不動産投資の融資を受ける際には、出来るだけ低い金利で取り組みたいとお考えの方は多いと思います。しかし、一般的に不動産投資よりも金利の低いとされている、住宅ローンを不動産投資に不正利用することは違法です。過去には、低金利の住宅ローンである「フラット35」を不動産投資に利用していた投資者が、契約違反として残債の一括返済を金融機関から求められる問題がありました。
では、オーナーとしてどのような知識を身につけていれば、このようなトラブルは回避できたのでしょうか。本記事では、どうして不動産投資で住宅ローンを組むことは違法なのか、不動産投資で利用できるローンの概要についてみていきます。
そもそも、住宅ローンと不動産投資で用いられるローンの違いはなんなのでしょうか?結論からいうと、住宅を購入する際に用いられるローンと不動産投資で用いられるローンでは、「金融機関から融資を受ける目的」が違います。それぞれのローンの目的は、次のとおりです。
住宅を購入する際に用いられる住宅ローンは、融資を受ける本人や家族が住むための居住用不動産を購入する目的で利用します。つまり、「購入した物件に自分で住むため」のローンです。
投資用物件の購入や建築で用いられるローンは、融資を受ける本人が物件を賃貸して不動産事業を営む目的で利用します。つまり、「購入した物件を第三者に貸し出すため」のローンです。
住宅を購入するために用いる住宅ローンを不動産投資ローンとして利用できないのは、具体的にどのような理由からなのでしょうか。
先述したとおり、住宅ローンはローンの借り手が「住むこと」を目的とした融資であり、ローンの借り手以外に「物件を貸すこと」を目的としていません。したがって居住地としてではなく、投資物件に関することを目的としてのローンの活用は、金融機関との契約に違反することになります。
返済原資とは、融資の返済に充てられる確実な資金のこと。住宅ローンは給与収入か事業収入でローンを返済します。しかし、不動産投資ローンは家賃収入からの返済です。金融機関のローンは目的に応じたサービスが提供されているので、返済原資が異なる場合は、その用途に応じたローンを組む必要があります。
住宅ローンと不動産投資ローンでは、金融機関から借り入られる融資金額が異なります。なぜなら、先述したとおり、住宅ローンと不動産投資ローンでは返済原資に相違点があるからです。融資金額は原則として返済原資をベースに算出されますが、会社員が住宅ローンを組む場合は年収が返済原資となるので、原則として年収5倍くらいまでが上限とされています。一方、不動産投資は事業収入からの返済なので、物件によっては億単位の高額ローンを組める場合があります。
住宅ローンは自己居住用のため、投資を目的としている不動産投資ローンよりも金利が低く設定されています。
会社員は年収の大幅な上昇は少ないですが、退職しないかぎり安定的な収入を得られます。金融機関としてもローン返済がきちんとなされる確率が高いと見込んでいるため、安心して融資を提供できるので、金利も低めに設定されているのです。
対して、不動産投資事業は空室や家賃低下により、事業が失敗してしまうリスクがあります。入居者が入らなかったり、投資者の収支キャッシュフローが黒字にならなかったりすると、ローン返済が滞る可能性もあるでしょう。通常、安定性が低くなると金利は高くなるため、金利が住宅ローンよりも高く設定されているのです。
先述したとおり、住宅ローンと不動産投資ローンでは返済原資が異なるので、融資を受けられるかどうかの審査基準も異なります。
住宅ローンの返済原資は融資を受ける「人」を主に審査するため、融資を受ける人の属性として、雇用体系・会社規模・勤続年数・信用情報の履歴などが重視されます。
一方、不動産投資ローンが融資を返済する資金は家賃収入からなので、「事業性」が重視され、融資審査は住宅ローンと比べて厳しめです。融資を受ける人の属性だけでなく、審査は融資を受ける対象不動産の資産価値と不動産事業計画もあわせて審査されます。
