家を売却しなければならない」という状況におかれたらどのように対応すればよいのでしょうか。

自分の名義の家を売却した経験がある方であっても戸惑うことが多いでしょう。

こちらの記事では、親の家を売却する際に出てくる問題や留意点、税金面などについて解説していきます。

親の代理人として売却

代理人になるためには委任状が必要

親に「家を売却したい」という意思があっても自身で売却手続きをすることが難しい場合は、子どもが親の代わり、つまり代理人として売却することが可能です。

代理人になるためには、委任状」が必要となります。

委任状自体に決まった形式はありませんが、不動産会社に相談して、フォーマットをもらうようにしましょう。

委任状の内容

委任状として認められるために必要な内容は、下記の通りです。

  • 売買契約の締結権限や売買代金の受領などに関する委任の範囲
  • 取引条件を親が明確にしたい場合は、売買代金や手付金の金額
  • 売却しようとする不動産の所在地や面積、構造など
  • 委任する人(この場合は親)の住所や署名、実印の押印
  • 代理人(この場合は子ども)の住所や氏名

委任状の他に必要な書類

委任状の他に必要な書類は、下記の通りです。

  • 委任する人(親)の印鑑証明書、住民票、本人確認書類
  • 代理人(子ども)の本人確認書類

仮に、書類がすべて揃っていたとしても、不動産会社から「本当に売却の意思があるかどうか」の確認が親に入ることが一般的です。

成年後見人として売却

成年後見人とは

成年後見人とは、認知症、知的障害、精神障害などの理由で、判断能力の不十分な方に対して、不動産や預貯金などの財産を管理したりする人のことです。

親の成年後見人になったからといって、子どもが好きなようにできるわけではありません。

当然、親のために何かをすることが条件になっています。

成年後見人は裁判所によって選ばれますが、親族であっても必ず選ばれるというわけではありません

不正防止のため、弁護士などが選ばれるケースもあります。

事前に「居住用不動産の処分許可」が必要

親の家(居住用)を売却する場合には、成年後見人となるだけでは条件が足りません。

成年後見人(子ども)が、成年被後見人(親)の居住用不動産を処分するためには、事前に家庭裁判所対して「居住用不動産処分の許可の申立て」を行って、その許可を得る必要があります。

許可を得ずに行った売却は、無効となります。

なお、一度売買契約が済んだのに、後になって無効になってしまうと、買主側から違約金などを請求されてしまう可能性もありますので注意が必要です。

相続した家や土地を名義変更して売却

相続登記が必要

親が亡くなった場合、親の名義のまま不動産を売却することはできません。

不動産の名義を相続人(=ここでは売却する方)の名義に変更する必要があります。

相続登記の流れについて、詳しくは法務局のページにてご確認ください。

出典:法務局

相続登記は自身で行うより、専門家に依頼する方がおすすめ

相続登記は、自身で行うことも可能です。

しかし、必要書類が膨大なので不備が出る可能性があります。

また、手間と時間もかかりますので、スムーズに相続登記を行うためにも専門家に依頼した方が良いといえるでしょう。

相続登記が完了した後、売却する

相続登記が完了したら、自分の名義である土地、家を売却します。

自分の名義となれば、通常の売却の流れと同じになりますので、売却依頼する場合は不動産会社へ相談するようにしましょう。

親の家を売却した際の税金

課税所得の算出方法

家を売却した際に得ることのできる利益のことを譲渡所得といいます。

譲渡所得は、次の式で計算されます。

「売却金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額」

売却金額とは、ここでは家を売却した金額を指します。

取得費とは、ここでは購入代金や購入手数料、設備費や改良費などの合計額から所有期間中の減価償却費を引いた金額を指します。

譲渡費用とは、ここでは家を売却するために直接かかった費用を指します。仲介手数料や印紙税、建物の取り壊し費用などが含まれます。

特別控除額について

マイホーム(居住用財産)を売却した際、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高で3,000万円まで控除できるという特例があります。

つまり、特別控除前の段階(収入金額-(取得費+譲渡費用))で3,000万円に満たない場合は、基本的に非課税となります。しかし、下記のような条件があるので、注意が必要です。

  • 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともに敷地や借地権を売る
  • 以前に住んでいて現在住んでいない場合は、住まなくなってから3年が経過する年の年末までに売る
  • 売った年の前年や前々年に、同じ特例の適用を受けている場合は適用外
  • 買手と売手が夫婦や親子などの特別な関係の場合は適用外

詳しくは、国税庁の「マイホームを売ったときに特例」よりご確認ください。

税額の計算方法

特別控除を受けてもなお課税譲渡所得金額がプラスになる場合は、課税譲渡所得金額に対して、税率をかけて税額を決定します。

税率は、所有期間が5年を超えているかどうかで変わります。

◇長期譲渡所得(所有期間が5年を超える)の場合

長期譲渡所得の場合の税率は下記となります。

「課税譲渡所得金額×15%(15.315%)」

※令和19年までは、復興特別所得税がかかるため(  )内の税率です。

◇短期譲渡所得(所有期間が5年以下)の場合

短期譲渡所得の税率は下記となります。

「課税譲渡所得金額×30%(30.63%)」

※令和19年までは、復興特別所得税がかかるため(  )内の税率です。

所有期間が5年を超える場合と、そうでない場合とでは非常に大きな差があります。

所有期間が5年に達しているか微妙なケースでは、焦って売却せずに税務署などに相談してから時期を遅らせることをオススメします。

確定申告を忘れずに!

課税譲渡所得金額がプラスになる場合や3,000万円の特別控除を受けて非課税になる場合どちらも、確定申告が必要となりますので忘れないようにしましょう。

確定申告の時期は、売却した翌年の2月16日~3月15日(年によって前後する可能性あり)です。

親の家を売却する際の留意点

親族間でのトラブルの可能性

親の家を売却することになったら、事前に親族に報告や相談をしておくとよいでしょう。

法律的には、親の家を売却する際に許可等を得る必要はありません。

しかし、自身の兄弟姉妹やその家が実家の親戚(例えばおばさん)などは、その家に大きな愛着を持っている可能性もあります。

「勝手に売って、自分の懐へ入れてしまった」などと思われたり、言われたりしないように留意することが大切です。

買主とのトラブルの可能性

不動産を売却する際に、「瑕疵担保責任」があります。

売却した後、土壌汚染やシロアリ、事件や事故など「隠れた瑕疵」が見つかった場合には、契約解除や損害賠償などにも発展しかねません。

親の家を売却する際にも、親や兄弟姉妹に確認して、何か思い当たることがあれば、後になってトラブルに巻き込まれないためにも不動産会社へ伝えておいたほうがよいでしょう。

売主側が認識している瑕疵について、契約時に買主に対して、その不具合内容を説明したうえで、納得してもらっていれば、一般的にはその瑕疵について責任を負う必要はありません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

親の家の売却方法、売却した際に出てくる問題や留意点、税金面に関して、ご理解いただけたと思います。

とはいえ、親の家を売却すること自体、誰もが一生に一度経験するかしないかの案件ですので、経験豊富な方は少ないでしょう。

親の家の売却のことで、困った場合には、ぜひ不動産会社などのプロに頼るようにしましょう


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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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