住宅ローンは自分で住むための不動産に組まれるため、融資期間も長く設定されています。ただし、住宅ローンは融資を受ける人の給与で返済されるため、定年退職を迎えた人が住宅ローンを組むのは難しいケースが多いようです。返済期間は最長で35年。条件付の場合は最長で50年まで延長が可能で、融資を受ける人の年齢が79歳まで利用可能なローンもあります。
一方で、不動産投資ローンは投資事業用なので、返済期間はローンよりも短く設定されている場合が多いようです。また、投資物件を保有していれば、定年退職後も家賃収入を得られます。この家賃収入は事業収入としてみなされるため、不動産投資ローンの審査には融資を受ける人の年齢制限が定められていないものもあります。
不動産投資に住宅ローンを利用していると融資を受けている金融機関に知られてしまったら、どうなるのでしょうか?金融機関に利用がばれた際にあり得る2つの末路をみていきましょう。
住宅ローン不動産投資ローンよりも低金利で組める点が魅力でした。したがって、契約違反が発覚した際にはその金利を不動産投資ローンなみの引き上げがなされる可能性があります。
金融機関は住宅ローンの契約時に、契約どおりに返済がされている以上、契約通りに返済し続けられるという条件を設けています。このルールは、「期限の利益」と呼ばれ、金融機関は借り手に対して、早期返済や金利の上乗せなどを求められないというものです。
しかし、借り手の属性や資金の使用用途などが契約時と違えば、契約は無効になります。したがって、金融機関と借り手との信頼関係は壊れ、借り手は「期限の利益」を喪失します。ゆえに、金融機関は借り手に住宅ローンの一括返済を求めることが可能になるのです。
実際には、一括返済を求められても、そのような大金をもっている人は少ないので、多くの投資家は自己破産や賃貸事業の破綻に陥ることとなります。
この章では、不動産投資でローンを組む際によくある疑問を元に、不動産を購入する際の注意点について解説します。
長期出張といったなんらかの仕事の都合で、一時的に自宅から離れて暮らす状況がある場合、空き家となる居住用物件を一時的に賃貸に出すことは可能です。
ただし、貸し出す前には金融機関に住宅ローンを組んでいる物件を貸し出したいという旨の相談をし、承認を得なければなりません。もしも承認を得ずに無断で貸し出しをした場合は、違法行為となって、先述したような金銭的なペナルティを受けることになります。
投資家の中には、悪徳不動産業者から「居住用として住宅ローンで投資物件を購入すれば、高利回りを実現できてより多く儲けられる」と提案されることがあるようです。
しかし、そのような不動産会社からの提案を信用して違法行為となって罪を問われるのは投資者であり、不動産会社には責任が問われません。したがって、不動産投資者ご自身が、悪徳な情報や提案から身を守るために、不動産投資について知識を蓄えることが重要です。
この章では、不動産投資で投資物件を購入したり建築したりする際に受けられる代表的なローンをみていきます。
アパートローンは、一般的な賃貸用の不動産を建築したり購入したりする際に用いられるローンです。
アパートローンの特徴としては「融資資金の使用用とが限定されていること」「住宅ローンよりも融資限度額が高いこと」「事業性のある目的に対する融資であること」などがあります。
プロパーローンとは、事業資金や開業資金を得ることを有し目的として組まれるローンです。不動産向けの事業ローンの取り扱いは多くの場合、地方銀行や信用金庫、信用組合といった金融機関となります。
この種のローンは無担保・第三者の連帯保証人が必要ない形式のビジネスローンを指す場合もあります。しかし、不動産投資におけるプロパーローンとは、「住宅ローン以外の収益物件への投資事業をするためのローン」という位置付けです。
今回は、不動産投資で組めるローンについて、違法性の有無から住宅ローンとの比較をしました。要点は次のとおりです。
住宅ローンを組んでの投資物件購入は違法です。物件オーナーとしての正しい知識を身につけ、思わぬ負債や損失のリスクを避けましょう。本記事を、ご自身の不動産投資の理解にぜひご活用ください。